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ゴールデンカムイが好きだ

犬派か猫派か?と同じように、北海道派と沖縄派がいるとしたら、私は北海道派です。

北海道のスノーリゾート トマムを営業&マーケティングを担当するチームにいたとき、毎年4〜5回は北海道に行き、長いと1週間以上滞在していました。たまに沖縄に行くときは飛行機の上から楽しみでワクワクする。北海道に行くときは、飛行機の上からなんだかホッとして、涙腺が緩むのです。

北海道にいると、地名などでアイヌの言葉によく触れることになりますし、だんだんとアイヌのことを知りたくなっていきます。

トマムの仕事をしていた当時、とても勉強になったのは池澤夏樹さんの小説『静かな大地』そして、萱野茂さんの自叙伝『アイヌの碑』でした。どちらもアイヌ文化を後世に伝える大きな役割を担っていますが、どちらにもとても豊かなアイヌの文化や暮らしが、和人が入ってきたことで迫害され消えていく哀しさが根底にありました。日高の二風谷にある、萱野茂アイヌ資料館には、消えゆくアイヌ文化をなんとか残したいと、道具類や口伝を録音したテープ等が所狭しぎっしりと陳列されていたことが印象的でした。「北海道」の歴史は、アイヌにとって迫害の歴史だという面を、北海道で仕事をする身として知っていなければと思いました。

漫画『ゴールデンカムイ』はそんなこれまでのアイヌ文化の語り口をガラリと変えてきました。

『ゴールデンカムイ』の舞台は日露戦争直後の明治。隠されたアイヌの金塊をめぐり、みんなでどんぱちどんぱちチャンチャンバラバラ。金塊のありかのヒントは、網走監獄を脱走した囚人24人の身体に彫られた刺青で、その刺青が入った人の皮を剥いでつなげないとわからないという…うう。。私、そういうの苦手なんだけどなぁ。。

ところが『ゴールデンカムイ』はミリタリー系作品を好まない私のようなタイプも虜にしてしまいました。

登場するアイヌが、ものすごくカッコ良いのです。

アイヌの金塊で一攫千金を狙う主人公、日露戦争の帰還兵「不死身の杉元」と相棒となるのが、アイヌの少女アシリパ。このアシリパがアイヌの生きる知恵や世界観をたくさん教えてくれながら、自然豊かな(ある意味過酷な)北海道の旅を支えてくれます。

アシリパはヒグマ、リス、ウサギ、鹿、キツネ…それぞれの動物の習性を熟知した狩猟の方法を使い、そして余すことなく美味しくいただく料理を作り、杉元をはじめ戦い続けてきた和人に披露します。アシリの知識・知恵は、動物だけでなく、植物や天候にも広がります。食べることが大好きで狩人であるアシリパを通して、アイヌの文化や知恵を目の当たりにし、杉元たちはもちろん、私たちもリスペクトの溜息をついてしまうのです。

アイヌにとって全ての動植物は、カムイ(神)だと言います。アイヌの人間のために神々が地上に贈ってくれる。だから無駄に採ったり無駄に扱うことなどせず、感謝を込めていただく。そうすることで、またカムイたちはアイヌに必要な命を贈ってくれるのだと。しかも、そのカムイたちは、特別に崇める存在ではなく、人間と対等だと考えている。ひとつひとつの慣習に流れる、アイヌの独特の世界観や自然観もアシリパはわかりやすく、そしてダイナミックに伝えてくれる。

『ゴールデンカムイ』で描かれるアイヌの人々の暮らしや文化は、北海道の土産物で見る、木彫りや刺繍などの工芸品を見ているだけでは到底わからないものでした。原始的な狩猟民族とみなされ迫害され、土地も文化も追われた弱くかわいそうなアイヌでもない。

大いなる自然観や信仰心、そして動植物への深い知恵を持つアイヌの人々の生き様を『ゴールデンカムイ』はこれでもかと盛り込んでくれる。

そんな『ゴールデンカムイ』が私はものすごく好き。
描いてくださってありがとうございます。

2020.9.30 4本目、かな。 上杉惠理子


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