【映画】BLAME!(ブラム)
Netflixで5月20日公開のアニメーション映画『BLAME!(ブラム)』を観たので感想をメモしておきます。ちなみに原作マンガは未読、かつ私にとっては初めての弐瓶勉作品です。
おもしろかった。「サイバーパンク怒りのデス・ロード」みたいな感じ。つまり、古典的な英雄伝説+建国神話テイストに則っているのですね。人類の手を離れて拡張し続ける都市など独自の概念をベースにしていながら、過剰に説明くさくならず(モノローグとかも全然ない)、それでいて初心者を突き放さない、分かりやすいバランスの筋書きはとても好みでした。
主人公のキリイはマックスのように寡黙で無表情、しかもひたすらに強いのでなかなか感情移入しにくいのですが、そこを原始的な生活を送る村の人々にフォーカスしたことで解決しています。ヤモッチャン(声も性格もニンジャスレイヤーのヤモト=サンなので私のなかでは完全にヤモッチャンだ)が強くかっこいい。ナンシー=サンみたいなタフな博士も出てくる。
というか3DCGアニメっていますごいんですね。『楽園追放』とかはまだ特有のツルツルテカテカした感じがあったけど、本作はスーツの汚しの感じや埃っぽさから伝わる空気感の情報量の多さに驚いた。
「BLAME!」を超える「BLAME!」が動き出す──伝説のハードSFに時代が追いついた。映画『BLAME!』爆誕の歓喜|WIRED.jp
http://wired.jp/2017/05/20/blame-movie/
上の記事にもありますが、素体間の人格の複製や移動が当たり前みたいなクールな認識は今風でいいと思います。いまさらアイデンティティとかでくよくよしない。そこへ行くと先日の『ゴースト・イン・ザ・シェル』の少佐の人格に関するハリウッド的翻案は大変オールドスクールとすら感じます(どちらがいいという話でなく)。
アクションは多いものの、全体の印象としては比較的ローテンションで、演出面であまり凝った仕掛けもなく淡々と進みます。もっとぐいぐい引っ張ってほしい感じはあったかも。それに、もう何人か魅力的なキャラの村人がいてもよかった。でも、さておき背景美術がとんでもなく良く、彼らが旅する景色…巨大構造物、配管、がらんどうのような空間の奥行き…を眺めているだけでも十分に魅力があります。
サイバーパンクにしては泥臭いというか、サイバー部分に絡んでくるのがひとりだけ違うレイヤーにいるシボさんだけで、あとのキャラクターは直接的にはテクノロジーに関与しないというのが不思議な感じでした。物足りなくはあるんだけど、これはこれでおもしろいと思う。彼らは知り得ることしか知らないのだ。きっとこの世界には、彼らのように地理的・知識的に孤立した人間たちやそれにまつわる物語がたくさんあるのだろうなという広がりを自然と感じさせてくれる。"火"にまつわるおやっさんの語りのシーケンスは特に良かった。
原作漫画にも興味が出てきたので、機会をみて読んでみます。