見出し画像

-ゲームプランとプレッシング-【清水エスパルス vs 徳島ヴォルティス】 マッチレビュー J1 第7節 4.Apr.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
中断期間を経て、またまた始まりました過密日程。

今回はホーム、徳島ヴォルティス戦を振り返りたいと思います。

前節J1初勝利を達成した徳島を迎えた一戦。
戦前から戦術面での攻防についての考察が飛び交う注目の一戦でしたが、徳島の良さを存分に披露され、0-3の敗戦。

エスパルスと徳島、それぞれのゲームプランがかみ合ったときに、多くの局面でより優位な立場を取れたのが徳島でした。
戦術的な準備を怠らず、常にその試合に対する解を提供してきたロティーナさんとエスパルス。
しかしこの試合では、戦術的な準備、もしくはその戦術における選手の働きが相手を困らせるまでには至らなかったと感じました。。

悔しいですが、行ってみましょう!

1.スタメン

画像1

前節から、原⇒エウシーニョ、カルリーニョス⇒後藤の変更を加えて臨んだエスパルス。前節柏戦の良いイメージをそのままに、前からプレスをかけていく意識を持ったメンバーを並べました。

対する徳島は、前節から吹ヶ、小西に変え、田向、鈴木が先発しました。

2.エスパルスのゲームプランについて

試合の中身に入る前に、この試合でエスパルスが選択したゲームプランについて、個人的な見解を書いてみたいと思います(異論ウェルカムです)。

これまでの試合でエスパルスの取ってきた守備のスタンスは、①最終ライン~前線をコンパクトに保ち、低い位置で守備ブロックを作り構える、②ツートップでボランチとCB1枚をケアしつつ、両SHを起点にプレッシングをかけるのいずれかであったと思います。
ボール保持を得意とする徳島相手であれば、①の守備スタンスを選択し、きちんと構えてボールを奪うという方法も十分考えられたと思います。
しかし、その中で①に関しては、守備面で非常に安定していたものの、ボールを奪った後のボール保持では、中々効果的に相手を攻略できないという課題がありました。
あくまで推測ですが、今節のプレッシングの選択は、守備面ではなく攻撃面での課題解決に比重を置いたものかもしれないと感じました。

3.はまらなかったプレッシング

先述のように前からプレスをかけて、徳島を慌てさせビルドアップを引っかけてショートカウンターから効率よく得点を奪うという狙いを持っていたエスパルスでしたが、徳島のバランスよい配置にプレッシングを空転させられてしまいました。

画像2

エスパルスは、中盤から押し上げた河井とツートップの一角(上図では後藤)でケアしつつ、前からのプレスを伺う形を取ります。
プレスのスイッチはトップのチアゴになるのですが、エスパルスのプレスは中々はまらず、何度も徳島のプレス回避にあってしまいました。

これを紐解くために徳島の基本立ち位置を見てみたいと思います。
ビルドアップの局面になると、福岡と石井の両CBと左SBの田向で3枚を作り、右SBの岸本と左SHの藤原で幅を取ります。
ボランチの鈴木と岩尾は流動的に動き、パスコースを作りつつ、エスパルスの河井と後藤を動かし、的を絞らせませんでした。
トップの垣田は基本的に最前線に張っている状態で、エスパルスの最終ラインを押し下げ、深さを作る働きをします。
そして、その背後のスペースを使うのが宮代と渡井。徳島のビルドアップの狙いは上図青いエリアにボールを運ぶことであったと思います。

このようにバランスよく立つことでパスコースを確保するのですが、ポイントは福岡と田向の位置だったと思います。
3枚のビルドアップにおいて、この二人はかなり幅を取っていました。
そのため、チアゴが徳島 石井に対してプレスをかけた際、パスが出される先にいる福岡と田向に誰も出ていけないと、ここで落ち着いてボールをもたれ、プレッシングが機能しない状態になってしまいました。

高い位置を取った相手右SBを見る必要がある西澤は仕方がないですが、逆サイドの金子がより明確に田向にプレスをかけられる仕組みがチームとして必要だったと思います。
実際に金子が田向にまっすぐ向かって行けた場面では、プレスがはまることが多かったです(上福元がバックパスをキャッチした場面等)。

