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いっぱい転ぶ君が好き

事務所を辞めた。


学生の頃からその日を夢見て受けてきた。
きっと自分は花が咲くと信じて疑わない若者だった。

ドラマも映画も出演させていただいた。
板ばかり踏んだ身にはあまりにも違う。
生の視線に慣れた体もカメラの視線は怖かった。

恋焦がれた場所に立てたと思ったら
信じられないくらいに凡人だった。
そのとき初めて、若者から大人になったのかもしれない


4年間、多大な経験をさせていただいた。
沢山の人から数えきれない程のアドバイスを頂いた。

受けたオーディションへの足掻きと結果は
全てノートに残している。全部に大きく×とある。
狂ったような×もあれば、諦めたような×もあった。
×になってまで残る気持ちに今みれば笑ってしまう。

とても平凡で、普通で、
何者にもなれないと嘆く人がそこにいた。
残り数頁を残したノートに◯を付ける日は来なかった。

それでも
擦りむきながら転んだ日々を今は心から誇りに思う。
隣の凡人に言葉をくれた沢山の人に感謝を伝えたい。

これからも筆を走らせて
転ばないその日を目指していこうと思う◯


夢はまだ、キラキラしている。

遠田恵理香


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