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第52章 絶対安静

22週と3日目の夜、私は大出血をした。
何とか旦那と病院に向かい、無事に到着。
待合室で診察を待っていると、当直の産婦人科医が直接呼びに来た。
先生との電話の後かなりの出血になり、しかも鮮血(真っ赤な色)であること、お腹の痛みや張りは今のところないことを伝え診察室に向かった。
そのまま診察台に座るために下着をおろす。

"まじかぁ"

下着を見た私は心の中でそう思った。

下着につけていた 多い日夜用 のナプキンをはるかにこえる出血量。
下着まで血に染まっていた。
家を出る前に新しく付け替えてきたから、2時間しか経っていない。

祈るような気持ちで診察台へ。
背もたれが倒れ、足が開く。
先生が膣を覗いたかと思ったら、
「はい、いいですよ。足が閉じますね」といって、診察台の背もたれが起き上がる。

起き上がるとすぐに先生の声。
なんとも言えない落ち着いたトーンで、
「お母さん、いいですか。今から自分では絶対に動かないで。お腹に力を入れないように気を付けてね」と。

当直の先生は今日 初めましての先生。
ゆっくりカルテを遡る時間もなかっただろう。不妊治療中である事や、治療経過は分かってくれていたが 私が看護師と知らないみたいだった。
そして、どう説明するか悩んでいるように感じた。

私は察した。

先生に、看護師だと打ち明けた。
すると、
「そっかぁ、なら変に回りくどい説明より率直に言うね。」
「あのね、赤ちゃんが出かかっているんだわ。子宮口が3cmくらい開いててね。頭が見えてるんだわ。いま、今日、産まれてもおかしくない。」
「申し訳ないけど、今日このまま入院ね。」
と説明を続けた。

そんな話の途中から、お腹が ぎゅぅぅ っと締め付けられはじめた。

先生は急いで、でも落ち着いたトーンでスタッフに指示を出す。
まずは、子宮収縮を抑える点滴をすること。なるべく太い針で。
そして、産婦人科とNICUの医師を呼び 病院内で待機して貰えるように連絡すること。

こんな時、自分が看護師だということに後悔する。
嫌でも自分が置かれた状況が分かってしまうから。

先生が出した指示は、いかにも今から分娩が始まります といった内容。

子宮収縮を抑える点滴だったり、安静だったりと 何とかベビちゃんにお腹の中にいて貰おうという指示も同時に。

私と旦那は、何故か冷静だった。
それは、こんな夜中の救急外来にも関わらずスタッフの方たちが一丸となって22週と3日目にして、この世に産まれようとしているベビちゃんを助けようとしてくれているのが分かったから。

こんなにもたくさんの人がベビちゃんを助けようとしてくれているのに、私がベビちゃんを信じなくてどうするんだ!と思った。

そして、私は分娩室で 分娩台の上で長い長い夜を過ごした。

旦那の手と安産祈願のお守りを握りながら…


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