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軽井沢ラーニングフェスティバル 2022春 キッズプログラムを終えて

こんにちは。ラーフェス 2022 春 キッズプログラム第1弾(3日間参加)の企画を担当した軽井沢ラーニングフェスティバル実行委員、兼ライジングフィールド軽井沢スタッフの長谷川絵里香(えりちゃん)です。

いよいよ、ラーフェス2022、秋の申込がスタートします!
大好評だった春のキッズプログラムに引き続き、秋はスタッフの顔ぶれが変わりますが、開催が決まりました!
募集に先立ち、あの日、あの時なにが起こっていたのか……キッズプログラムの振り返りを。

●ラーフェス2022 春のキッズプログラムを振り返る。

牛が食べた草を反芻しながら時間をかけ、少しずつ消化しつつ……とはいえ、なかなか消化できず、早く記事にせねばと思いながらも、頂いたギフトの大きさに、書いては消し、書いては消し……。
開催した5月の春を駆け抜け、夏を飛び越え、軽井沢にはもう秋の風が吹き始めました。

2022春のラーフェスキッズプログラムは、3日間通し参加の「第1弾」、そして急遽追加開催となった単日参加可能な「第2弾」とプログラムが2本走りました。
このブログでは第1弾について触れますが、第2弾日帰りの様子はキッズプログラムのフォトギャラリーからご覧になれますので、ぜひそちらからどうぞ!

ほんとうにゆっくりな投稿となりましたが、第1弾の企画に込めた想いや、3日間の中で印象に残った出来事を言葉にしてみました。
ここで発芽した何かが次の秋につながっていくと信じていますので、よろしければ最後までご覧ください。

●ラーフェスキッズプログラムOfficial Movie公開!

今回、第1弾のプログラムでは、オフィシャルムービーが出来上がりました。
3日間子どもたちと寝食をともにし、スタッフさながらの動きで撮影をしてくれた、映像クリエーターの”チャル”さん。
子どもたちの中に流れる「いま、ここ」に気持ちを合わせ、素晴らしいムービーを作ってくださいました。本文に進む前に、まずこちらからご覧ください。

【キッズプログラム第1弾Movie】

●企画に込めた思い。自分の思い、わが・ままにいきる。

一昨年、コロナによってラーフェスの開催がオンラインとなり、キッズプログラムとしてリアルな場は2年ぶり。今回は特に思い入れがありました。
コロナによって自粛・行動制限が広がる中で、大きく生活様式が変わり、これまで当たり前にできていたことがそうではなくなりました。
子どもたちが自分の気持ちや身体の状態を素直に感じ、それを表現するよりも前に、まず守るべきルールがきて、我慢をすることが当たり前。
自分自身や大切な人たちを守るため、社会機能を維持するため、それは当然のこと。

でも。
順応力が高い子どもたちだからこそ、自分の気持ちに蓋をしたり、そうこうしているうちに、そこに蓋があったことにさえ気付かなくなってしまってはいないだろうか……。

だからこそ、今回は今まで以上に踏み込んで様々なチャレンジをしてみたい。
今年のラーフェスキッズプログラムは、ここでの経験を通じて、自分の枠組みを飛び越えたり、できなかったことがひとつでもできるようになっていたり、意識・無意識的に握りしめていた不自由さの殻を破ることができたら……。そんな思いが根底にありました。

落ち葉がたくさん。春だけど、撒きながら「ゆき〜!」

ラーフェスに参加する大人のための託児ではもちろんなく、子どもたちを楽しませるレクリエーションでもなく、自分が主体となり創り上げていく場。
普段流れている日常の延長にあるような、それでいて子どもだけではなかなか好き勝手にできない「くらしをつくる」時間。

やっぱりこれは日帰りでは実現できないし、親元を離れた子ども同士で、二晩をともにし、そこで巻き起こる様々な葛藤や悲しみや喜び、仲間との関係性の中で生まれるものを大切にしたい。

そんな想いや妄想(笑)を、キッズプログラム全体統括の金ちゃん、軽井沢風越学園の本城慎之介さん(シンさん)、軽井沢ラーニングフェスティバル全体統括のウッチー、ライジング・フィールド代表の森さんに提案し、ディスカッションする中で今回の企画が大きく動き出しました。

当初、ラーフェス初日のプログラムのみをお願いしていた軽井沢風越学園の本城慎之介さん。乗り掛かった船がいつのまにか船頭に変わり、プログラム全体の企画から関わって頂けることに。


