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シンポジウム 日本で暮らす―生活の中で気づく文化の違い―~困った、何とかしてほしいを伝えるためのキャラクターの力~


大阪国際交流センターでシンポジウムを見てきた。
大阪国際交流センターは外国人のための情報提供施設+イベント会場なのだが、大阪市の広報でなぜか博物館・美術館と同列に扱われていることもあるので、「ミュージアムに行くぞ」のマガジンに入れておく。


シンポジウムのテーマ
シンポジウムのテーマは、日本に住む外国籍の人、もしくは外国にルーツを持つ人々がどんなことに困っているか話し合うというもの。
前半は、日本育ちのロシア人、小原ブラスさんとダイバーシティ研究所代表、田村太郎さんのトークセッションだった。
その後、外国出身の人たちが自己紹介と、日本に来て困ったことを発表し、それについて話し合う。


小原ブラスさんのトークセッションのこと
YouTubeで見ている内容がかなり片寄っているので、小原ブラスさんのことも「そういう人がいる」ということは知りつつきちんと話を聞いたことはなかった。
ロシアにいた期間より日本にいた期間の方がずっと長いだけあって、口調は完全に関西の話好きのお兄ちゃんである。
頭の回転が早く、ジョークも軽快で、会場は何度も笑いに包まれていた。
面白かったのは、日本で暮らした時間が長く、自分は日本人だと思っているということ。まあ、子どものころに日本に渡ったのだからそれはそうだろう。
しかし外見が日本人離れしているため、周囲もギャップがあるように感じてしまう。これが小原さんの「素」なのであろうに。
自分の身の回りには、外国人といえば在日コリアンや中華系の人が多かったので、この辺は方向性の違う悩みだな……と思った。

小原さんはソ連崩壊前後に生まれており、ということは私と同世代である。ロシアに生まれたことによる、ロシアへの認識の違いがにじみ出るようで面白かった。
小原さんの母は、小原さんの父と結婚するために日本に渡った。つまり小原さんは連れ子である。
新しくできた血のつながらない父に、いろいろ優しくしてもらったそうだ。ディズニーランドにつれて行ってもらった思い出を、語る小原さんが優しい雰囲気だった。
そして、終盤に、「自分は恵まれていた」という立場を話し始める。小原さんは、近所付き合いや、家族、友達にも恵まれ、強く差別された経験は少なかった。しかし、日本にいる外国人は、日本での生活に行き詰まり、「もう故郷に帰らなければ」と言っている人も多いのである。
小原さんは他人に警戒心を抱かせない外見、口調を持っており、その事場で困っている外国人のことも話せたら、とおっしゃっていた。そのための出版活動、YouTube活動なのかもしれない。


後半では、中国、ネパール、ウクライナ、ブラジル、ロシアの小原ブラスさんの五か国出身の人が自己紹介をしつつ、日本について語る。
結構衝撃的なのは、外国人は敷金を2倍要求されるということだった。ペットを飼っている人も敷金を2倍要求されるので、「ペットと同列かよ!」と笑い話のようになっていたが、当事者としては切実な内容だろう。
それから、外国にルーツのある子どもは、周囲に「国際的であれ」と要求され、それに流されてしまうことがあるらしい。プログラマーになりたかったのに、通訳を志望してしまうなどだ。
外国にルーツのある子どもも、できるだけ長い目で見て、可能性を狭めないようにするのが大切だと感じた。


外国人の参政権について、いろいろ過激な話題が飛び交っているけれど、実際のところ選挙権や被選挙権がほしいというところまで主張している外国人は少ない。
ただ日本で働いて、日本に納税しているんだから、ある程度保護されるのは当たり前だろう。働いてもらうけれど権利は一切認めない、といつのは奴隷に等しい。「政治に参加する」というのはいろいろな段階があると思うが、共存するために話し合うこと、何かを主張することはそれだけで政治的な行いである。
抽象的な議論になりすぎると「いま、ここで困っているという事実」がおざなりになる気がする。何はともあれ、具体的な悩みを解決するのが先だと思う。

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