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無難か無謀か、さぁどうする?初めての熊野古道中辺路ルートを歩いた記録DAY1


久しぶりの旅。
一つの区切りがついたタイミングで、とにかくどこかへ向かいたかった。

今まで訪れたことのない新しい土地、新しい体験。

久しぶりに海外?♡と、心がときめくも
コロナ禍の間にパスポートの有効期限はきれていた。

なによりもろもろお値段跳ね上がっていて、
予算に見合わず断念するしかない状態…

そんなとき、ふといつか行ってみたいと心のリストに加えってあった、
熊野古道が浮かんできた。

え?いま?
いや、いまかもしれない。

そんな想いが大きくなって、佐渡からはるばる行ってきたのであります。

ただただ女が一人。
熊野古道を歩いてきて、感じたこと、みてきたことを
綴っただけの記録日記。

これから熊野古道を歩きたいという方へのためになる情報や
役立つアドバイスは何もない可能性大なので、
誰かの旅行日記をのぞいてみるくらいの感覚で読んでもらえたらと。

わたしのたどった旅程


2023年
4月2日大阪に1泊
4月3日7:50大阪駅発の高速バスで紀伊田辺駅に向かう10:53着
   11:35田辺駅発の路線バスで中辺路ルートの始点、滝尻王子へ12:20下車
   最終バス時刻まで行けるところまで歩く(必死)
   近露王子まで歩き最終バスで宿のある湯の峰温泉へ向かう
   19:00宿到着
4月4日6:08湯の峰温泉発のバスで近露王子へ向かう
   6:40昨日の続きから歩き始める
   13:10ゴールの熊野本宮大社到着
   本宮大社からバスで宿に戻る
4月5日8:29湯の峰温泉発のバスで紀伊田辺駅へ向かう10:10着
   高速バスで再び大阪まで戻り、大阪に1泊

   

田辺駅観光案内所にて、さぁどうするわたし?

大阪からの高速バスで紀伊田辺駅に到着したのが10時過ぎ。
乗り継ぎのバス出発まで1時間弱時間がある。

とりあえず観光案内所に寄ってみる。

中辺路ルートを歩きたいこと
滝尻王子から歩き出したいこと

を伝える。

え?そんなことわざわざ聞く必要ある?
と思うかもしれないけど、
熊野古道の場合、なかでも中辺路ルートを歩く場合は、
これがかなり重要だったりする。

※熊野古道は、レベルに合わせていろんなコースがある。

どこから歩き始めるかで、
だいぶ時間や距離、難易度が変わってくるのだ。

ただ自分の進みたいところまで歩くだけならいいのだが、
熊野古道中辺路ルートとなるとそうもいかない。

なぜなら、めちゃくちゃ少ないバス時刻次第なところがあって、
降り遅れると山奥で途方に暮れることになる。

なので、案内所のおばさんも
無理のない無難なルートをおすすめしてくれた。

2〜3時間歩き、バス停のあるところまで
熊野古道を外れておりていく道。

でも…どうも合点がいかない…。
そもそも外れて、来た道を戻る方向で下りるというのが
気に入らないらしい。

とはいえ、わたしが目指したい場所までは時間的にギリギリ。

健脚成人男性でも厳しいとのこと…
案内所職員として安易に向かわせるわけにはいかない
といったオーラをおばさんから感じる。

それでも無難なルートを素直に選ぼうとしないわたしを見て、
おばさんは別の若い職員さんにも意見を求めた。

お姉さんも苦笑い。

わたしのトライしたいところまでは、
最終バス時刻までに到着するのは無謀かもと
首を傾げて、安全策を推奨してくれる。

だんだん乗り継ぎのバス時刻も近づき、
お礼を言って案内所をあとにする。

バスの中で自分会議が始まる。
さぁどうする?自分。

こういうとき人は本性がでるようだ。

いい悪いはないのだろうがどうやら
わたしはいつもギリギリ、無理かも、
それはできないんじゃないかを選びがち。

それこそ、今回でいうと最終バスに間に合わなければ、
予約していた宿までの足が絶たれ、路頭にまようことになる。

野宿するのか?自分、
その覚悟はあるのか?

