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本当のタイトルは「ジャスミン」

最近、友人に映画をおすすめされた。

勧めてくれたのは実写版の『アラジン』だ。

映画館で公開されていた当時は「またディズニー作品が実写化されてる…」くらいしか思っていなく、アニメ版のアラジンが好きなのでジーニーを実写化したらえらいことになるんじゃ…と実は見るのを恐れていたのである。(劇団四季でアラジンを実写化している映像をみかけてすぐに目を逸らしたのも内緒。そのせいで余計に期待値が下がってしまった気がする。)

当時も違う友人が「最高によかった!」「もう一回観てくる!」と話していたのを目にしていたし、気にはなっている存在ではあったがなかなか観るところまで気持ちが進まなかった。

でも、勧めてくれた友人が「たぶんてか絶対好きと思う」と自信満々に勧めてくれたのが嬉しくてすぐ観ようと思った。そしてきっと“どうして私が好きと思ったのだろう”というのが知りたくて観たというのもあったのだと思う。

ドキドキワクワクしながら映画を観進めていたのだけど、すぐに世界観に取り込まれてしまった。想像していたよりジーニーはジーニーだったし、世界観が全く崩されておらず、何ならアニメ版より伝えたいメッセージ性がかなり強く描かれていて、「なにこれ、アニメ版より好きじゃん」となった。友人の言ってくれた「絶対好き」は大正解だった。

私が元々、アラジンで一番好きなシーンは魔法の絨毯に乗ってアラジンがジャスミンをこっそり迎えに来るシーン。それから二人で絨毯の旅に出るのだけど。その時にアラジンが言う

“Do you trust me?”

が私は大好きなのである。

初めて二人が街で出会った時に1回アラジンが言うのだけど、その言葉で目の前にいる人がアラジンであるということにジャスミンが気づくのだ。そのハッとする表情がもう愛の始まりで。二人を近づけるきっかけになる言葉。そして純粋に「僕を信じて」とまっすぐに言うアラジンは素敵である。

このシーンはアニメ版、実写版ともに素敵で好きなシーンなのだけど、絨毯の旅のあと最後に実写版では街を見下ろしながら会話するシーンがある。(アニメ版には無い記憶だけど確認してないのであったらごめんなさい。笑)そのシーンがまたたまらなく好きなのだ。国王になるのは男性じゃなくちゃいけない、と国王のパパに言われ、強い思いはあるけど、この国のリーダーにふさわしい王女になれるか不安なジャスミンが 「王女になれるかしら?」と問うと

「ぼくの意見が必要?」と答えるアラジン。

ジャスミンの中で女性の意見は優先されず男性の意見が必要だと思っていた中で、アラジンの答えは大きくジャスミンの心を救ったと思う。仮にアラジンを結婚相手として迎えたとしたら、決して男性のいいなりになるような未来は待っていない。自分を認めてくれて意見を尊重してくれる未来がこの言葉でジャスミンには見えたと思う。あぁ、この人は本当に信用していい人なんだ、と思ったんじゃないかな。このシーンは1度映画を全部観た後、このやりとりだけを何回も観てしまったシーンでもある。

そして物語も佳境に入り、私の大嫌いなジャファーとの対決シーンなんだけど、アニメ版ではアラジンの知恵でやっつける、という感じなのだが実写版はその前にジャスミンの心の叫びを歌で表現してくれるシーンがある。

「Speechless」だ。

今もこの歌を流しながら書いているけど、このシーンは本当にジャスミンの心の声が強く描かれていて、自分が女性であることで我慢してきたことを解放するように変化していってる姿が描かれている。とても強い意志が心に伝わってくる。だからこのシーンでは心が震えて涙が出た。貼っている映像は録音風景だけど、映画では自分を解放していっているシーンがわかりやすく描かれているし、あとから教えてもらったのだけど映画では撮影しながら本当に歌っているらしく、よりグッとくるものがある。お勧めしてくれた友人が気合いを入れるときに聞くと話してくれたが、これからは私もそうしようと思う。それくらいパワーをくれる歌である。


ここまで書いてみて友人がなぜ勧めてくれたか、はとてもわかった。他にも、お父さんがジャスミンを王女として認めるシーンやジャスミンがアラジンを王女として引き止めるシーンなど。こんなにも心に残るシーンがあるのだから、私はこの作品が好きに決まっている。女性が強く自分らしく生きていく選択をする物語が私は好きだ。

私がジャスミンに「強く自分らしく生きる」を選択したと感じたのは、“意見を言えるのは男性なんだ”という周りからの抑圧や思い込みを自分で手放したと感じた時だ。
それがspeechlessに込められていると思う。心の叫びをちゃんと聞けた時だ。
現に私も”自分らしく生きる”と自分で思えた時は、何かを手放した時、開放された時だと思う。そしてその声が聞こえた時。

結婚をお互いに意識していた彼と別れる時、また誰かとこんな風になれるか不安で仕方なかったけどその不安を手放して次に進んだ。自分らしくあるために。
留学をするか悩んだ時も身体にサインが出るほど、仕事のストレスが溜まっていて、でも自分が辞めたら会社のメンバーが困るとかを理由にして、ホントは自分が会社にしがみついていた。その気持ちを手放し、自分を開放してあげた。改めて自分らしく生きるために。
本当にこれでいいのか、と悩むたびに自分に向き合い内なる自分の声に耳を傾ける。心の声を黙らせてはいけない。

私は『自分の人生の主人公は自分だ』と思って生きていく姿が好きなんだと思った。他の人から見たら主人公のような輝かしさなどない可能性もあるけど、「自分」から見た自分の人生にちゃんとスポットライトが当たっているかどうか。自分の人生という舞台をどう演じるかは自分次第なのである。誰かからの指示で演じるのではなく自分で決めて演じきる。

私はそんな自分でありたいと思うと同時に、自分を主人公と思って生きていく人をできることなら増やしていきたい。改めてそう思わせてくれた作品だ。

だからこの実写版アラジンの本当のタイトルは「ジャスミン」だと、私は思う。



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