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8位 NOTEの収益化の連動を考える

9位(先程まで更新してましたが😛)では YouTuber について考えてみましたが、Google AdSense の広告収入を背景とする YouTuber の収益化は個人が参加できる最強のビジネスモデルのように見えます。
ですが、実際の個人 YouTuber がコンテンツ制作を継続して、長期にを収益を維持していく作業はかなり大変そうです。そこで NOTE の収益化メカニズムを活用して、YouTuber のコンテンツ制作を分業化・プロダクション化する方法を考えたいと思っています。

以降、参考までに、現時点での僕の服案をザッと説明します。


さいとう・たかをが創出したプロダクション・システム

僕は、劇画家のさいとう・たかをが創出したプロダクション・システムをモデルにYouTubeコンテンツの制作の分業化・プロダクション化を検討するのが良いと考えています。ご存知の方も多いかと思いますが「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」でギネス世界記録に認定された劇画『ゴルゴ13』の原作者です。

1968年から実に55年間に渡って新作を発表し続け、さらに原作者が死去した後も連載が継続されているこの劇画シリーズ。さいとうが編み出したプロダクション・システムにより制作されていることはご存知でしょうか?

さいとうは1950年代、関西の貸本漫画で頭角を現していた若手漫画家でした。当時は『鉄腕アトム』などのヒットで手塚治虫が大ブレークしていた時代です。この頃の漫画は大手出版社が手がける小学生向けの月刊誌に掲載される連載が主流でした。少し年齢が上の中高生がターゲットのさいとうの劇画などはニッチ市場の貸本屋で流通されてました。棲み分けがあったのです。ところが1959年、小学館の『少年サンデー』と講談社の『少年マガジン』といった漫画週刊誌が立て続けに発刊され、大手出版社がニッチ市場に流れ込んでくると、さいとうなどの貸本漫画家は作品を発表する場を失うことになりました。今日では一般的になっている「原作と作画」という漫画制作の分業は、週刊連載という新しいフォーマットでの漫画家の作業負担を減らすため『少年マガジン』が始めたと言われていますが、1960年代は貸本漫画家たちが自ら集まって分業体制で作品を制作するプロダクションを模索することになります。

1960年代後半の劇画ブームの中、創刊した小学館「ビッグコミック」で登場したのが、殺し屋が主人公の掟破りの劇画『ゴルゴ13』でした。

前口上が長くなりましたが…

さいとうのプロダクションがユニークな点は本質的に漫画家集団、今風に言えばクリエータ集団であることがあげられます。『ゴルゴ13』の単行本は掲載誌を発行する小学館ではなくリイド社から出版されていますが、この会社はプロダクションの出版部門を分社化したもので、同様の事例は長谷川町子の姉妹社などがあげられます。また原作と作画の分業も非常に上手く進められており「国際舞台で活躍するスパイナー」のリアリティを徹底的に追求したシナリオを得ることができています。例えば1989年のベルリンの壁が崩壊した際「これで冷戦体制をネタにしている『ゴルゴ13』は続けられなくなるんじゃないの?」などと噂されましたが、シリーズは全くビクともしませんでした。

そして何よりも大きな成果は、作品のあらゆる点が完璧に伝承されているため、原作者が死去してもシリーズの連載を継続できる事実です。これは死去に伴い再版事業へと軸足を移さざる得なくなった手塚治虫やジブリを解体してしまったため最新作ではかつての作品のテイストが維持できなくなっている宮崎駿と比べると驚くべきことで、プロダクション化のメリットを明確に示す事例になっていることかと思います。

さいとうプロダクションの制作の詳細、作品をどのように制作しているか?はさらに調査が必要だと思いますが、分業化・プロダクション化のモデルとして注目するべきかと考えています。

さいとう作品の分業制作体制の実際

漫画制作での分業は、昔から原作・作画・編集の3者によって進められるとされて来ましたが、プロダクション制作を標榜するさいとう作品の体制は、映画の制作チームを参考に考案されたらしくもっと大掛かりな組織です。
現時点ではさいとう作品のプロダクションに関するまとまった記述は見つけられていないのですが、担当者のインタビューなどを見ることができます。まずは編集者のインタビュー…

いわゆる「編集」という呼び名は出版社から派遣される人員に由来しますが、実質的には漫画制作のプロデューサーのようです。「原作」を脚本家、「作画」は「作画チーム」と呼んでいるあたりがさいとう作品の特徴的なのでしょう。また「監修」というもう一つの役割を強調していることも印象的です。次に「作画チーム」のインタビュー…

