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「関心領域」
子どもの頃、「戦争」について学んだとき、衝撃的だったのは、「ホロコースト」だった。
教科書に書いてある文章だけで、子ども心に「同じ人間が、人間に対してここまで残酷なことができるものなのか。」と思った。
一度知ってしまったら、もう知らなかったときには戻れない。
だから、図書館で「アンネの日記」や「あのころはフリードリヒがいた」などを借りて読んでいった。
子どもだから、被害を受けた側のお話だけ選んでいて、今思うと偏りが生じていた。
勝手に「戦争でこんなひどいことをした人たちは恐ろしい人で、自分はそうではない、そうならない。」と思っていた。
おそらく、無意識に線をひきたかったのだ。
「関心領域」という映画を鑑賞した。
原作は、イギリスの作家、マーティン・エイミス。
タイトルの関心領域(英:The Zone of Interest)は、ポーランドのオシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するためにナチス親衛隊が使った言葉だ。
暗闇と音がとても怖く感じられる映画だった。
もし「ホロコースト」を知らなければ、全然別の感情を抱いたと思う。
映画は、タイトルロールのあと、ある家族が、緑豊かな川のほとりで水浴びをしたり、野原でベリーを摘んだりしながら過ごす幸せそうなシーンから始まる。
そんな一家の邸宅は、あのアウシュビッツ収容所の側にある。
だからなのか、音が絶えず響いている。
そして、青空に白い雲とは別の白い煙が立ち昇っている。
楽園のような日常と、この世の地獄が隣り合っているのを、映画を鑑賞している者は目にする。
この映画の監督である、ジョナサン・グレイザーは、映画のパンフレットに掲載されているインタビューでこのように語っていた。
__本作を作る過程で、観客に伝えたいと思ったことを教えてください。
現在もホロコーストの存在を否定している声がたくさんあります。明らかに事実なのに、修正するようなことが言われているのを目にすると私は怒りを覚えます。ですから、この映画で改めて、あの出来事を語る必要があると感じました。時間が経つにつれ、生きた記憶は遠ざかっていきますから、否定する人や歴史を修正しようとする人々たちが出てくる。
だから、わたしはこの出来事についてきちんと語り直す必要があると思いましたし、正面から強く主張するような形で描く方法を探したいと思いました。
同時にこの映画を「現代を生きる私たちの映画にしたい」とも考えました。人間はどのようにして残虐な行為を受け入れるものなのか?どのようにして世の中で起きている恐ろしいことから自分自身を切り離してしまうのか?
自分たちが共犯になること、無関心であること、残酷な行為に及ぶ人間の衝動について描きたいと思ったのです。
監督インタビューより
映画館を出て、太陽の光、きれいな青空、鳥の鳴き声、風に揺れる草花を目にして、感じて、やっと現実に戻ってこれた気がして少しほっとした。
それでも、映画を観る前には戻れない。
この時のざわざわした気持ちを、ここに残しておくことで、意識的に無関心にならないようにしていきたい。
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