ユーザ理解の難しさーエモーショナルデザインを考える

ユーザを理解する、というのはとても、とても、難しい。文化、環境、コンテキスト。それらに基づいた認知や心理。それらをデザイナーが本当に理解できるのだろうか?

私は日本人であるが、日本を離れてもう15年以上経つ。日本と関わらない仕事をするようになって5年以上経った。現在関わっているプロダクトのユーザは世界中にいて、文化、言語、環境も様々だ。開発チームの半数以上は健康体で、欧米系白人で最低でもマスターまで持っていて、ブロードバンド接続が当たり前、ハイスペックデバイスで仕事をしている。

しかし、ユーザの中には、サテライト接続のすごく遅いインターネットを砂漠の中で使っていて、砂だらけになったトラックパッドは使い物にならないとか、直射日光の下でモバイルデバイスは読めないという環境にいるひともいる。あるいは、英語を読めない少数民族の若い少年がアルバイトで私たちの製品を使って仕事をしてくれることもある。彼らはハイエンドのモバイルデバイスは日常的に使っていないし、多くはラップトップを使ったこともない。

最終エンドユーザは、そもそもデジタルデバイスをほとんど見たことがない人もいる。また、経済や貨幣に対する理解が全く違う。例えばATMやクレジットカードのような、プラスティックのカードを何やら光る小さな箱にかざすと物がもらえる、ということが理解できない。あるいは、指紋や虹彩といった生体情報を提供することの、利便性や危険性に関する知識がない。ヘナをした人や、働きづくめの農夫の指紋はほとんどスキャナに反応しない。

エアコンの効いたオフィスに座っているだけでは、こういったユーザの文化・環境を理解することは、ほぼ不可能である。運がいいことに、私はデザイナーとしてごくたまにそういった現地に行くことができるので、すこしはこういった文化・環境・ユーザのフラストレーションに触れることができる。しかし、それでも本当にごく一部しかわからない。

現実的に、全てのユーザータイプと実際に触れ合って観察するというとは不可能だ。どんな場合でも想定外のユーザというのはいるし、想像を絶する環境というのも存在する。

今の私の課題は、こういったユーザ像をどう理解するのか、という点にある。

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