2.ワインの個性はブドウから
■ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック
(Joseph Louis Gay-Lussac)
(1778~1850)
アルコール発酵の化学式
「ブドウ糖 C6H12O6→エチルアルコール 2C2H5OH + 二酸化炭素 2CO2」
■ルイ・パスツール
(Louis Pasteur)
(1822~1895)
酵母による発酵のメカニズム
と教本には書かれていますが、、、
解明の順序として本来ならば自然に発酵されアルコールができる事の原理を見つけ、後に化学式が解明されると思いませんか?
ではなぜメカニズムより化学式が先に解明されたのでしょうか?
●ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックと
ルイ・パスツールの解明について
お酒の歴史は推定1万年以上と長く、
有史以前から存在していたとされています。
太古から果実や穀物がお酒になることを
知っていたのでしょう。
19世紀、それをフランスの化学者ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックが、
糖分がアルコールに変化することを原子記号の化学式によって証明しました。
しかし化学式はわかっても、
なぜそうなるのかわかりませんでした。
美味しいワインができる一方で、なぜかどうしてもビネガーのようなワインもできてしまうのです。
ワインの腐敗原因を調査して欲しいと、
フランス皇帝ナポレオン3世(1808〜1873)
の依頼を受けて登場したのが、
同じくフランス人のルイ・パスツールです。
微生物や細菌の専門家である彼は、
糖分をアルコールと二酸化炭素に分解しているのは酵母であることを突き止めました。
酵母の存在は既に知られていましたが、まさかの事態です。
ここでさらにワインを劣化させるのはワイン酵母とはまた違う微生物であることを突き止めました。
ワインの風味とアルコールを守りながら微生物を死滅させる
「低温殺菌法」
を生み出したのです。
●なぜ発酵の原理よりも先に化学式が解明されたのか
厳密にいえばアルコール発酵のメカニズムは
1789年、フランスの
アントワーヌ=ローラン・ド・ラヴォアジエ
(Antoine-Laurent de Lavoisier)
(1743-1794)
によってある程度解明されていました。
ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックは
それを化学式によって確実なものにしたのです。
ただし2人とも科学者であって、
細菌学者ではありませんでした。
どこまで微生物のことを勉強していたかは定かではありませんが、あくまで化学現象として捉えていたのだと思います。
ではなぜパスツールがワインの解明に
抜擢されたのでしょうか?
実をいうと、彼はすでにワインの研究実績があります。
彼はワインに含まれる酒石酸の性質の解明をしました。
そんなパスツールならきっと解決してくれると思ったのでしょう。
よくよく考えれば、おいしいワインがまさか目に見えない生物のおかげだなんて誰も想像しなかったでしょう。
化学と生物学の発展のスピードの差が、発酵の原理よりも化学式が解明されたのだと思います。
「世界中の書物よりもワインボトルの中により深い哲学がある」
これはワイン造りに一大革命を起こした、
ルイ・パスツールの言葉です。
私たちがいまワインを美味しく味わえるのは
パスツールのおかげと言えるでしょう❕
パスツールは
アルコール発酵が酵母によるもの
であることを発見し、
ワインなどの腐敗を防ぐ、
「低温殺菌法」を開発した人物なのです!
「近代細菌学の開祖」
とよばれているパスツールがなぜワイン造りの一大革命を起こしたのか
もう一度、詳しく一緒にみていきましょう!
●ルイ・パスツールの生い立ち
パスツールは、1822年12月27日
フランス東部、ジュラ地方のドールという町で
皮なめし職人の3人目の子として誕生しました。
生まれた町はドールですが、約30㎞離れたアルボワという町で幼少期を過ごし、パスツールが研究を重ねた家もアルボワあります。
その後、パリの高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)へ進学し、化学者の道を歩みます。
やがて大学教授となり、とあるアルコール製造業者からワインの腐敗原因を調べてほしいという依頼を受けたことがきっかけで
1866年、「低温殺菌法」を開発しました。
パスツールは伝染病と細菌の関係を明らかにするなど、細菌の研究に多大な影響を与えたことから「細菌学の父」とよばれています。
また、狂犬病などへの「ワクチン」の開発や、伝染病にかからないように前もって体内に免疫を作る「予防接種」を世に広めました。
●ブドウからワインが造られる原理を解明したのもパスツール!
大昔からワイン造りは行われていたのに、その原理はだれもわからないまま人々はワイン造りを行っていたのです!
酵母自体はすでに発見されていましたが、酵母と発酵の因果関係までは解明されていませんでした。
パスツールはアルコール発酵が酵母によるものだと発見。
アルコールの発酵は、酵母という微生物がいることによって行われるのです。
また、微生物の働きによって発酵の違いがあることも発見しました。
チーズなどの乳製品やビール造りなども微生物による発酵の産物であることは今では常識ですが、当時はまだ知られていませんでした。
パスツールによってその原理が広く知られるようになったのです。
●白鳥の首フラスコ実験
当時は、微生物は自然に発生するという
「自然発生説」が広く信じられていました。
パスツールはこの自然発生説を否定するために、「白鳥の首のフラスコ」を用いて実験を行います。
微生物の増殖は外部からの侵入によるものだと突き詰め、生物は自然発生しないということを証明しました。
●ワインの腐敗を防ぐ「低温殺菌法」
19世紀半ばのフランスではすでにワインの輸出が活発に行われていました。
しかし、輸出国に到達するとワインの劣化が激しいという問題が。
パスツールは1863年、
フランス皇帝ナポレオン3世(1808〜1873)の命を受けてワインの劣化原因の追究をします。
劣化の原因は微生物によるものだと、
「白鳥の首のフラスコ」を使って証明しました。
空気に触れたフラスコのワインには微生物が発生し、明らかに質が悪くなりましたが、
外気を遮断したフラスコのワインには微生物が発生しなかったのです。
この結果から、ワインの劣化を防ぐにはワインの瓶の中の微生物を死滅させればよいと考えます。
ワインの味を落とさない程度の温度、55度~60度で湯煎し、バクテリアやカビなどの微生物を殺菌させる方法、「低温殺菌法」を生み出しました。
ワインの風味やアルコール分を飛ばすことなく、微生物を死滅させることに成功したのです!
1867年に開催されたパリ万国博覧会では、この「低温殺菌法」でグランプリを受賞しました。
低温殺菌法を
フランス語では、
「Pasteurisé(パストリゼ)」
英語では、
「Pasteurization
(パスチャライゼーション)」
といいます。
これらの言葉はパスツールの名を
とってつけられています。
1886年になって、ドイツの
フランツ・フォン・ソックスレー
(Franz von Soxhlet) が
このパスチャライゼーションを
牛乳の殺菌に応用することを提唱しました。
この低温殺菌法は、牛乳やビールなど現代においても広く活用されている方法ですね!
●パスツールの偉業から改めて
「世界中の書物よりもワインボトルの中により深い哲学がある」
改めてこの言葉を噛みしめてみると、なぜパスツールがこの言葉を残したのか、ワインに対してどんな想いで向き合っていたのか、見えてくるような気がしませんか。
一本のワインボトルの中に自分の研究や経験のすべてが詰まっている、だから書物よりも深いんだ、という意味かもしれません。
または、まるで生き物のように変化するワインに対して研究の困難さを言いたかったのかもしれません。
●まとめ
ワインの歴史にはルイ・パスツールという偉大な人物が大きく関わっています。
ワインだけでなく、ワクチン開発など人の命も救ってきたパスツール。
次にワインを飲むときは、パスツールに想いを馳せながら飲んでみるのもいいかもしれませんね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?