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土は何も語ろうとはしない。

土に触れた最後は、いつのことだろうか。

都市の土はコンクリートの下で息をひそめ、
野菜についていたはずの土もきれいに落とされて、
土との結びつきは見えにくくなっている。

そうした土と訣別した社会においても、
生物と無生物をつなぐ、天と地の境界ともいうべき場所では、
途方もない時間軸の輪廻がおこなわれている。

土は、物理的、化学的、生物的過程によって変化し続ける
とても複雑で、強い内部相互作用を持つ生態系である。

土は、生きることの始源でもある。
しかし、何も語ろうとはしない。

ざく、ざく、と土の上を歩く。

土というダイナミックな自然の産物があって、
その上に今、自分がいる。

土は、誰の足元にもあるのだ。
見えにくいものへの畏敬の念を、忘れさえしなければ。


2019年05月に、ジュエリーブランド「SIRI SIRI」のWebマガジンに掲載。連載「The root.」では、普段は無意識の中にあるような事象を取り出し、深く観察することで生まれる感覚の言語化を試みた。


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