無難を選べばその心配はなくなる。

なのに、なのに…わたしの中の騒がしい奴らが
ゴーだろ!行くっきゃないだろ!
ダメだったらそのときさ!と勝手なこと言ってドヤが止まらない。

決めた。
というか、そうしたがっている自分の方がいっぱいいた。
もうやるしかない。

自分を信じて。

スタート地点、滝尻王子到着

5分遅れでバスが滝尻王子に到着。

すぐさま降りたかったが、
バスの車窓から見る限り「ここがスタート地点」的な
目印が見当たらない。

超方向音痴で、地図を見ても逆走する女。

スタート地点から間違っていては、
それこそもう絶望的…。

運転手さんに確認する。

心はだいぶ焦っている。
いまのわたしは1分でも無駄にはできないのだ。

教えてもらった建物のあるあたりに急ぐ。
でもどこにも案内表示が見当たらない。

焦る。プチパニック。

さっきまでイケイケどんどん!言ってた奴らが
「これじゃだめだな」「無理なんじゃないか」
と手のひら返したようなことを言い始める。

ただでさえギリギリマックス。
心も体も焦る焦る。

とはいえ、やみくもにスタート切ったところで、
間違っていたら体力の消耗だけじゃおさまらない事態に陥る。

冷静になれ。

いったん通り過ぎてきた案内所的な建物に戻り、
受付のお姉さんに

「スタート地点どこですか?(涙)」

と聞くと、きょとんとしながらも、
わたしの形相が異常だったのか、席をすぐに立ち上がり、
玄関近くまで来て、方向を指し示してくれた。

そこはさっきわたしが右往左往していた場所だった…。

とはいえ、スタートは間違ってない!
という安心感をえて、ようやくわたしの熊野古道歩きが
始まった。

心臓やぶりの急斜面がお出迎え

事前に知ってはいた。
いきなり山場がくると。

おそらく1日目に歩いた最大の山場が最初だった。

急な斜面がのっけから容赦なく立ちはだかる。

汗が吹き出し、滝のように流れてくる。
タオルを持参しなかったことを激しく後悔。

羽織っていたウィンドブレーカーを早々に脱ぐ。
リュックに入れる時間も惜しくて、腰にキュッと結んで進む。

長袖で何度も何度も額の汗を拭うが追いつかない。
汗が地面にぽろぽろ落ちていく。

それでも登るしかない。
気にしていられない。
進むしかない。

息はハアハアを通り越して、
ヒーハーゼーハーとにかく凄まじい。

過呼吸になるんじゃないかと思うほどの
呼吸を繰り返し、それでもペースは落とさない(落とせない)。

このときの自分の形相ははたから見たら恐ろしすぎたと思う。
周りに誰もいなくてよかった。

とにかく急がなければと、文字通り『必死』だった。

正直、這いつくばってくぐった穴も
必死すぎてもう無茶苦茶だった気がする。

味わうどころの余裕は皆無。

汗だくの女が土つけて、汗だくで穴から這い出てくる。
もうホラーだ。

周りに誰もいなくて本当によかった。

山場を過ぎたら手拍子とともに

急坂を石や木や根っこのお世話になりながら、
むちゃくちゃになってなんとか登り切ると
坂が少し緩やかになった。

汗はぬぐってもぬぐってもまだ吹き出してくる。

周りには誰もいない。
まったくの一人旅。

アップダウンを繰り返すものの、
少し歩きやすいところでは
手拍子を叩こうと急に思い立つ。

少し余裕が出てきたあらわれなのだろう。

佐渡にはいない熊やイノシシがこの熊野の山には
存在していることを思い出す。

急に怖くなってきたというのもある。

周りには誰もいない。
もし遭遇したら…

「わたしがここにいますよ〜!」
というのを熊さんや猪さんたちにお知らせするべく
思いつきで叩き出した手拍子。

やってるうちになんだか愉快な気分になってきて、
歩くリズムに合わせて遊び始める。

我ながら、なんとも調子がいい女だ。

まっすぐ、ひょろひょろ、均一優等生

人間、余裕が生まれると周りが見えてくるのだろう。

ふと気づく。
木が違う。

周りに生えている木はどれもまっすぐで美しい。

曲がって伸びているような木は一本もなく、
みな定規ですっと縦線を引いたような直線で上を目指している。

まだ年数も浅いのか、
かといって年数が違うような太い幹も見当たらず、
一様にひょろひょろと均一な長さ太さで伸びている。

佐渡の原生林を何度か歩いたことのある身としては、
なんだかこの均一すぎる美しさが不自然な感じもしてきた。

自分には、佐渡の原生林の方がよっぽど魅力的で圧倒的な存在感
があるように感じたのだ。

一本たりとも同じ形状のものはない、
