私と家族と食卓と〜#6 おにぎり

今朝部活に向かう前に、食パンにツナとチーズをのせて焼いたものを出した。
息子が「もう一枚食べようかな」と言ったけど、食パンがもうなくなってしまっていたから、「おにぎりしようか?」と聞くと食べたいと言うので、お弁当用に今朝炊いたごはんで大きいのを1つ作った。
「何入れる?」と尋ねると塩昆布をリクエストされた。
「あったかいふわふわしたおにぎりもおいしいよね」と顔をほころばせながら食べるのを見るとこっちも幸せになる。

学校が平常授業に戻り、毎日のお弁当作りも再開した。
加えて週末には部活や試合が入るし、平日も食堂はまだ丼などのお弁当販売しかしていないしで(高校生が買うのが早くていつもすぐに売り切れるらしい)、だからほぼ毎朝ごはんを炊く。

前の日の晩に布団に入るときには朝は少しでも長く寝たいと思って、炊飯器のタイマーセットをしとくか、朝炊くか、ごはんをどのタイミングで炊くか悩むところだが、年齢のせいか最近アラームなしで5時くらいに目が覚めるから、そんなものは無駄な悩みで、まったく余裕で朝炊くことができる。

手からこぼれ落ちそうな熱々のおにぎりを食べながら「おばあちゃんのおにぎりもおいしいよね。ちっちゃくてふわふわしてて」と言う。

そう言われて母のおにぎりを思い出した。
もうすぐお彼岸だけど、うちの田舎は兵庫県の三木というところにあって、お墓参りに行くときにはだいたい毎回おにぎりを作って持っていっていた。
ちぎった梅干しやら鰹節を混ぜ込んだものを、パクっと食べられるサイズの俵形のものが10個くらいタッパーに入っている。
父も母も車の運転をしないので、6つ年上の姉が免許を取って自分の家の車で行くようになってからのことだと思う。
朝早く家を出た日の車内で小腹を満たす小さなおにぎりは、決してもう子供と呼べる者のいない年齢の家族で半ば取り合いをしてすぐになくなり、母は少しだけ満足気に「もうちょっとたくさん持ってきたらとよかったね」と言う。

何年か前におにぎりのレシピ本を出したのだけど、95種類のおにぎりを作って、形や海苔の巻き方について編集の方やスタイリストさんと意見出ししていたときに、私が言った海苔の巻き方にみんなが「え?」となった。
それは三角おにぎりの2辺に渡って10cmくらいの海苔をかぶせるもので「なんか髪型みたいじゃね?」となって(実際は皆さんもっと遠慮した表現でした 笑)、でも1つだけその巻き方を採用してもらった。

この仕事のときも含めて、息子の小学校のサッカーの試合のお供に、朝ごはんに、おやつに、私はこれまで何個のおにぎりを握っただろう。
母はそれよりもっともっと多いに決まっている。

コロナ以前から、飲食店でおにぎりを注文する前に「ビニール手袋つけて作ってますか?」と尋ねるお客さんが結構いると聞いたことがある。
こんなときだからますます敏感になってしまうかもしれないけど、やっぱりおにぎりは熱い熱いと言いながら握る様子もおいしい風景だと思う。

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