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今度君に会ったら映画の話をしよう

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2018年10月の記事一覧

答えは風の中にある|映画『アヒルと鴨のコインロッカー』

嘘はついてない。本当のことを言ってなかっただけ。 言葉にできない気持ちがあって、小説や映画にはそういう曖昧だけど見過ごしちゃいけないものがある。伊坂幸太郎さん原作、手からこぼれ落ちそうな悲しくて優しい物語の『アヒルと鴨のコインロッカー』を中村義洋監督の手で映画化された。 メインキャストはまだ10代や20代前半で、そんな危うさも役柄とぴったりはまって見所のひとつ。 言葉で表現できないことを映画に閉じ込めているのだから、それ以上必要ないかもしれないけれど、この映画のこと

この夜は世界のどこかと繋がっている|映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』

一人ぼっちの夜に、この作品を観て欲しい。 タクシードライバーとお客さんとのとりとめのない会話。なんでもない夜に、もしかしたらこんなドラマチックな物語が生まれてるかもしれない。1991年に制作されたジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』(原題 : Night On Earth)は、5つの都市で起きるタクシーでの出来事を切り取ったオムニバスコメディ映画だ。 タクシー運転手という仕事は不思議なものだ。様々な人を運んでは降ろし、街を走り続ける。その一期一会

眼差しの秘密|映画『しあわせの隠れ場所』

リー・アンのような人になりたいと思った。 アメリカンフットボールでレフトタックルというポジションの地位を確立したマイケル・オアーというスター選手がいる。 2009年に公開された『しあわせの隠れ場所』(原題:THE BLIND SIDE)は、そんなマイケル・オアーの実話を基にした物語だけど、映画で描かれていたのは彼に出会って人生が変わった家族の話だと思う。 この家族のユーモアに笑い、リーの底知れぬ大きな大きな愛情に結局泣かされて、この映画から3つのまなざしの秘密を見つけた