個性しかない原生林に比べると、
面白みに欠けるというのか、物足りないというのか。

でも、この想いは2日目を歩くことで、
また別の見え方に変化していくことになる。

歩く歩くひたすら一人で歩く

田辺駅の観光案内所のおばさんがすすめてくれた地点にたどり着いた。
ここで初めてちゃんと時間を確認する。

2〜3時間はかかるといわれていた地点に
自分は1時間20分で到着できていた。

この貯金はめちゃくちゃでかい。
この先もいける!進むことに対する大きな自信を得た。

とはいえ、その後もノンストップ。
立ち止まって一瞬お茶を口に含む以外は止まることはない。
というか、休憩するともう歩けない気がした。

歩き続けていると無になる瞬間がある。
鳥の声や水の流れる音、あとは自分が歩く音しか音はない。

急に聞こえた動物らしき鳴き声に耳を潜めた瞬間があった。

でも、間違いなくでっかい動物ではないことがすぐわかる。
聞いたこともない音。
いろんな声が重なって喋ってるみたいだった。

ジブリのコダマが喋ったらこんな声なんじないかとふと思ったり。

そんな考えが頭の中を流れては消えていく。

歩いて歩いて、ただひたすら一人歩く。

自分は自分の手足を動かして、
それが進んでいたり
何かかたちになったり
生み出したりすることが好きなのかもしれない。

そんなことも考えながら。

逆走する外国人

進むにつれて、ぽつぽつとすれ違う人が現れるようになった。

7割くらいが外国人

ハローと言われればハローと返し、
コンニチハと言われればこんにちはと返し、
アンニョンハセヨにはアンニョンハセヨで、
何言ってるのかわからないときは苦笑いで返した。

なぜか外国人はわたしと反対方向に向かって歩いていく。

それが不思議だった。
中辺路ルートはひたすら熊野本宮大社というゴールを
目指して歩くルートなのだが…。

かれらはいったい、どこからどこを目指していたんだろう?
知る由もない。

そんなことよりいちばんの衝撃だったのは、
前を歩いていた欧米系の紳士が
ブブッブブブッとお尻から炸裂音を無表情で放ったことだ。

後ろにいたわたしに気づいてなかったに違いない。
いや、そう信じたい。

そりゃ出るよね、紳士でも人間だもん。

これも旅の思い出…ということにしておこう。

恐るべし自分

結局のところ、最終バス時刻の1時間半前に到着してしまった。
なんなら、当初目指していたところよりさらに先まで辿り着いてしまっていた。

ノンストップで歩き続けたとはいえ、
よくやった自分!

かなり足は疲れてる。
こんな疲れは久々だった。

でも心は晴れ晴れ。爽快だ。

こんなタイムアタックのような古道歩きは
けしておすすめできることではないけれど、
目安はあくまで目安なんだということも体感した経験だった。

無難、無謀と一言でいっても、
人によってその基準は大きく変わってくるし、
体調や天候、環境、状況など周りの様子によっても違ってくる。

そのときの自分がそのときの状況に合わせて決めていったらいいのだ。

さてさて早く着いたはいいものの1時間半も何して待とう?
もう歩きたくないと、
ふらっと入った渋い渋い個人商店。

わたしが日本人だとわかると
店主のおかあさんがいろいろ教えてくれた。

商店内でパンを売ってるというのに、
明日の朝ごはん用のおにぎりがほしいと言うわたしに、
ちょっと先にあるAコープの存在を教えてくれた。

この商店から歩いて10分くらいという。

正直、もうわずかでも歩きたくなかったけど、
時間もまだまだあるし、
Aコープの前にもバス停があるとの話を希望に歩くことを決意。

店を出た。

商店となりの骨董店もちょっと気になる趣で、立ち寄ってたら、
さっきのおかあさんが出てきて、

店の奥で井戸端会議してた(別の)おかあさんが
家に帰るからAコープまで乗っけてってくれるとのこと

神さまや〜!!!

と、願ってもない優しさに即甘えることにした。
しみじみ有難いとはこのこと。

なんとなくふと思い立って決めた熊野古道歩きの旅。

歩いていて感じたけれど、
この春先、4月辺りはとてもいい時期なんじゃないかと思う。

暑すぎず寒すぎず、
まだ虫も少なく、とはいえ新芽や新緑が出始め、
色とりどりの花が咲いている。

熊野古道を歩いてみたいという方、
参考のひとつにしてみてもらえたらと思う。

2日目に続く…の前に、よかったらこちらもいかが?


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