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韓国のニンジャヘッズと仲良くしたい

ここ何ヶ月かの間で、『ニンジャスレイヤー』の韓国語ファンアートのツイートをよく目にするようになりました。

にしてもそれが、日本でもまだ出ていない「スワン・ソング~」や「シャドー・コン」の超絶作画の手製コミカライズだったり、めちゃくちゃ動くヌンチャクワークのアニメだったり、はたまた余湖先生の漫画版で今年登場したばかりのシルバーキーのファンアートだったり…というのには驚いた!

韓国ニンジャヘッズの高まり

自分も同じファン活動をしているから、言葉は分からなくても、こういう作品がどういう熱量から生まれてくるものかは理解できるつもりだし、であれば尚更、いま韓国のニンジャヘッズの間で実際どんなムーブメントが起こっているのか知りたい。なにしろ原作者のいるアメリカ、翻訳チームのいる日本を除く海外の動向で言うと、例えば台湾には日本語で実況する熱心なニンジャヘッズが複数いらっしゃるのは有名でしたが、お隣の韓国で忍殺が読まれているというのは、正直わたしはニンジャヘッズになってからのこの8年くらい、Twitterでもそれ以外でも、全然聞いたことがなかったのです。

角川と秋田書店から出ている原作小説や漫画、それにアニメ『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』は、それぞれに各国語版が出ているので、アジアやヨーロッパ、中南米にも読者がいるのはもちろん知っていた。でも、その話題の多くはアニメでも舞台になっている第1部にフォーカスしたもので、キョート編の第2部や現行の「AoM」シリーズにまでキャッチアップしている熱心は海外ヘッズは(残念ながら)まだそう多くはない…というのがこれまでのわたしの認識でした。

だって…現状、Twitter連載の最新話を追いかけるには少なくとも日本語が読める必要があるし、そのうえお馴染みの「忍殺語」がある。翻訳の"ズレ"から生まれるユーモアというニュアンスを踏まえてこの長大な作品を読み進めていくことは、日本語ネイティブでない読者には相当高いハードルなのではないかというのは想像に難くない。

そしてそもそも、韓国では現在『ニンジャスレイヤー』原作小説の書籍が第2部の第2巻(「ゲイシャ危機一髪!」)が2019年11月に発売されたきり、2年近くも続刊の刊行が止まってしまっているらしいんですね。続きがあまりにも出なさ過ぎて、謎めいたロード・オブ・ザイバツ(2部の大ボス)の正体が実はヤモトの親友のアサリ=サンなのではないかという衝撃のネットミームが逆輸入で話題になったくらい…! あちらのヘッズが一体そんな環境でどうやって作品に触れているのか、不思議じゃないですか。

『ニンジャスレイヤー』の韓国語版はどこで読まれているのか

実は今年2021年3月、『ニンジャスレイヤー』の有志翻訳ガイドラインが公開されたことを契機に、ハッシュタグ #WNJSLYR が公式により新たに設定されました。

この動きが、韓国の熱心な読者から日本の翻訳チーム宛てに送られた問い合わせを受けてのものであることを、ダイハードテイルズのDiscord音声番組で知った。へえ~と思って、単純にGoogleで닌자 슬레이어(ニンジャスレイヤー)を調べてみると、だんだん見えなかった事情が見えてきました。

どうも、韓国には日本のTwitter読者とはまた違う独自のインターネットコミュニティがあるらしく、そこでは公式韓国語版書籍の刊行がストップしている第2部中盤以降のTwitter連載分についても、すごい勢いで有志翻訳が進んでいるらしい。そしてなんと、この夏には第2部どころか、第3部最終章の「ネヴァーダイズ」の翻訳も完了したのだという。

それにとどまらず、現在は1部~3部の未翻訳エピソードと並行する形で、現行のAoMのエピソードの韓国語訳が日本語連載からほとんど間を置かずに公開され、あまつさえ毎日12時からの「お昼のニンジャ真実」すらも逐次翻訳されているのだ…!

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この有志翻訳が一体どこで読めるのかというと、dcinside.comというサイトの『ニンジャスレイヤー』をテーマとするギャラリー(掲示板)に掲載されています。メイン部分はスレッド式の掲示板群で、Redditのsubredditみたいな感じなのかな。日本のサイトで言うと、ひと昔前ならmixiコミュニティ、今だと…似たサイトはちょっと思いつかない。書き込みにはアカウントが必要な会員制で、読むのは誰でもできるようです。

(10/5訂正:コメントで補足情報をいただき、特にアカウントを作らなくても書き込みをすることはできるとのことです)