キッズの全体を金ちゃん、小学生以上の部門(2泊3日)をシンさん、幼児部門(3日間日帰り)をエリカが担当。
そこに、インターナショナルプリスクールのEtonHouseからイングリッシュネイティブのスタッフ5名、森のようちえんのスタッフ3名、元保育士1名、軽井沢風越学園の中学生ボランティアスタッフ4名、ライジングフィールドのスタッフ2名が加わり、2日目にはスペシャル企画として探究学舎の”やっちゃん”こと宝槻泰伸さんによる大人気授業「人体医療編」も開催されました。
お名前を全て書きあげられませんが、お力添え頂いた皆さんなしでは成り立たなかった今プログラム。
この場をお借りして、心から御礼申し上げます。

●くらしを自分でつくる。

同じ釜の飯を食い、3日間かけて関係を深めていく。
当初、私からシンさんに提案したテーマは、くらしを"みんなで"作るでした。
これをシンさんは、"自分で"に変えました。

キッズプログラム第1弾のメインビジュアル

学校などの集団生活では、「みんなで」や「協力」ってさんざん言われているから、思いっきり自分勝手をやるキャンプにしたらどうか。思い切り自分勝手をやっていくと、自然と協力関係が生まれるから。
一見逆説的ですが、自分勝手のその先を見越したテーマ設定でした。

小学生たち、はじまりは絵本から。ある夏休みに自分の創造した国の王になる物語「ウエズレーの国」。
3日間、やることはいたってシンプル。
家づくり。周囲の木を骨組みにして壁をつくるグループ。
一人でつくる子、グループでつくる子様々。絶妙な細長さのダンボールによって斬新な造形がうまれた。
その頃幼児は「染め紙」という造形活動。遊びながら自分たちの過ごす空間づくり。
用意したのは赤・青・黄の三色。全部混ぜてもそれはそれで美しい色彩に。

キャンプという不便な生活の中では、選択の連続。
食事一つとっても、何を食べたいか、何なら作れるか、誰が作るか、いつ作るか、どの手順で何を使うか、片付けはどうするか、そもそも食べる必要があるのか……。
限りある資源をみんなで分け合って使うので、自分ひとりではなく、話し合って決めることもたくさん。そして話し合いをするたびに同調や対立、そして葛藤が生まれます。

リーダーシップを発揮する人、フォロワーシップにまわる人、動きながら考える人、手持ち無沙汰な人、提案する人、賛成する人、反対する人、どっちでもいい人、自分の今やりたいことに夢中になってる人……。
子どもたちの姿は大人のそれと何ら変わりありません。

火起こしの途中で面白いことを見つけちゃった人たち
一番初めにつくった晩ご飯はチキンラーメンの麺(のみ)。
幼児も、小中学生とは別に自分たちで炊事を開始。
初めての火起こしに奮闘。

結果的にはただAかBかを選ぶだけに見えても、"何が正解かわからない中で選び取って決める"、"自分だけでなく皆と決める"という行為は、想像以上に子どもたちの心にたくさんの感情を巻き起こします。
そんなプロセスを大人は見守り、”過不足ない“支援をする。やりすぎてもいけないし、足りなくてもいけない。
枠組みを示しつつも安易に答えを与えない。
そのさじ加減(在り方)はスタッフ同士異なり、見ているだけでも非常に学びになります。

●「自分で、決める。」
今回、子どもたちの自分で決めていく姿は、多くの波紋を私の中に投げかけました。今回のキーワードを挙げるとしたらこれかなと思います。

2日目の夕方、探究学舎のプログラムに参加する小学生たちの間で起きたことです。
企画段階から、なるべく多くの子どもたちが探究学舎のプログラムに参加できるようにと時間の設定をしたものの、生活の全てを自分たちでやらねばならないキャンプはやっぱり大忙し。

遠方から初参加したお子さんの中には、ずっとオンラインで探究学舎の授業に参加していて、このラーフェスで本物のやっちゃん(塾長)に会えるのをとても楽しみにしている子もいました。初日から、彼は興奮気味に語り、知らなかった子も噂から想像を膨らませます。
がしかし。
この時間は夕飯の準備、それから今夜降るかもしれない雨のために寝床のセットをしなければなりません。

そこで子どもたちはいったん手を止めて話し合い、授業に参加しない子たちが夕食の準備をし、授業に行く子は食事の片付けをすることで決着。
無事希望がかなって喜ぶ人たちの横で、迷っている子がいます。噂には聞いて興味はあるけど、実際見たことがないし……。
どっちがいいか決めかねた彼は、シンさんに尋ねました。
「どっちかちょっとやってみて、途中で違うなと思ったら変えることはできる?」

シンさんがこたえます。
「途中で乗り換えるってのはなし。いまどっちかに決めて。
決める、ってことは、やってみて後悔することもあるかもしれないけど、それも込みで、今、どっちかに決めるってこと。」

