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診察待ちの間に


仕事おわり。

今日の夜勤は落ち着いてて良かった。温存できた充分な体力と共に整形外科の受診に行ける。
ここ数ヶ月、どうも左の膝の調子が悪い。ずっと痛みが続くのだ。
湿布を貼ったり、痛み止めを飲んだり、病院(の待ち時間)が嫌いな私は、全力で誤魔化して今まで先延ばしにしてきたが、やはり苦痛だし日常生活にずっーとちょっーとストレスを抱えていくのが嫌になり、診察を受けることにした。
ネットで予約を取る。9:45受付開始で、9:50にページを開き予約を試みる。すると、診察中2番、お待ちの方43人と表示された。

え?!
お待ちの方43人?? 何かの間違いですか?
5分の間に何が起こった?
これ、よくある楽天スーパーセールとかで半額商品が1秒で売り切れるアレか?
どう頑張っても私には買えないのは分かってるけど、いつも一応チャレンジしてみる、あのパターンを思い出した。

一瞬、別日にしようかと躊躇する。
でも、色々考えあぐねた結果、やはり今日行く事にした。結果を早めに職場にお知らせするためだ。
あー、今日の昼間は潰れたな。と思いながら予約する。私は46番目に診てもらえるそうだ。

クリニックに早く行ったところで、椅子に座ってただひたすら眠気と戦いながら携帯の充電を減らすだけなので、駅から直結のカフェに入る。
暖かみのある雰囲気、席もそこそこある。
レジでブレンドコーヒーのホットを頼んで、ふとレジ横のショーケースをみると、目を引くシュークリームがある。シューがふわふわでなく、カリカリのタイプだ。そして、真ん中で半分に割られ、上下のシューの間からカスタードクリームが顔を出している。サザエさんがオープニングの最後で果物から飛び出す姿を思い出した。構図的には同じだ。
カリカリタイプのシュークリームが好物な私は、ダイエットのことが頭をよぎったが、光の速さで打ち消して一個注文する。

我ながら、クリニックの待ち時間の過ごし方を満喫できている。トレーに乗せられたコーヒーとカリカリシュークリームを受け取り、満足げにテーブル席に着く。

隣の席には、70代くらいの男性が座っていた。おじいさんと呼ぶには、若い印象だ。
眼鏡をかけ、新聞を読んでいる。
テーブルの上には、私と同じトレーに空のコーヒカップ、何かが乗っていたであろう空のお皿が置いてある。何を食べたのかが気になった。なぜなら、私がシュークリームを乗せられているお皿と同じサイズだったから。サイズが同じでも、サンドイッチの可能性だってあるのだけど。

男性は、しばらく新聞を読んでいたが、私がシュークリームの粉砂糖を口の周りにつけている間に店を出る支度をしだした。
そのまま、出口に向かって歩いて行く姿を目で追う。
やや背中は丸くなっているが、小柄でスリム、デニムを軽くロールアップし、ニューバランスのスニーカーで決めている。だが、嫌味なほどの派手さはなく、好感が持てるファッションだ。歩く様も足取りがしっかりしていて若々しい。小さめの鞄を斜めがけにして、駅の方へ向かっていく。その姿は、日本の高齢者の平均よりやや高めの生活水準を感じさせる。

今から、どこに行くのだろう?
一人という事は、奥さんはいないのかな?
それとも、奥さんは寝たきり生活とかで、介護の合間の息抜きだったのかもしれない。
軽装だから旅行とかではないよな。
家に帰るのかな?

口の周りの粉砂糖をおしぼりで拭きながら、しばらくその男性を見送る。

平日、しかも月曜日の10時過ぎの過ごし方としては、完璧だ。
私のように「完璧な過ごし方ができたぜ!」みたいなノリもなく、日常として過ごしているような貫禄がある。朝起きて、ご飯食べるのと同じくらいの日常レベル。もしくは、寝る前に電気消す、みたいな。
完敗だ。
完膚なきまでに打ちのめされた。
まさか、隣に座った老人がこんなにも上級者とは。
勝手に師匠と呼ばせてもらう。

私も70歳くらいになると、朝ご飯食べたり、電気消したりするテンションで、月曜10時に喫茶店習慣が身につくのだろうか?
憧れる。
そんな歳の取り方をしたいものだ。


・・とか思いながらコーヒを飲んでいると、クリニックから予約確認の電話があり、あまりの愛想のない電話対応に、イライラしてしまった。まだまだ若輩者だ。


優雅な朝への道のりは遠そうだ。

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