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「私を離さないで」

空が谷間に寝そべっている
どうか
秋の始まり シルクの紐を腐敗させて
庭にすずめのような鳴き声を響かせて
私はもうどこへも開かない扉
人は誰かのために死んでいる
しかし誰も誰かの代わりに死にはしない

夜明け前 虚な地平線が歩いている
私は見ている 子供たちの足を 馬たちの赤い手綱を
街に響く甲高いこだまが崖の麓で踊っている
薄暗い部屋で おさげを垂らした乙女のうめき
ひび割れた鏡から暴風が吹き込んでくる
どうか楓の根の上で白い枝を見させて

辺りで彷徨っている私の指をここから離して
波は夢のささやきを運んでくる
あなたの口づけの代わりに黒く乾いた血
私の元から春の兆しは消え去っていく
どれが私の胸なのかを教えて
私の唇はどれなのか 夜のとばりであなたを噛んでいた唇は

眠りを破られた蛇 嘶く鹿
垣根は破壊され もぐらは這い去った
星は助けを求めるように瞬いていた
人々は死んでいる さらに多くの人が死んでいく
彼らの言葉は叫びへと変わる
どうか窓格子の前で魂を凍らせて

盾が錆びるような痛みはない
秋が過ぎ 子供時代が泥水に塗れるとき
私の膝を砕くのではなく 私の名前を彫って
私は蘇り 私の声は祖国を彷徨うだろう
どうか 味気ない青年時代の後 私を蘇らせて
山の麓でイチジクを大きく育たせて

人間なのか雪なのか 雪なのか人間なのか 私にはわからない
これが誰の指なのか これが誰の髪なのか 私にはわからない
しかしこれは私の胸 留まることなく 目は頭の中から消え去っていく
ある声は 声ではなく 唸りでもなく、怒鳴りでもなく 嘆きでもないようで
すぐそばで、中で、上で 丘の斜面のように横たわっている
私にはまつ毛をおさめるような隠れ場所などない
どうか かわいそうな鳥に 荒れ果てたこの地を嘆かせて

私の心が羽ばたく時がきた
光が見えなくなり スイセンをへし折られ
若かりし頃の心を地平線に置き去る時がきた 
ああ さようなら 私の愛よ ああ 花の紅さよ
母の花嫁は痛み、父の花嫁は傷ついている
どうか 星を空から降らせて
私を行かせないで
その手を離して
ああ 私のではないその手を!

2011年12月28日に発生した「ロボスキ虐殺」を主題とした詩である。
「ロボスキ虐殺」は、シュルナク県ウルデレ郡オルタス村(クルド名:シュルネフ県キレバン郡ロボスキ村)で、トルコ空軍がクルド人住民を爆撃し、34名が犠牲になった事件。

- "Bihêle Ez Neçim", Selîm Temo

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