ここでは『鬼平犯科帳』の作画チームのチーフが、作画体制の詳細について説明しています。一番驚かされるのは、既に独立した漫画家として商業誌で連載した実績のある藤原芳秀氏がチーフとして作画に当たっていることです。実績のある彼が、敢えてさいとう作品の制作に責任のある立場で関わる理由が個人的には気になるところですが…これがさいとうプロダクションがクリエーター集団であることの証左なのでしょう。制作プロセスに沿って「下書き」「構図」「背景」「主要キャラ」「脇役キャラ」と5つの工程を10人で担当します。1本あたり7日間程度の作業なんだそうです。

上記のインタビューで分業制作体制が次のようにザックリと把握できます。

  • 総監督の位置にさいとう・たかをがいて、作品シリーズ毎に編集者が補佐をする

  • エピソード毎に脚本家が割り当てられ複数のエピソードが並行して練り上げられる

  • 進捗状況や雑誌の掲載時期を勘案して作画に入るエピソードが選択される

  • エピソードが作画に入ると10日〜2週間で1話完成

掲載誌や作品が複数ある場合は作画チームを複数編成するのでしょうねぇ。この業務フローであれば脚本家の業務などをNOTEの収益化と連動することも可能でしょう。もちろん、それだけの作品の需要があればの話ですが…

企画系 YouTuber のコンテンツ制作の現実

一方、YouTuber の映像コンテンツの制作ですが…

9位で紹介した10例のうち「髙橋洋一チャンネル」や「上原浩治の雑談魂」は既存のテレビ番組の制作プロダクションがコンテンツ制作に関わっていると推測されるので、質・量ともに安定している印象です。が、個々の映像コンテンツの品質は質問を投げかけるインタビュアーの俗人的なスキルで担保されているように見えます。番組を盛り上げたり、話題が外れないように誘導したり…といった撮影時のライブでの瞬発力に頼っているので分業化が考えづらいコンテンツでもあります。

これに対し個人 YouTuber が制作するコンテンツ、例えば「アイドルのいる生活」や「まんまる。」などは継続的なコンテンツ制作の負荷に耐えかねている状況が見て取れます。次は2023/11/10に「まんまる。」でアップされた動画で、コンテンツ制作の負担について具体的に語っています。

年末年始を含む今後の8週間に配信する映像コンテンツ制作の議論なのですが、年末年始の2週間を完全休業するため、年内6週間で終わらせる計画を相談しています。その間にレギュラーとショートを合わせて44本の動画を作成しなければならない…との計算結果に慄いている表情が印象的です。

動画44本はレギュラームービーが16本、案件ムービー(個別のスポンサー付きで商品紹介等を行う)が3本、ショートムービーが25本という内訳なんだそうで、これが8週間にアップしなければならない動画本数だと仮定すると、毎週レギュラームービーを2本とショートムービー3本、つまりウィークデーは毎日いずれかのムービーをアップしていることになります。

これがアカウント登録数が急上昇したと認知される「アイドルのいる生活」を上回るペースで登録数を獲得している「まんまる。」のヘビーローテーション戦略のような気がします。このチャンネルを立ち上げたのは、地方都市の中古車販売店の社長なんですが、映像に登場する女子社員のキャラクターを際立たせる演出等、この社長は相当の YouTube 巧者で、このチャネルによる告知効果は地方都市の中古車販売店としては相当なものになるのではないかと思います。その反面、上記の映像でも語られているように映像コンテンツの制作負荷は尋常ではなく、また出演している女子社員のプライバシーのリスクも内包しているので、現在のようなハイペースの活動はあまり長く続けられないのではないか?というのが僕の感想です。

YouTuber 映像コンテンツの分業化の可能性

「まんまる。」に限らず、一定の成果を収めている多くの個人 YouTuber は、かなり無理を強いられている状態で映像コンテンツの制作・配信を続けているように見えますし、それが数年持たずに配信を停止してしまう理由になっているのではないかと僕は考えています。なので近い将来、分業化の取り組みが顕在化してくるのではないかと僕は想像しています。
前述のさいとうプロのようにプロダクション化に向かう可能性も出てくる期待があるので、そこで NOTE の収益化のメカニズムと連携できないか?と考えています(つづく)

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