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帰りたくない

そう思うときはいつも
このスーパーの二階駐車場に来る。

21年前、地元を離れ知らない街での同居生活がはじまった時も、ここでよく時間を潰した。
気忙しくて、落ちつかなくて、ゆっくりごはんが食べれない、ただゆっくりとコーヒーが飲みたかっただけなのに、と涙をポロリしながら。
でも、子どもが待ってると思えば、勇んで帰ることができた、我慢しなくては、頑張らなくては、と思っていたから。

でも、今は頑張ったところでなにもならない。亡くなった息子が帰ってくるわけでもなく、寝たきりわがまま舅にふりまわされるだけ。
呼び鈴を鳴らし、しょうもない用事をいいつける舅。
あなた一体、何回、寝たきりになるの?
よくなったと思ったらすぐに無理して畑仕事するから、またぶり返して寝たきりになる。誰のいうことも聞かない。お騒がせ老人である。

あぁ。
家族の思い出が残る家ではなく
私だけの家に帰りたい。

ベランダから海が眺められて
キッチンには、ワインやスパイス
コーヒー道具が並んでる。
サササッと野菜の焼き浸しを作り、チーズと、生春巻なんかを並べてパクっと食べ、ゆっくり読書したり映画みたり。
かき氷屋さんになる映画がみたいんだけど
なんて題名だったけな。

吉本ばななさんの
海のふたを読んでから
かき氷が頭から離れない。

さっ。
家に帰ろう。

とやかくいうても、しゃーないのである。