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ローコンテクスト言語文化を身につける Part-3

最終回Part-3です。以下の項目は、多くの日本人が苦手とするところではないでしょうか。これらは英語力の問題ではなく、あくまでも意識の持ち方の問題です。ローコンテクスト・コミュニケーションでは絶対に必要なことです。訓練しましょう。

1. 言いたいことをストレートに言葉にする。
2. 議論から逃げず、徹底的に議論する。
3. 人の話を遮って話し出すのは失礼ではない。
4. 初歩的な質問をして恥をかくことはない。
5. 目を合わせる。

言いたいことをストレートに言葉にする

まだ携帯電話というものが存在しなかった頃、1993年です。電話は一家に一台です。私はテキサス州に住んでいました。友人に電話すると、奥さんが出ました。私はその奥さんとも面識がありました。私の頭の中がまだ日本語だった頃の電話です。

“Hello. This is Toshi Iwata speaking.”
“Hi, Toshi. Howdy?”
“All right. How’s going, Katy?”
“Great.”
“Is Michael there?”
“Yes, he is here… … … ” (long silence)
“ah…! Can I talk to him?”
“Sure.”

何がおかしかったわかりましたか?私は電話口に出てきた奥さんと挨拶を交わし、旦那さんの「Michaelは在宅か?」と尋ねたのです。在不在を尋ねているのだから、彼と話すために電話しているのであって、彼に電話を代わってもらいたいと思って尋ねているわけですが。相手は、「家にいるよ」というだけで「で?」というわけです。私がはっきりと「彼と話せるか?」と尋ねるまで、私が彼と話をするために電話をしたということが理解されなかったわけです。日本ではこれはありえませんね。

でもよく考えたら、彼が在宅であることを確認した後、私の口から発せられる言葉は、”Can I go to your home now to pass him the book he wanted to borrow from me?” であるかもしれないわけです。だから、私が「彼と話せるか?」とはっきりと言うまでの間は沈黙になってしまうわけです。

これこそがローコンテクスト言語文化です。日本語を言葉の裏を読みますから、「在宅か?」と聞かれたら「話したい」」という言葉の裏を読んでいるわけです。私がショックを受けた経験です。

ローコンテクストの英語では、遠慮や謙遜は必要ありません。「言葉にしたら失礼」なことや「聞いてはいけない」ことはありません。言葉に出さないと相手には伝わりませんし、質問しなければ自分が理解できないだけです。特に日本人が気をつけないといけないことは、次の2点:
1) 「〜したいと思います」と「〜したい」と「〜します」を明確に区別すること。
2) YesかNoかをはっきりと返事すること。

「〜したいと思います」と「〜したい」と「〜します」を明確に区別すること。日本では「〜します」と言う決定事項を通達する場合でも、「〜したいと思います」の方が丁寧だと思って使う人が多いですね。これでは日本語でも曖昧です。いつもそのような話し方をしている者同士なら、それが「〜します」の意味であると理解されるかもしれません。いわゆるハイコンテクストな状態です。しかしこの発想のまま英語で言う人が多いのです。”We will do XXX.”というべきところを “We would like to do xxx.” なんて言う日本人英語をよく耳にします。本人は丁寧に言っているつもりでしょうが、決定事項の確認にはなっていません。チーム全体の希望を述べているにすぎません。しかも本来ならリーダーであるあなたが決定したことであれば、”I want we will do XXX.” と主語をあなた個人に変えるべきなのです。主語をWeにするのは日本人特有の責任の所在を曖昧にする文化から来ますから、英語とは相いれません。

