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映画レビュー「西部戦線異状なし」

1930年のルイス・マイルストン監督の映画『西部戦線異状なし』を観た。

1ヶ月ほど前に観た『ザ・トレンチ<塹壕>』は、最後の突撃の場面をのぞいては全シーン塹壕のなかで展開されていた。映画として「地味」さが否めないようにも感じたが、塹壕のなかでの兵士たちのやり取りから、戦争とはこういうものだったのかということが痛烈に感じられた。

『西部戦線異状なし』では、若者たちが愛国心を掻き立てられ戦争に志願する様や、塹壕戦の様子を見せてくれたのでさらによく理解できた。
塹壕のなかで精神的におかしくなってブルブル震えたり、敵から砲撃を受けている最中にもかかわらず塹壕から飛び出して負傷したりする、みたいな部分も描かれていた。負傷して病院に運ばれたけど死ぬとか、脚を切断するとか。

はじめは漠然と「若者たち」の群像劇だったが、中盤からポールという一人の兵士に焦点が絞られる。こうなると観る方の姿勢もぐっと前のめりになってくる。戦場でつねに生死の分かれ目に立っている自分と、銃後でああだこうだと話し合う父親たちや、相変わらず子どもに愛国心を叩き込み、煽動するのに一生懸命なかつての教師とその生徒たち。戦争のなんたるかを身を持って知っている自分との噛み合わなさを感じて肩を落とすポールを見ているのはつらかった。

休暇を切り上げて戦場に戻ったが、顔ぶれはガラリと変わり、自分が参戦した当初を思わせる10代の若者ばかりになっている。同僚と再会した直後、別れを体験したり。かれだってまだ二十歳そこそこの若者なのに・・・と。そしてラストシーン。

第一次大戦に関する映画をみたり、本を読んだりするたび、これがたった百年前の真実だってことに背中が寒くなる。
人の人生は、生まれた時代に支配されている。その支配されているなかで、何を考え、何を大切にし、どう生きるかを考えなくてはいけない。何も考えずに生きて死んでいけたら幸せなのかもしれないけど、考えないではいられないのが自分なのだなあ・・・って思います。

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