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妻さんと夫くん:呼びかた

突然ですが、彼は私のことを「奥さん」とも「嫁」とも「嫁さん」とも「妻」とも呼ばず、「妻さん」と表現します。

昨年入籍する際、「恋人ではなく配偶者として相手を何と表現するか」というディスカッションをひとしきりしたのですが、意味的にも一番近いということで「妻」で合意した後、いつのまにか敬称までつけてくれて「妻さん」になりました。我ながら、気に入っています。

ちなみに、よく聞く「嫁」には「息子の配偶者」という意味があるそうで、「奥さん」は他人の妻を敬う呼称「奥様」のくだけた言い方なのだとか。知らなかった。

あまり聞かなくなったので候補外ではあったけど「家内」は読んで字の如く「家の内にいる人」。「女房」は「宮中の使用人の女性」みたいな意味。「かみさん」は「商人・職人の妻や女主人」を指す「おかみさん」が由来なんだって。

一方私は、彼のことを「夫くん」と表現しています。

「旦那」は「生活の面倒を見る人、パトロン」というのが元々の意味らしく、「やや、余のみが面倒見てもらう立場じゃあないぞよ。」という理由で却下。

「主人」は夫くん的にも「俺が一家の主(あるじ)…?違う。」らしく、却下。

ので、消去法的にも「夫」になった訳だけど、「おっと」ってなんか発音しづらいし、敬称ってよいなと思ったので「夫くん」。

一応付け加えておくと、夫くんの方が年上。

さらに、身長は私より15cmも高い。

腕も脚も私よりうんと長い。

特に腕は長い。

届くはずのない位置にあるモノが、悪魔の実の能力者かと思うほどいとも簡単に取れてしまう。毎回、けっこう、驚く。

目は、日本人形のような私と真逆のパッチリ二重。

ついでにまつエクもマスカラも不要のふさふさまつ毛。なぜだろう、といつも思う。

ーーー

いつだったか、

『お母さんのことは「母」、お父さんのことは「父」、おじいちゃんおばあちゃんのことは「祖父」「祖母」と紹介するんだよ』

と学校の先生が教えてくれたのを思い出した。

10代も前半の前半、ちょっと大人ぶって発する「母」とか「父」とか口元がむずむずして恥ずかしかったけど、いつの間にか自然に言えるようになった。ぎこちなかったのはいつまでだったか、忘れた。

あの感覚とちょっと似ている。

市役所入るまで「彼氏」だった男性が、出てきた瞬間「夫」になる。

だからといって、市役所のお姉さんは『はい!今からあなた達は夫婦ですからね、これからお互いのことは「夫」「妻」と表現してくださいね。でも、「嫁」とか「奥さん」とか、いろいろ種類ありますからね、お好みに合わせてお使いくださいね。』などとは教えてくれない。

というわけで、夫婦初回のディスカッションは「なんと呼ぶか問題」が議題となった。

半分まじめに、半分ふざけて話し合えて面白かった。おすすめです。

しばらく、あの、ぎこちない感覚が続くのだろうけど、またいつの間にか自然に言えるようになっている、はず。

そういえば、市役所を出た瞬間夫くんが

「彼女と入って妻と出てきた。」

と詩人のようなセリフをぼそっと呟いていた。

「その心は。」と聞けばよかった。

今度こっそり尋ねてみよう。

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