見出し画像

ファイナルファンタジー ピクセルリマスター

ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』を買ったら思いのほか良かった。7月29日に発売して以来、気にはなっていたんだけど、「今さら初期のFFを最初からやるか~?」みたいな感じで、移植の完成度よりも、自分の忍耐力に対して懐疑的になっており手を出せずにいた。

ところがYouTubeで坂口さんや北瀬さん、植松さん、渋谷さんのようなオリジナルメンバーの話を聞いていたら、今回のリマスターに関してはどうもなかなかの力の入れようで、これまでの移植とは根本のコンセプトが異なるというような話。原作における表現、特にドット絵による映像表現を「FF5」くらいの解像度で統一しようという意欲的な試みに興味を持ち、やはりこれはバンドル版で1作目から6作目までをまとめて買っておきたいなと思った。まんまと乗せられた形!

今回の『ピクセルリマスター』は、まず7月末に1~3が同時に出て、4~6は年内に発売予定とのこと。プラットフォームはAndroid/iOSとSteamで、コンソール版はいまのところなし。私はSteamで6作すべてを含むバンドル版を買いました。

ピクセルリマスターってどうなの

とはいえ、初期FFの移植ってこれまでもいっぱい出てるし、なんだかその度に買っているような気もする。ゲームボーイアドバンス版、DS版、ゲームアーカイブスやバーチャルコンソールでもいくつか買った記憶がある。

それに対して今回の『ピクセルリマスター』のウリは、オリジナルスタッフの渋谷員子さんが監修(し、一部自ら再制作)した2Dドット絵のファイナルファンタジーの決定版であるという点。加えて、音楽も植松伸夫さん監修のもと全曲がアレンジされた新録版であるという話でした。

そもそも(自分は全然俯瞰しているわけではなく、あくまで肌感覚だけれど)、ここ10年くらいの間って明らかにドット絵の復権がありましたよね。もはやピクセルが時代遅れのダサいものではなく、"敢えて"それを選ぶに値するクールな表現になった。美しいリアルな3D表現が行きつくところまで行ってしまった反動であるとか、インディーゲームでundertaleのような尖った作品が続々出てきたとかいう要因はあるのだろうけど、いずれにしても単なるノスタルジーではない、職人芸への再評価があったように思います。なにしろ、Photoshopのフィルターのようには自動化できない、手仕事の美しさであるわけですからね。

画像1

そのうえで今回のリマスター、めっちゃ良かったんですよね。こう…匙加減というか、塩梅が! 原作完全再現というのではなくて、小中学生のときにそれを鮮烈に体験したわれわれFF世代が、記憶のなかで曖昧に美化しているドット絵のFFのイメージとぴったり合致していたのです。

などと言いつつ、実はわたしは子どものころ家にファミコンがなく、初期のシリーズで馴染みがあるのは、スーパーファミコンの『4』以降だったりします。1~3はいずれも部分的に友達の家で遊んで、後に買ったサントラCDをめちゃくちゃ聴いた。なので、今回『1』をゲームとして通して遊ぶのは初めての体験でもある。

画像2

気が効いているのは、映像表現に関してコンフィグで上の画像のようなオリジナルと、下の画像のようなアナログテレビの走査線状のフィルターのかかったバージョンのどちらかを選ぶことができる。

画像3

当時のドット絵の多くがブラウン管の「滲み」を前提としてデザインされていたのは今や広く知られた話で、これがエミュレーター的な単純な再現の際の違和感のひとつだったわけだけど、これもただストライプを重ねてそれっぽくしているのではなく、滲みのような階調が発生しているのがわかる。実際遊んでみると、こちらのほうがカドが取れたような感じで目にやさしい。

ちなみに、ウィンドウサイズは1080pを最大として多くの画面解像度に対応しており、フルスクリーンで遊ぶこともできる。ドット絵のゲームって、ピクセル等倍でないとぼやけることがあって、DSの移植とかはそこがイヤだったんだけど、そんなこともなくどの解像度でもパキッとした絵で遊べます。