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ChromeブラウザにGoogle翻訳拡張機能を入れて設定すると、こんなふうにざっくり日本語へ機械翻訳した状態で読むこともできる。翻訳の精度は、スラングの多い本作では正直まだかなり厳しいけれども、ある程度作品を読み込んでいる読者ならふんわり意味は掴めると思います。「○○=サン」が「○○=上」に、「フジキド」が「藤木も」になってしまったりみたいな機械翻訳のクセが分かってくると、けっこう読める。なにしろ同じヘッズだからね。

翻訳は、もちろん先の公式の有志翻訳ガイドラインに沿った形で、複数の投稿者の方によって不定期に進められているようです。

ファンアート(ウキヨエ)のなかにはTwitterからと思われる画像の転載もちらほらあり、そのあたりはRedditや国内でいうふたばちゃんねるのようなラフな感覚に近いのかもしれません。ただこれも、もはや公式や日本のヘッズに捕捉されているという意識によるものか、わたしが観測しているこの数ヶ月の間に自然と減ってきているような感じです。

また、6月にはわたしが2015年に初めて作った同人誌の韓国語版を作って投稿してくださった方がいました。この作品は、以前は途中までを無料公開していたため、奥ゆかしくその部分までを訳したバージョンが上がっていたのですが、わたしがそれを受けて全文を無料公開にしたところ、すかさず残りの翻訳にも着手してくださいました(上記リンク)。作家さんにもよるとは思いますが、自分はこんなこと初めてでうれしかったな。감사합니다🤗

他に韓国語で読める忍殺関連の情報ソースとしては「나무위키」のニンジャスレイヤー(닌자 슬레이어)有志Wikiページがある。これはちょうど、日本語版のニンジャスレイヤーWikiに相当するものですね。

面白いのはやっぱり忍殺語(인살어)のページ。これもまたGoogle翻訳を通して記事を読むと、うまい具合に翻訳しているんだなあというのが分かる。このニュアンスを維持しながら別の言語へ訳すのは、いかに両言語に通じていても簡単ではないだろうなと思う。ヘッズスラングまでもが巧妙に説明されているのはただただスゴイ。

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韓国の『ニンジャスレイヤー』情報をどう探すか

Twitter連載中の原作小説エピソードや、田畑先生・余湖先生による第2部のコミカライズの連載の影響によって、韓国においてもニンジャヘッズが増えているというのはおそらく間違いない。だけど、ここまで長い間韓国の読者の存在が日本のヘッズに可視化されてこなかったのは、言語の違いも大きいのではないかと思います。英語のNinja Slayerや漢字の忍者殺手と違って、パッと見て닌자 슬레이어って分からないものね。

なので、基本に立ち返ってGoogleでもTwitterでも、ハングルで検索してみるというのが一番探しやすいんじゃないでしょうか。닌자 슬레이어(ニンジャスレイヤー)のほかに、닌슬(ニンスル)とかでも出てくるようです。

もし推しのキャラクターがいるなら、一度dcinsideに掲載されている有志翻訳エピソードリストから、ハングル表記を調べてみてもいいかも。わたしもユンコ・スズキを「윤코 스즈키」と書くところまでは突き止めたけれども、まだファンアートは見つからなかった(エトコ=サンと混同しているっぽいものはあった)。「レプリカ・ミッシング・リンク」の翻訳は終わっているようだから、読んでくれるヘッズが増えるといいな!

忍殺語やヘッズスラングのハングル表記なんかも、最小限のものは読み書きできるようになりたい。도-모, ○○=상. ○○입니다.(ドーモ、○○=サン。○○です)/카와이이(カワイイ)/우정!(ユウジョウ!)は使うかな。

◆미래로◆未来へ◆

わたしは韓国語まったく話せません。父親が韓国に駐在していて10代のころ旅行で釜山へ行ったことがあるから、いずれまた行きたいなくらいの親しみは感じている。あと、家族がNetflixで韓国ドラマをめちゃくちゃ観ている。

だから、台湾のニンジャヘッズとかもそうだけど、海外の別の言語のエンタメを積極的に摂取しに行くバイタリティって、同じオタクとして心底尊敬してしまう。仮に自分がバイリンガルだとして、大好きな作品を別の言語に翻訳してまで広めたいと思うかどうか…。

いつかインターナショナルなヘッズイベントも開催できるといいですよね。映画の『ギャラクシー・クエスト』大好きだから、時間や場所を超えて作品を愛するファンが一同に会するみたいなシチュエーションに無限に憧れてしまう。その時はボンモーや翻訳チームと一緒にカラテで宇宙人を倒すのだ。

目下の課題としては、note上の「ニンジャスレイヤープラス」で連載されている有料エピソードに対しては有志の翻訳活動ができないため、事実上手付かずになってしまっている点があるかもしれません。ご存じの通り、これらのエピソードにもヘッズなら押さえておきたい重要な名作がたくさんあるので、何らかの形でオフィシャルに多言語版が提供される機会があるといいですよね。もちろん、出版社による物理書籍刊行も含めてね。

◆이상입니다◆いじょうです◆

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