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ボールを持つということ【清水エスパルス vs 徳島ヴォルティス】マッチレビュー J1 第22節 11.July.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
今回は第22節徳島ヴォルティス戦を振り返りたいと思います。

前回対戦の教訓も生かし、前線からのプレスに出たエスパルスですが、徳島のボール保持が勝り、徐々に押し込まれていきました。
スコアはシーソーゲームのように推移しましたが、試合を通じてボールを支配される展開に。しかしながら、守備構築では素晴らしい修正を見せ、アウェーの地で勝ち点1を持ち帰る結果となりました。

大きな論点になったのはボール保持。相手に80%握られる展開についても少し書いてみたいと思います。

それでは行ってみましょう!

1.スタメン

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エスパルスは片山とカルリーニョスの位置を入れ替えてきました。前節大分がエスパルスの右サイドを起点としたのに対し、徳島はエスパルス左サイドの岸本を押し上げて攻撃する傾向があることへの対策だったと思われます。

2.徳島のボール保持と狙われた中盤の脇

試合は序盤から徳島がボールを保持する形で推移していきます。
4-4-2の布陣で、相手最終ラインにプレスをかける狙いを持ったエスパルスでしたが、徳島にプレス回避の出口を用意されてしまっていたためです。

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徳島はボールを持つと、右SBの岸本を押し上げ、残りの最終ライン3枚で組み立てを開始します。
これに対して、エスパルスはツートップが背中でボランチ岩尾を消しつつ、カルリーニョスが前に出ることで、最終ライン3枚にプレスをかけ、相手のボール保持に制限をかけて狙いを持っていました。

しかし、この思惑は早々に対応されてしまうことになります。
徳島は様々な選手が後方からの組立に関わることで、ボールを前進させる統一したチームの意思と立ち位置を備えていたためです。

ここでは、カルリーニョスが前に出た背後にボランチの一枚が位置取ることで、プレスを回避するルートを作っています。
反対サイドも同様に渡井が片山と宮本の間に下りることが多く見られました。

カルリーニョスが前に出た背後でボールを受けた徳島 鈴木に対しては、原が出ていければ?とも思うのですが、原は高い位置で幅を取る徳島 杉森にピン止めされてしまっています。

そのため、竹内が出ていくのですが、スライドした宮本の左側のスペースはどうしても空いてしまうことになります。
このスペースは常に渡井が狙っており、1失点目の場面でもこの位置でボールを受けられたことがきっかけになっていました。

前節を除くこれまでの戦い方と同様に、宮本の左側のスペースを片山が絞ることで埋められれば、未然にこのような状況を防ぐことが出来たと思いますが、逆サイドに上がってくる岸本がどうしても気になってしまったのだろうと思います。
(徳島の試合後コメントを見ると、ここが空くというのがスカウティングされていたようにも思えます)

仮に片山がここを絞り、中盤で竹内、宮本、片山 対 鈴木、岩尾、渡井で数的同数を作れていたとしても、機を見て宮代が下りてボールを引き出しサポートする等、中盤でのボール保持に関して、徳島は非常にレベルが高かったと思います。

2.素早く見せた守備面での修正

一つ目のプランで想定したようなプレスがかけられず、相手にボールを保持される展開となったエスパルスは、勝ち越し弾を奪ったタイミングで、守備組織に修正を加え、5-3-1-1のような形を取ります。
エスパルスからすれば、4-4-2でもプレスは外されるし、ボールも保持出来なかったため、前半の飲水タイム等、早い時間帯でこの変更は予定されていたと思います。勝ち越し弾を奪えたのは、良いきっかけだったのでしょう。
そしてこの守備構築が、その後の試合展開を決める大きな要素になりました。

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懸念となっていた中盤での守備に修正を加え、カルリーニョスが岩尾をマークしつつ、竹内と唯人の両センターハーフが中盤の脇を狙っていた鈴木と渡井を見る形を取ります。
これにより、中盤の脇(スペース)を相手に使われ侵入されることはなくなり、エスパルスの守備ブロックの外側に押し返すことに成功しました。

一方で、前線はチアゴ1枚になったため、田向やカカには時間と空間が与えられることになるのですが、ここにはセンターハーフの竹内や唯人が前に出ることで制限をかけ、ただのベタ引きにならない工夫がされていました。
また、竹内や唯人が出た背後には、原や立田が前に出ることで、きちんと相手を押し返していました。

うまく行かない状況ではあったものの、即座に戦い方を変えられたのは素晴らしかったですし、前回対戦からの進化を感じることが出来ました。

3.とはいうものの、流石に苦しくはなってくる

後半も構図としては変わらず、基本的にはエスパルスが徹底した守備ブロックを作り、徳島はボールを保持しながら侵入を試みる展開となりました。

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エスパルスの守備の行い方も、カルリーニョスとチアゴが横並びとなる場面があったりと小さな変化はあったものの、仕組みは大きく変わらず。
スペースを管理し、辛抱強く相手の侵入に対してブロックを作り続けました。