4.GKからの配給をどう考えるか

徳島の最後尾の上福元は、ボールを受けることを苦にせず、そこから効果的な配給を行える徳島の戦術にマッチした選手でした。

ビルドアップが詰まれば、GKに戻してやり直すことで自分たちが落ち着いて立ち位置を取り直せるというのも徳島の強みだったと思います。

失点シーン

上図は1失点目の場面ですが、ここでも先ほどと同様に、上福元を真ん中に福岡と石井がかなり幅を取った立ち位置を取っていました。

エスパルスとしても上図黄色部分のように、準備した約束事をきちんと守り、守備の配置を取っているのですが、上福元、福岡、石井の3枚には中々出ていくことが出来ません。
じりじりとボールを持たれたところで、河井の背後にもぐりこんだ渡井に正確なボールが供給されてしまいます。

ここにボールを入れられることはエスパルスとしても織り込み済みであったのかもしれません。しかし、これだけのボールを蹴れるGKにあれだけ長い時間を与えてしまったことが、対応を難しくしてしまった原因ではないかと思います(現地で俯瞰出来ていないので違う意見もあるかもですが)。

エスパルスのツートップからしてもGKに出ていけば、簡単にその両脇のCBへ外されてしまうため、とても難しいのですが、石井⇒上福元や鈴木⇒上福元のパス交換のタイミングで、石井もしくは鈴木を背中で消しながら上福元にプレスをかけることが出来れば、良かったかもしれません(タラレバですが)。

5.スタンスを強めた後半と立ちはだかる垣田

狙っていたような形に中々持ち込めなかったエスパルスは後半3枚選手を入れ替えます。
不運なPKで失点を喫すると更に前からのプレッシングを強めて、ボールを奪いきるスタンスを取りました。

画像4

上福元に対してもチアゴがけん制をかけるように近づいていき、幅を取ったCBへパスが出たところで中山が出ていく形を狙っていたように思います。
そして、その背後のエウシーニョ、ヴァウドも連動し、相手の出しどころを埋めていきます。

プレスをはめていったエスパルスの最終的な潰しどころは、垣田のところなのですが、ここで鈴木が競り勝てない場面が多く、最後のところで狙い通りの守備をさせてもらえませんでした。
(鈴木が悪かったわけではなく、垣田が素晴らしかったと思います)

6.やはり繋ぐ仕組みをつくりたい

後半は終始60%を超えるボール支配率で、ボールを持つことは出来ていたエスパルスですが、時間が経っても衰えを知らない徳島の前線からのプレッシングを受け、効果的に前進する場面は多くなかったと思います。

画像5

エスパルスも前線へボールを入れられないと思えば、最終ラインに戻し、攻撃を作り直すことに取り組むのですが、徳島のプレスも早いため、ワイドの選手にボールを出すという外回りのパス回しを余儀なくされてしまいました。

しかし、良い場面もあり、上図のように相手のプレスに対して中央を経由してからサイドに展開することで、プレッシャーを回避し、相手を押し下げることが出来ていました。
この中央を経由するパスがまだまだ少ないのですが、ここが使えるようになるとより効果的な展開を作ることが出来るのではないかと思います。

内側にポジションを取るエウシーニョには可能性を感じましたね。
(一時期、原がカンセロロールと言われていましたが、時にトップ下のように振舞うエウシーニョの方がカンセロに近いと思いました)

7.この試合から再び立ち上がる

悔しさのあまり長々と書いてしまいましたが、エスパルスは準備してきたものを遂行すべく取り組んでいたと思います。
それをひっくり返した徳島が、この試合ではチームとして勝っていたということなのでしょう(素晴らしいチームでした)。

しかしエスパルスはこの敗戦を糧に、再び立ち上がらなければなりません。
得点、勝利という果実は簡単には得られない。誰しもが承知のことなのでしょうが、「もう一度守備から」。ここに立ち返るきっかけになるような試合だったかもしれません。

次節は徐々に勢いをつけてきている浦和が相手。指揮を執るのは奇しくも前徳島監督のロドリゲス監督です。

試合前日練習で、選手に気持ちよくプレー出来るようにメンタル面でのきっかけを与えたロティーナさん。

こんなの良い試合をしてくれるに決まっています!
厳しい試合にはなるかもしれませんが、ホーム初勝利に期待したいです!

最後まで読んでいただきたいありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?