YesかNoかをはっきりと返事すること。日本人がビジネスにおいて特にNoを明確に言わないというのは、もはや世界では有名になっています。日本語では「持ち帰って検討します」あるいは「ちょっと難しいですねえ」で、どのくらい可能性のあるビジネスなのか、交渉相手はなんとなくわかります。それは共通理解の土台がある日本人同士のみでは有効です。しかしそうでないグローバルなコンテクストで、この感覚のまま ”It’s difficult…” とか言って口ごもってしまう、あるいは ”shhhh…” といって黙ってしまう。「日本人は結論を出せない」と世界では笑われています。「持ち帰って検討します」は ”I cannot make the decision by myself today. I will discuss your proposal with my boss and will get back to you in a week.” と具体的に言うべきです。「ちょっと難しいですねえ」は “That’s not possible.”とはっきりと断らなければなりません。そして難しい理由が値段なのか数量なのかなどの理由を、自分の意見で構いませんからきちんと述べるべきです。

議論から逃げず、徹底的に議論する

議論するときに地位の上下は関係はありません。「ストレートに言葉にする」にも関連しますが、議論から逃げないことです。徹底的に納得するまで議論、質問することです。

日本語では上の人には遠慮がちになります。特に上の人が言っていることがよくわからないとき、その真意を確認せず、自分で「理解する努力をする」ことはないでしょうか?上の人の意見に納得が行かない場合、面と向かってチャレンジや批判をせずに「長いものに巻かれる」といったことはないでしょうか?

同じような感覚で英語でのコミュニケーションをしているから、日本人は文句を言わない、何かを隠しているのではないか、と思われるのです。

人の話を遮って話し出すのは失礼ではない

多人数での会話ではむしろ、人の話を遮って話し出すくらいのタイミングでなければ、あなたの話すチャンスは永遠に巡ってきません。英語ではこれは失礼には当たりません。英語の文法は大切なことが文頭に来ますから、文末を聞かずとも、自分の意見を言いたければ言えるのです。そしてそれが普通です。

日本語では、相手の話を最後まで聞いて、それを解釈する(行間を読む)習慣のために、会話のテンポは遅くなります。これは、文を最後まで聞かないと大切なことがわからない文法構造にも由来します。

私もこの点については未だに努力を要します。日本人の感覚では失礼と思うくらい、相手の話におおいかぶさって話し出す癖を意識的に訓練しなければいけません。ただし日本語でこれをやってはいけません。必ずヒートアップしていき、喧嘩になります。

初歩的な質問をして恥をかくことはない

大人数の会議などで、わからないことがあったら質問をするのは、恥ではありません。それがどんなに場違いな質問や初歩的な質問であってでもです。むしろ自分の質問が、他にも理解できていない人の疑問を代表している、くらいの気構えでいいのです。そして実際そういったあなたの質問で多くの人の理解が深まることは事実なのです。日本は「恥の文化」です。「面目を無くす」などと言います。「聞くは一時の恥」とも言います。英語では「恥」といった感覚はありません。むしろ聞いている人全員を代表しているかもしれない質問は、”Good question!”とプレゼンターから言われるものです。

私の経験で、グローバルな集まりで意見を言ったり質問をするのは、90%以上が欧米人です。アジア人は概して質問をしません。その中でも日本人は最も静かだと思います。アジアの中で臆することなく質問をするのは中国本土の人かフィリピン人です。中国は大陸の多民族文化で元々がローコンテクストです。フィリピンは、長かったアメリカ占領の文化への影響があるように思います。

目を合わせる

日本人が目を見て話すことに苦手を感じることが多いのは、ハイコンテクストだからだと私は思います。つまり相手の言葉そのものプラス「行間を読む」ことに意識を奪われるからです。また相手、特に目上の人の目をじかに見つめることは、日本人同士では失礼にあたることもあります。欧米人と話していて目をじっと見つめられてプレッシャーを感じることはありませんか?私はありました。最初に英語の世界に飛び込んだ頃のことです。

面接のレッスンなどで、相手のネクタイの結び目あたりを見る、とアドバイスをもらわなかったでしょうか。これがビジネスの場で日本人同士がちょうど心地よい目線なのです。しかし英語はローコンテクストです。相手の目を見て話すことは説得力を大きく左右しますし、目を見て聞くことで相手の微妙な表情を読み取ることは、必要不可欠です。

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