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Tactical Scrapbook#3 "世界最高峰のマンチェスターシティと配置で挑むアーセナル”

こんにちは、El Gran Equipoです。

既にだいぶ時間が経ってしまっていますが、今回は2月21日に行われたプレミアリーグ第25節アーセナルvsマンチェスターシティの一戦からお届けします。

好調シティに挑んだアーセナル、試合開始早々に喫した失点に泣くも、現時点で世界最高峰といっても過言ではないシティに対してきちんと対応し、志を持った試合を見せました。

ペップ・シティの完成度はすさまじいと感じましたが、それに対してどう対応するのか、まさにプレミアリーグ!と感じるとても面白い試合でした。

それではいってみましょう!

1.システムは単なる数字に過ぎない

この試合に勝利し、公式戦18連勝となったシティ。基本布陣は4-3-3ですが、トップの位置に入ったのはミッドフィルダーのベルナルドシルバ。

純粋なストライカーがいないものの、すべての選手が必要な位置に必要なタイミングで流動的に動き続けることで、相手守備陣をかく乱します。

この試合も上図の通り、基本布陣ではかみ合う形であったものの、試合が始まってみれば、シティの選手たちは4-3-3という数字にとらわれない位置取りで、アーセナルの選手を動かし、空いたスペースを突いていきます。

2.シティの多様なロールによるボール保持


システムという枠組みを超えたシティ、この試合でのビルドアップを見てみましょう。

上図を見てもらうと分かる通り、動きが多様すぎて図がぐちゃぐちゃです。。しかし、すべての動きが理にかなっているのです。

最終ラインからのビルドアップの局面では、右サイドバックのカンセロがボランチの位置まで上がり、スリーバックを形成します。
カンセロはこの位置からトップ下やハーフスペースにも入り込むという独特な位置取りと卓越したテクニックで攻撃に厚みをもたらしています(俗にいうカンセロ・ロール)。

もちろん、必ずスリーバックの形で組み立てるわけでなく、相手のプレッシング要員の枚数に対して、1人多い人数で数的優位を作ることが前提となります。
この試合のアーセナルはワントップと右ウイングが前に出てきており、逆に左ウイングはカンセロを意識した位置取りとなっていました。

またもう一つの特徴が、右CBがかなり幅を取るということ。通常、スリーバックでのビルドアップといっても、ペナルティエリア幅で繋ぐことが多いと思いますが、CBの片割れは右SBくらいの位置まで広がります。
一見リスキーですが、シティのCBや左SBがボールの扱いに優れていることから、そのリスクを補い、ビルドアップでの優位性を生み出しています。

実際に、この幅の取り方により、アーセナルは効果的にプレッシングをかけるのが難しくなっていました。

また、プレッシングを受けた場合でも、リーグ随一のキック力・精度を誇るGKエデルソンにボールを下げれば、一気に局面を変えるキックでプレッシングを無効化します。

そして、中盤以降の位置取りは下図のような形になっていました。

両ウイングは幅を取りながら、高い位置を取ることで、アーセナルのサイドバックをひきつけます。
というのも、シティは攻撃の最終局面でウイングと相手サイドバックの1対1の局面を作り、個人の能力で打開することを狙っていたためです。

また、この試合で純粋なストライカーを置かないゼロトップを敷いたシティは、インテリオールとカンセロを含めた4人で中央のスペースでのポジションチェンジを頻繁に繰り返しました。
トップの位置にいた選手が下がることで空けたスペースに中盤の選手が入ったり、カンセロが内側に入ったスペースを別の選手が使ったりと、アーセナルの守備陣は対応に追われました。

この動きに対して、アーセナルはスペースではなく、人を捕まえる意識を高く持ち対応をしていました。
そのため、CBが持ち場を離れる場面も多かったのですが、そこはボランチの選手がカバー。一瞬のスキも許されない対応が続きました。

ポジションが重なることなく、それぞれの選手が適格なポジションを取るシティと、人とスぺースをうまく抑えながら守るアーセナルの攻防は非常に面白かったです。

3.アーセナルの狙いを持ったプレッシング

特に前半はボールを保持される場面が多かったアーセナルでしたが、シティのビルドアップに対して、狙いを持った角度からのプレッシングでボールを回収する場面を作ることも出来ていました。

プレッシングのフェーズでは、アーセナルのトップと右ウイングがシティの最終ラインに圧力をかける役割を担います。
後方の中盤3枚と右ウイングはシティの選手を捕まえたうえで、上図のように右ウイングが背後へのパスコースを消しながら、シティのCBへプレスをかけていきます。トップの選手は右サイドに幅を取ったCBへのパスコースを消す位置に立ち、相手のパスコースを限定します。

先述の通り、シティのCBが幅を取ることで中々プレスを有効にかけることは出来ませんでしたが、時折狙った形を作ることは出来ており、相手の戦い方に対してきちんと対策を取ったアーセナルに好感がもてました。

4.シティの気概を立ち位置で乗り越えるアーセナル

ビルドアップで狙いを持った戦いを見せたアーセナル。ボール保持の場面でもシティの強気な圧力を丁寧にかいくぐり、前進を試みていました。

非保持の局面でもシティは基本的に強気。インテリオールの選手が一つ前に出て、最前線を4枚にして相手のビルドアップにプレスをかけます。

CB 2枚のままでのビルドアップでは、シティのトップとインテリオールの2枚に正面からアプローチされ窮屈になってしまいます。
そこで、ボランチが一人降りることで、数的優位を作ると同時に、正面からのプレスをずらす位置取りを可能にしました。

そして、左ウイングがシティのボランチ脇に降りることで中盤でも数的優位を作り、シティの最前線4枚のプレスを回避し何度も前進に成功しました。

左ウイングのサカは、現在のアーセナルの最重要選手の一人なのですが、ここで前を向くことが出来るので、左SBの上がりを引き出し、相手右SBと2対1を作ることが出来、ここが攻撃のきっかけにすることが出来ていました。

前進メカニズムをうまく作ることが出来ていたのは、アルテタ監督のおかげなのかもなと思いつつ、「シティ相手にもきちんと攻撃を組み立てられるぞ」というところを見せてくれた場面でした。

一方のシティもボランチのフェルナンジーニョの幅広いカバーでアーセナルの攻撃の芽を摘み取っていましたし、アーセナルのトップがサイドに流れてしまい最後の局面で中央が使えないこともあり、最後の局面でやらせない守備は流石でした。

5.個人の能力だけでは語れないフットボールの攻防

選手の能力はもちろん試合を左右する大きな要素ですが、この試合はそれぞれの監督が繰り出した選手の立ち位置や攻守にわたる狙いの部分がバチバチとぶつかり合い、フットボールの醍醐味を感じられるものでした。

遂にJリーグも開幕。早速、川崎と横浜FMがそれぞれのコンセプトの中で選手の立ち位置を変えながら、エキサイティングな攻防を見せました。

エスパルスのリーグ戦もいよいよ開幕。新戦力と昨年までのメンバーの融合はもちろん、ロティーナさんの狙いの部分にも注目したいですね!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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