その後は、これまた別の兄弟が喧嘩をはじめました。
「俺はキッズベースに残る」と弟。
その言葉に、「パパは参加してって言ってたよ」と兄。
「パパに怒られるかなぁ……」弟の顔色がみるみる変わり、迷いだしました。
いよいよ出発時間が過ぎたところで、「早く決めろよ」とまくしたてる兄。
ついにお互いの手がでて取っ組み合いがはじまりました。
力で勝てない弟は、落ちている砂利を手に、くやしさいっぱい兄にぶつけます。会場に向かうべく歩いている最中にこのやりとりを始めたため、本人たちはもちろん、周囲に当たらないかドキドキの私。
弟は怒りに震えながらも、周りへ配慮して兄の身体(だけ)にぶつけていくのでギリギリまで見守ります。

そこへ後ろから金ちゃんが低い声で一言。
「お前が決めるんや」

そんな修羅場を繰り広げ、たどり着いた探究学舎の授業では、最前列で挙手しては爆笑している兄弟。
「数分前のあの時間は何だったんだろうね……。笑」
その後、親御さんに報告しては笑いあったのでした。

テーマは人体医療編。泥水の中に潜む微生物をみつけるというプログラムに子どもも大人も大興奮。

「自分で、決める。」
それがたとえうまくいかない結果、想像と違うものだったとしても、自分の意思で選びとること。そこは結果を引き受ける覚悟とセット。
それって言葉にすると本当に簡単なんですが、本人にとっては押しつぶされそうなほど不安でいっぱい。それを見ている大人も揺さぶられます。(どっしりした人もいますけれど)
このエピソードはプログラム選びのひとつですが、これから訪れるであろう子どもの進路や、自身の人生の節目における選択の瞬間に置き換えてみたら、見えてくるものが変わってきませんか?

同じ場内で過ごす保護者も、時折出くわす子どもたちの姿を見て、揺れます。
「うちの子……大丈夫かな?」
親の心配をよそに思いっきりエンジョイする子もいれば、不安で泣いてしまう子も。

保護者が場内で泊まっている人もいることから、今回、保護者の元へ帰ることも自分で選べるとしました。でも、その中でどこまでチャレンジするかは本人に委ねられ、結果的に保護者と夜を過ごしたのは数名。

私は、彼らが自らの意志で選びとる力を持っていることを信じているし、自分の中にある安心安全な場(コンフォートゾーン)がしっかり満たされれば、チャレンジしたくなる、チャレンジできる力をもっている。ーそう思っているからこそ、安易に手出しをしたり、「そこまででいいよ」なんて簡単に言えないな、と思うのです。(時に自戒を込めて)

子どももチャレンジ、大人も自分の中の気持ちと向き合う、チャレンジの三日間でした。

初日・2日目の夜、真っ暗な森を歩くナイトプログラム。
3日目、竹にパン生地を巻きつけて食べる「竹パン」作成のため、竹を削っていたところ、ナイフを使い始めた子に刺激を受け、何人かがナイフを手に黙々と削る。真剣な眼差し。

●命の輝く方へ。

映像の最後に出てくるシンさんの言葉がとても印象的です。

「雨降っても段ボールで寝たい子は寝ていて、戻りたい子は戻って、作りたいモノ作って、食べたいモノ食べて、行きたいところに行って。戻ってこない子もいたりとか。最高でしたね」

雨が降ったら起こしてね、とシンさんにお願いして段ボールで寝ていた人たち。

シンさんの言葉は、いつか自分の元を巣立つ子どもを見送る親の姿に重なり合います。

命の輝く方へ、その子の心がのびかやに進みたい方へ。
やりたいように、いきたいように、自分の思いを実現する。

2日目の森歩き。幼児たちも一緒に道なき道を行く。「えー!こんなとこいくのー!?森っていうか、崖じゃん!」

ゴールがあってそれを逆算して、その解に自分をあてはめていくのではなく。
その先がどうなっているかも、どうなるかもわかないけれど、植物が太陽に向かって自然と伸びていくように。育てる側はともに育ちあいながら、じっくり見守り、委ね、手放す。

そうあれたら、それをどっしりと見守ることができたら……。
いざ子どもを目の前に、手放しで信じて待つことができる大人、親御さんはどれだけいるでしょう。(そして、ただ信じて待っていればいいかといえばそうではないと思っています)
さらに、そんな姿を「最高」と面白がれたなら、それこそ最高だなと思うのでした。

次回は、秋。2022年10月6(木)〜8日(土)。
どうぞお楽しみに。

▼参加チケット(大人分)はこちら(まもなく販売開始)
https://learning-fest.jp

▼実行委員会全体統括のウッチーによるラーフェス2022春の回想録もぜひ!

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軽井沢ラーニングフェスティバル実行委員
キッズプログラム担当 長谷川 絵里香
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