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【読書感想文】投資の知識も、ノウハウも、メンタルも、これ1冊。『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』

今回紹介するのは、山崎元さん・水瀬ケンイチさんの2022年の著書『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』です。

「第3版」とある通り、この『ほったらかし投資術』は2度の改訂を経て、本書である最新版が出ています。

私はつい最近2015年発売の全面改訂版を読んだばかりだったのですが、2015年版と2022年版とで中身がかなり変わっていたので驚きました。

●結論:「リスク資産はオルカン1本買えばOK!」

最新版を読んでまず驚いたのは、なんと言っても本の前半に

「リスク資産は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)1本を買えばOK!」

という明確な主張が出てくること。

ここまではっきり「これを買えばOK!」って言い切っている投資本、他にないんじゃないでしょうか???(私は初めて出会いました)

本書ではこの主張が一切ブレることなく貫徹されており、かつ「なぜオルカン(というか全世界に投資する低コストのインデックスファンド)1本で大丈夫なのか?」もしっかり説明されていて、説得力がすごいです。

つみたてNISAでコツコツオルカンを買い続けている身としては、かなり心強く思いました。


ちなみに私が過去に読んだ2015年版は、確か「リスク資産はインデックスファンドを国内株式:外国株式=1:1の割合で持つ(年に1回程度リバランスが必要)」という結論だったと思います。

これと比べるとかなりスッキリしたなという印象ですね。

なお、なぜ「国内株式:外国株式=1:1」ではなく「オルカン1本でOK」という持論に変更されたかも丁寧に解説されていて、「こういうところもきちんと明かしてくれる2人の誠実さもいいなぁ」と思ったりしました。


●低成長株を買っても大丈夫な理由が腑に落ちた

個人的に印象的だった点はもう一つあって、それが「低成長株を買ってもいい理由」です。

これについては2015年版にも同じ主張が書かれていたんですが、正直ちょっと難しい話だったので理解があまりできなかったんですよね。。。

最新版の説明も難しくはありますが、ただ私的に「なるほど、そう考えればいいのか!!!」とめちゃくちゃビビッときたフレーズがあったので、なんとなく理解できました。


そのフレーズというのは、

投資にあっては、実は「リスクを買う」ことが本質なのだと割り切るのがいいと思います

『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』より

という一文です。


この話では、著者が利益成長率の違う3つの株式を例に出し(ゼロ成長、プラス2%成長、マイナス2%成長)、それぞれの理論価格を計算しています。

その結果、「理論上はどの株式に投資しても期待リターンが変わらない(無リスク金利+リスク・プレミアムの割引率と同じになる)」ということが導き出されました。

つまり、著者の言葉を借りるなら

マイナス成長でも株価が正しく形成されていれば、投資でリスク・プレミアムを得ることが十分期待できます

『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』より

というわけです。

正直私はこの計算や理屈を完璧に理解したわけではないのですが、ひとまず「リスク・プレミアムがある以上、日本株のような低成長株に投資しても大丈夫なのか」と思えたことが収穫でした。

今後は計算も理屈もちゃんと理解できるよう、時間をかけて勉強していく所存です(数字苦手だけど……)。


(補足)

「本書の151〜152ページに出てくる株式の理論価格の計算ってこういうこと…?」と思ったサイトを見つけたのでURLを載せておきます(違ったらごめんなさい…)。

http://www.akira2yamazaki.com/02lecture_GS/05_Equity_1.pdf


●知識やノウハウだけではなく、投資と向き合うメンタルも学べる。だからこのシリーズが好き

最後にもう一点だけ、この本の好きなところについて語らせてください。

もう見出しに書いた通りなんですが、本書では投資の知識やノウハウ、理屈や理論だけではなく、投資と向き合うメンタルも学べます。

たとえば以下の文章。

●「投資は勝ち負けではない」「売り買いすることではなくて、持っていることが投資なのだ」という二つのポイントを胸に刻んで淡々と投資を続けることが、おそらくは最適に近い意思決定になります

●相場に関して、考えたり悩んだりすることは、自然なことですし悪くはありません。しかしそこで、自分が考えたり悩んだりすることに、どのような意味があるのかを冷静に自問することが大切です

●多くの人が「もう嫌だ」と思っているときこそが投資のチャンスだと言える

『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』より

投資は自分のお金を市場に投じてはたらかせることなので、損失を怖がる人がたくさんいます(私もそう)。

一方投資は継続が第一であるため、一時的に損が出たからといってすぐにやめてしまうと、その先にある利益を手に入れられないまま終わってしまいます。

だから著者たちは、(特に)投資初心者が途中でドロップアウトしないよう、この本の様々なところで投資との向き合い方を説いてくれているのでしょう。


もし仮に相場が下落して、資産が一時的に大きく減るようなことがあっても、上の言葉を知っていれば比較的冷静でいられるような気がします。 

私自身はまだ投資(つみたてNISA)を始めたばかりの身ですが、上記の言葉を読んで、必要以上に投資を怖がる必要はないんだと感じました。

これから投資を続けていく上で、何度も何度も思い出すであろう助言の数々に出会えて、とてもありがたく思っています。



ちなみに2015年版では、水瀬さんが長年バイ&ホールドを続けられている秘訣を何ページにもわたり伝えています。

こちらも投資家の生々しい感情や考え方が伝わってきておもしろかったですし、大変参考になりました。


私が『ほったらかし投資術』シリーズを好きな理由は、とことん投資家もしくは「投資には興味ないけど資産形成はしたい人たち」の目線に立って物事が書かれているからです。

他の投資系の本だと、たとえば「いかにNISAやiDeCoがお得か」という合理性にばかり光が当たっていて、メンタルについてあまり触れられていないような気がします。

でも投資を行う上での一番のハードルって、なんだかんだで「メンタル」だと思うんですよね。

『ほったらかし投資術』シリーズは以前から感情・心理面にも触れているので、私は勝手に信頼感を持っていますし、投資に熱い注目が注がれている令和で最新版が出たことをとても嬉しく思っています。

おそらくこれから投資がますます当たり前になっていくと思うので、自分の人生に末永く帯同させたい1冊だなと思いました。


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