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"エスパルスのスリーバックってどうなの?(守備編)” Tactical Scrapbook#5

こんにちは、El Gran Equipoです。

連日熱い戦いが繰り広げられるEURO2020を楽しみつつ、寝不足な日々です。。

さて、今回はエスパルスのスリーバックにおける守備面での考え方を紐解いてみたいと思います(異論大歓迎です。。)
今回も3-4-2-1の形を前提にお話ししていきます。

攻撃編はこちらを覗いてみてください。

それでは行ってみましょう!

1.前で蓋をするか、後ろで蓋をするか

守備面においてもポイントとなるのはWBの高さ。
まずは、ベースのポジションでのかみ合わせで簡単にみてみたいと思います。

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図をみると分かる通り、エスパルスは最前線の3枚で中央と両脇3つのレーン(*ピッチを縦に5分割したエリアのこと)をカバーしています。
また、同じように最終ラインの3枚で中央と中間の3つのレーンをカバーしています。
そのため、WBが前線のプレスに加わり、前に出ることが出来れば、相手のビルドアップに対して、5つのレーン全てで蓋をすることが出来ます。
一方で、WBが最終ラインに加われば、5つのレーン全てで相手攻撃陣に蓋をすることが出来るということになります。
(実際はそこまでシンプルではないですが)

ロティーナさんは、着任当初から「相手のビルドアップに前線からのプレスで制限をかけていく」ことに取り組んでおり、3-4-2-1のシステムでもまずはそこを狙っていくという考えがあるように思います。

といっても、図を見ると分かるように、このシステムでは、一番外側のレーンでの守備者はWBだけなので、前に出ると背後を空けてしまうというリスクが伴います。
相手の立ち位置などによって、前に出るリスクが取れない場合は、WBは撤退し5バックを形成することで後方で蓋をするという選択を取ることになります。

2.WBが前に出ると得られること

それでは具体的にWBが前に出た場合の守備を見ていきたいと思います。
ここでは、相手がビルドアップ時にボランチを1枚下げることで、最終ラインを3枚にしてビルドアップする形で見ていきたいと思います。
相手からすれば、この形をつくることでSBを押し上げることが出来るので、SBに攻撃力のある選手を配置した場合によく使われる形です。

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この場合のエスパルスの守備ですが、まず、前線3枚で相手最終ライン3枚の縦方向のパスを消しつつ、じわじわとけん制をかけていきます。
チアゴはピトゥカにプレッシャーをかけていくというよりも、外側へのパスを誘い込むように前に立ちつつ、背中でボランチを消すような立ち方を取り、両脇へパスが出たところで、ディサロや片山がプレッシャーをかけていきます。

前線が縦パスを制限し、相手のパスを外側に誘導していくことで、エスパルスのWB(ここではエウシーニョ)が、相手SB(ここでは永戸)の位置まで押し上げることが出来ます。

ボールを受けた永戸は、ボランチのレオシルバや一つ前の白崎へのパスを探りますが、エウシーニョが前に出ていった段階で、後方の宮本、ヴァウドは次のパスコースを消すべくスライドを行います。
(それ以外の選手も右方向にスライドしている)

これにより、永戸は完全に蓋をされた状態になり、ボールを再び後ろに下げざるを得ません。GKまでボールを下げさせ、蹴らせたボールを回収出来れば、相手の攻撃にリズムを与えない守備が出来ることになります。
エスパルスからすれば、この形を作ることが最初の狙いとなると思います。

3.WBが前に出られないときとは?

試合を通して先述のような形を作ることが出来れば文句なしですが、流石にそれは難しく、WBが前に出られず撤退を強いられる場面もあります。

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上図のように、白崎がエウシーニョの背後へと動くと、エウシーニョとヴァウドのどちらがマークをするのか迷いが生じます。

冒頭で述べたように、一番外側のレーンに立つ守備者はWBだけです。
したがって、白崎の抜け出しに対して、エウシーニョからすれば自分の背後を取られることが気になりますし、ヴァウドからすれば自分が担当する中間のレーンから飛び出して付いていくか、マークを受け渡すか迷います。

ルヴァン鹿島戦の特に第2戦では鹿島のSHがこのような動きを行うことが多く、エウシーニョが前に出にくい状況が多く見られました。

エウシーニョが前に出られないと、先ほどのように最前線でパスを外側に誘導してもSBがフリーになるので、エスパルスとしてはプレスを一度切り上げ、撤退して守備ブロックを作ることになります。

4.5バックでの前に出るブロック

WBが前に出られないと一度撤退。但し、それは決して悪いことではありません。一度きちんとブロックを敷くことで、失点しにくい形を作り、相手の攻撃をストップすれば良いからです。

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ブロックを敷いた状況であっても、エスパルスの5バックはただ後ろで待ち構えるだけではありません。
(上図はリーグ戦 横浜FM戦の形で、中盤の構成が鹿島戦と異なりますが、エスパルスが5バックであることに変わりはありません)

エスパルスは最終ラインに5枚を並べることをベースとしつつ、中間のレーンでボールを受けようとする選手には、CBが前に出て潰しに行きます。
5バックからCBが1枚飛び出しても、最終ラインには4枚が残っているので、枚数を担保しつつ、相手に自由を与えない守備を行うことが出来ます。

ボランチの脇で受けようとする相手選手を味方CBが、前に飛び出して迎撃してくれるため、ボランチの選手も最終ラインに吸収されることがなく、前向きに守備が出来る点もこの配置のメリットだと思います。

5.ブロック形成と攻撃への繋がり

これまでWBの高さに応じて前線からのプレスやブロックを形成したうえでの構えた守備を紹介してきました。
それでは、ボールを奪った後の攻撃への切り替えはどうでしょうか。

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WBが高い位置を取りプレスをかけることで、前線でボールを奪えれば、前線の選手を中心にショートカウンターを仕掛けることが出来ます。

一方で、ブロックを形成した場合にはボールを奪う位置は必然的に低くなります。そこで起点にしたいのが、ボールのあるサイドとは反対側のシャドーの選手だと思います。
ブロックを形成した状態では、シャドーの選手(上図では片山とカルリーニョス)が中盤の位置まで下り、5-4-1を形成します。
しかし、ボールサイドの中盤エリアは、3枚である程度カバーすることが出来ます。
この状況でカルリーニョスが少し高めの位置に立つことで、相手の逆サイドへの展開に備えながら、ボールを奪った後の起点となることが出来ます。

攻撃のつながりの部分では、シャドーの選手の攻め気な立ち位置とボールを受ける力がとても重要になります。

6.有効なオプションとしてのスリーバック

2回に分けて、スリーバックでのロティーナさんの取り組みと狙いを紹介してきました。

鳥栖や横浜FMと相手の攻撃的なスタイルに合わせる形で始まったスリーバックですが、ルヴァン鹿島戦や天皇杯と攻撃・守備の両面でバランスよく戦うためのオプションへと徐々に進化してきていると感じます。

ちなみにEURO2020でも、自分の観た限りですが、ベルギー、オランダ、オーストリア、ウェールズ、スイス、スコットランド、ドイツとかなり多くの国がスリーバックを採用しており、一つのトレンドになっているようです。

相手の戦術やシステムのかみ合わせに応じて、戦い方を変えることで相手をコントロールする。そんなエスパルスが見たいですね。

水曜日から始まるリーグ戦は、残留を争う下位グループとの直接対決が続きます。ピッチに立てない選手たちの思いも胸に、きちんとポイントを稼ぎ、上位へと浮上してほしいです!

最後までお読みいただきありがとうございました。


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