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Roland TR-6Sを買った

しばらく新しい楽器を買っていなかったんだけど、久しぶりにビビッと来るものを感じたので買ってしまいました。10月24日に発売されたRolandのリズムマシンRhythm Performer TR-6Sです。

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かわいいパッケージ。箱の裏もかわいい

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いつもの渋谷のイケベ楽器鍵盤堂さんで。この状況下なので、入店するのにまず簡易式のビニール手袋の着用が必要だったりして(試奏するから)、楽器屋さんもいろいろと大変だ…。

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電源を入れたところ。かわいい~! 物理筐体がほぼ黒と白のみのシンプルな配色になったぶん、LEDを使った効果的な見せかたができるようになった。特定のトラックを選択していない状態だとこのようにステップキーが808配色になり(ちなみにこの配色は商標登録されている)、各フェーダーへは設定画面から自由な色をアサインできる。

そもそもこれはどういうリズムマシンかというと、TR-808/909をACB音源によってリデザインした2014年のTR-8があり、それにサンプルインポート機能などを加えて音源やエフェクターの自由度を増した2018年のTR-8Sがあって、さらにそれをその後出たMC-101と同じコンパクトなフォームファクターに落とし込んだのがこのTR-6Sというわけ。

必然的に縦フェーダーを擁するトラックの数はTR-8Sの11に対して6と減らされているものの、音源はスケールダウンしていない。他社製品ではいろいろと選択肢はあるけれど、Roland製品でこのサイズ感でこの多機能・自由度のリズムマシンというのは、まさに待望のやつなのです。

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オリジナルのTR-8と比べて4分の1くらいの大きさ

これ1台でなんでもできる(かもしれない)

触ってみて、めちゃくちゃしっくりきました。必要なのはこれだった。音源としてはクラシカルなACB音色と並んでFM音色やPCM音色が並列に入っており、これに加えてSDカード経由でインポートしたオリジナルのサンプル最大256音が使える。各音色(TR-6Sでは「INST」という)に対してはINSTパラメーターのほか、歪み系などそれぞれに独立したINSTエフェクトをかけて音色を作り込んでいくことができる。作った音色はパターンとは独立したKITとして保存できて、ほかのパターンで使いまわしたりすることもできる。もちろん、既に作り込んだ自作のサンプルを取り込めば、完全にオリジナルのリズムマシンにすることもできます。

これが例えばTR-8なんかだと、808/909の素の音は出せても「それ以外の音」が出せなかったり、あるいは素の音の主張が強すぎてなんらかのエフェクトをかけないと曲に馴染まないことがあったりしたので、その点サウンドメイキングの自由度が飛躍的にアップした印象です。

またシーケンス部分でも、ひとつのパターンは16ステップ限りでソングなどは組めないわけですが、8つあるバリエーションとそれらのチェイン機能、あるいはバリエーションごと、トラックごとに設定できるLAST STEP機能によって、変拍子や複雑なブレイクを織り交ぜたパターンを作ることができるようになりました。パーカッションが5ステップや9ステップでループするポリリズミックなグルーヴがマシーン・テクノの醍醐味であるだけに、これ一台でできることの可能性が広がった。わたしが持っている最近のRolandマシン、例えばTR-8やJD-Xiではずっとこれができなかったのです。

非公式の解説動画ではこれが一番良かった

上部に3つ並んでいるノブは、全音色共通のINSTパラメーターであるチューン/ディケイに加えて、トラックごとに好きなパラメーターをアサインできるCTRLノブ。MC-101にもあったけど、このあたりのちょっとしたフレキシブルさはライブなどで使うにはかなり助かりそう。

正直なところ、デフォルトでアサインされているキック/スネア/ロータム/クラップ/CH/OHの6トラックってリズムパートのすべてとしては少ないと思うじゃないですか。でも実際、ひとつの音色をけっこう作り込めるとなると、キックを含む3トラックあればほぼ低音域のビートの骨子はできてしまうし、これにハイハットを加えてもあと2トラックも余る! ウワモノが足せる! ってなるんですよね。

で、おあつらえ向きにシンセ音色や簡単なコード音色もばっちりプリセットに入っている。メロディーの打ち込みはできないけど、モーション録音機能があるので、ステップごとに異なるチューンを設定していけば無理やりメロディーも作れてしまう。ミニマルなテクノやハウス、もしくはディープ系のダブやドラムンベースなら、これ一台で完結したトラックメイキングは全然できてしまうと思います(制限下での創意工夫がまた楽しいんだ)。

DAWとの連携も簡単

PCとの連携についても少しだけ試してみました。Rolandシンセの地味に最高なところは、00年代のうちから、基本的にすべてのマシンがオーディオインターフェース内蔵であるという点。特にTR-6SはUSBバスパワーで駆動するので、PCとUSBケーブルで繋ぐだけでTR-6SのPHONES端子からDAWをモニターできてしまう。Ableton Live上で適当なソフトシンセを鳴らして、TR-6Sのビートを重ねるだけでも異様に楽しくて時間が溶けてしまった。

普通にDAWからだいたいのMIDIパラメーターをコントロールできるわけだけど、せっかくならビートメイキングはTR-6Sで完結させたいから、MIDIクロックだけ送って、曲を作るときはオーディオ入力からクリップまたはリアルタイム操作で一曲フルに録っていくみたいな使いかたになるのかな? 音源として使うのではなく、単体で完結するマシンとしてこれだけ高機能だと、まだあまり具体的なワークフローがイメージできていない。

できないこと

なんでもできると言いつつ、これがあれば良かったな…っていう点もあるにはある。一番惜しいのは、TR-8にもTR-8Sにもあった外部オーディオ入力端子が省かれてしまったところ。これがあればほかのガジェットシンセやベースマシンとシンプルに組み合わせて遊ぶことができたはずで、別途ミキサーが必要になる煩わしさは感じます(フルサイズのMIDI入出力端子はある)。

また外部入力がないため、ユーザーサンプルをINSTに加えるというサンプラー的な機能がありながら、これ自体ではサンプリングができないという欠点もある。そのあたりはサンプラーやグルーヴボックスとの差別化でもあるのかもしれない。SPでもMCでもなく、あくまでも「TR」だからね。

あと、音色の作り込みに関してはトラックごとのINST FXのルーティングや重ね掛けができればもっと良かったのかもしれないし、トラックごとに異なるディレイタイムのディレイをかけたりもしたかったし、この辺の性能面では挙げたらキリがないところもあります。

一台完結の完成度のすごさ

ただやっぱ思うのは、複雑なTR-8Sの機能をこのサイズ感と手軽さに落とし込んだのはすごいことですね。ちょっと前のRoland製品は、例えばJD-Xiのプロセッサが弱くてモタついてしまうのとか、開発のアイデアはあってもハードの性能的に追いついていなさそうな部分がときどきあったんだけど、TR-6Sは同じ16文字2行のLCDディスプレイを辿っていてもきびきび動く。VALUEノブの押し込み式ロータリーエンコーダーとの組み合わせも良くて、パラメーターがパネルの前面に出ていなくてもさくさくエディットできるフットワークの軽さを感じます。ちゃんとこれまでのハードで試してきたことが資産として生かされており、端的に言って完成されている。

こうなると、時期的にパスしてしまったMC-707/101もなんだか気になるし、他にどんなシンセと組み合わせたら楽しいかな~とかいろいろ考えてしまうな。まだ3日目なので、まずはじっくり触って慣れていきたいです。

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