画像4

テキストのフォントに関してはまあ賛否あろうかと思う。原作のままが良かったというのは確かにそうで、スクウェアの初期のフォントってめっちゃ味があってドット絵と同じくらいかわいいんですよね。でも、それをやるなら漢字どうするという話にもなるわけで、わたしは読みやすさとユニバーサルなUIのためにこの新ゴっぽい和文フォントを選んだのなら全然ありだなと思います(英語版のフォントが終わってるというのは確かにそう)。

それに、白く縁取りされた青グラデのテキストウィンドウの角丸が、ちゃんとピクセルでギザギザしているんですよ。そこは再現してくれるんだみたいな。お馴染みの指カーソルもちゃんとドット絵してる。変に高解像度でぬるっとしてない。ダメージの数値もギザギザで原作シリーズ準拠フォント。このように、これぞFFという要所を抑えているのが支持できるところです。

画像5

にしてもこのへんのセリフのノリ…好きだ

音楽のアレンジがかなりいい

であと音楽なんですけど、これも初めは『ピクセルリマスター』ならちゃんとピコピコした原作のPSG音源で遊びたかったな、という気持ちはあった。あったんだけど、アレンジが予想を超えてめちゃくちゃ良かったので自分のなかではすべてOKになりました。FF関連でこれまでに出たあらゆる編曲・アレンジのなかで最も出来がいいまである!

画像6

原曲に忠実に、妙に足したり変えたりせず、自然に聞こえるように音色のアップデートとオーケストレーションを実現していました。というかDTMでファミコンの曲を耳コピしたことある人なら分かると思うんだけど、そもそもとしてPSG音源の3ボイスで表現された音楽って、そのまま打ち込んで楽器を変えただけでは全然ダメなんですよね。楽器のための音楽ではないわけだから、楽器編成で「復元」するとなると、足りない音符やパートをかなり補わないと不自然になってしまって、音楽的にならない。その意味で非常に手の込んだ、丁寧なアレンジだなと思います。

今回、いずれの作品もメニューから「サウンドプレイヤー」ですべての曲を聴くことができるので、ゲームとしてはまだ1しか触っていないんだけど、3とかもざっと聴いてみました。良かった。植松さんの音楽が好きなら、ゲームやらなくてもこのバージョンのアレンジを聴くためにサントラ的にSteamの全作バンドルを買うのすらアリ。

PVの時点で、「エッこれ…もしかして良いのでは!?」みたいになった『悠久の風』も、1ループめと2ループめでアレンジが違うんですよ。すごくない? 絶対聴いてほしい。

Steam版にはオマケとしてサウンドトラックがついていて、これはまあ、1作につき3曲入っているだけなのでそんなにボリュームはないんだけど、これがタイムラプス・リミックスと銘打ったバージョンなんです。要は原曲とアレンジ版のクロスフェードなんだけど、これを聴くとアレンジがいかに原曲を尊重しているかがよく分かって感動的でした。それくらい自然に、ピコピコからハイファイな音楽に美しく変化するんだ。

欲を言うなら、原曲でもプレイしてみたかったというのはある。けど、できるのに敢えてそうしなかった今回のリマスターの心意気も汲みたい。サウンドプレイヤーが1曲各1ループでフェードアウトしてしまうので、エンドレスか最小2ループにしてほしいかなっていうのだけはある。

これは決定版かも

現状、1の中盤くらいなんだけど、確かにこれは決定版と言えるFFでした。システム的にも相当に遊びやすくなっていて、ダンジョンのマップ表示とか、前回コマンドを繰り返す半オートバトルだとかでさくさく進んでいく。正直、こんなに良いとは思わなかった。

あんまり良いので、どんな開発体制で一貫したクオリティを担保しているのか気になってしまうくらい。相当に手がかかっているはず。今回たまたま3作目までが同時に出たわけだけど、4から6も間もなく出ることを考えると、異常なハイスピード開発だなと思います。

そしてこのあと出る4から6、まだあんまり情報が出ていないんだけど、こうなると期待が高まる。映像も音楽も。スーファミ時代の作品はドット絵の解像度に関してはもう原作そのままでもいいのではと思うんだけど、どの程度手が入るんでしょうかね。それまでに3までクリアできるかなという心配のほうがあるかもです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?