しかしながら、相手最終ラインへ飛び出していくタスクを担う竹内と唯人のところはどうしても体力的に消耗していきます(ここに投入できる選手がいれば良かったのですが...)。
ここに徳島は岩尾が下りることで、両サイドバックを押し上げ、更に圧力を高めてきました。
垣田が入ったことで中央で深さも作り、中盤にスペースを当たようとする工夫も見られました。

結果的に同点弾を浴びることになるのですが、エスパルスが前半の早い段階でこのシステムに変更した時点で、終始押し込まれる展開は想定され、両センターハーフがかなり消耗していたこともあり、この失点は致し方ない部分はあったのかなと思います。。

4.なぜボールを持てなかったのか

センセーショナルなボール保持 20%という数字。
これだけをみれば、エスパルスは攻撃面で何もできなったと感じる方もいるかと思いますが、実際にはそんなに簡単な話ではないと思います。
非保持から保持へと段階的にみていきたいと思います。

①ボールを保持されている段階(非保持)
前述の通り、エスパルスは自陣に相手を引き込み、スペースを消して守備を行います。
徳島の選手は流動的に動き、ボールを引き出し、パスコースを作り、自陣選手の脇を突こうとしてきます。自陣深い位置での守備なので、一瞬の隙も許されません。
相手に合わせてプレーする時間が長くなると、フィジカル的な体力だけでなく、頭(状況を認知する)の体力も消耗していきます。
守備の時間が長くなると、ボールを奪ってもどうしても一旦ボールを蹴り出し、流れを切りたいということになるのかもしれません。

②ボール奪取後(カウンターへ)
一方で、徳島はエスパルス陣内へ人数をかけて攻めているため、ボールを失えば即時奪還が必要になります。
保持時にボランチ2枚も中央ではなく、前後、左右へと流動的に動くので、即時奪還出来ないと、最終ラインがさらされるリスクがあるためです。

エスパルスはボール奪取後、チアゴでボールが収まったり、一つパスがつなげると一気にカウンターのチャンスが広がりました。

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上図はチアゴに入れたパスが一度奪われるも、奥井がボールを再び広い、唯人にパスを出した場面です。
徳島はボランチ2枚がかなりボールサイドに寄っているため、エスパルスはボール奪取後にセンターハーフがどれだけ早く押し上げて、徳島ボランチの脇を取れるかが勝負になります。

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こちらの場面も同様で、カルリーニョスがボールを収めるとサポートに入った竹内から一気に相手ボランチの背後を突きました。
ここも唯人がサポートに出られれば、一気に局面が変わったと思いますが、体力的にかなり厳しかったと思います。

このような試合では押し込まれながらも、徳島もリスクを背負って攻撃をしていたこともあり、奪って一つ目のパスが決まれば、カウンターを効果的に打つことが出来ていたこともあり、ボールを保持せずに攻撃をやり切るということに注力していたように思います。
ただ、相手に80%も持たれるような展開になると、先述の唯人のようにどうしてもカウンターで前に出る体力が残っていないということが多くなります。(その中でも唯人は何度も前線に顔を出し頑張っていたと思います)

③急いで攻めずに持つ(ボール保持)
先述の通り、長い時間ボールを持たれた(持たせた)ため、ボールを奪っても一旦流れを切ったり、カウンターを完結させることに注力していましたが、ボールを持てない状況ではなかったとは言い切れないと思います。

徳島も即時奪還が出来ないとみれば、一度守備組織を構築すべく下がることもありましたし、カルリーニョスがオフサイドだった場面は上手くボール保持からチャンスを作ることも出来ていました。

ここは今後の課題なのかなと思いますが、権田の役割は大きいのだろうなと感じました。元々ボールの扱いに長けた選手ではないと思いますが、最終ラインがプレスを浴びた際の逃げ道になってあげたり、ボールを受けてすぐに蹴るのではなく、一度時間を作ったりということが出来るとボール保持に落ち着きを与えられるかなと感じました。

5.川崎戦へのヒントが詰まった試合

次節川崎は言わずもがな、徳島に比べて更にクオリティが高い相手です。
この試合と同様に5-3-1-1でブロックを敷いても、徳島から浴びた2点目のようなコンビネーションが鋭く襲い掛かりますし、カウンター対応を担う両CBの強さはリーグ随一です。

望ましいのはきちんと前からプレスをかけ続けることですが、間を取られてしまえば致命的になるので、最終ラインを5枚にするかもしれません(ここは難しいところ)。

一方で、攻撃に関しては、今節と同様に相手の即時奪還のためのプレスをいかに外せるかがカギになりそうです。
その際にポイントとなるのは相手アンカーの脇。ここで唯人やカルリーニョスがボールを受けられる展開を作りたいです。

とても難しい試合になるは必至ですが、ブラジルデーの盛り上がりを背に金星を掴んでほしいです。タモジュント!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。





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