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【GUMI】初桜【えぽかろーぐ】について作曲者・調声者が語る記事

えぽかろーぐの作曲・調声担当NAMiKiです。

2023年5月1日に四季シリーズの最終楽曲となる、「【GUMI】初桜【えぽかろーぐ】」を投稿しました。

四季シリーズの最終作品ということで、今まで投稿してきた秋・夏・冬の楽曲の要素を取り入れた音作りや調声など、本作のこだわりなどを語ろうと思います。
※記事を読みながら楽曲を聞いて下さるとより楽しめるかと思います。美術館の解説音声みたいなものだと思っていただければ。。。


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イラストについて

超絶美麗なイラストは、四季シリーズの他楽曲もご担当いただきました「しあびす」先生にお願いしました。色使いや表情、細部まで美しい神のイラストを、是非動画からもご堪能ください。

楽曲について

作曲にあたり…

作詞担当のーがから歌詞をもらい、作曲を始めます。四季シリーズの完結作ということで、他の四季シリーズ楽曲のフレーズや、過去・未来を思わせる言葉が多くあり、使いたい音やメロディーが次々に湧いてきました。ただ、いざ作曲を始めると夏の楽曲である「時花火」や、秋の「夢紅葉」、冬の「奏雪」に寄りすぎるメロディーになる部分があり、「初桜」としての楽曲というよりはメドレーのようになってしまいそうでした。そこで「他の四季シリーズはエッセンス・装飾として楽曲に取り入れる」ことを意識し、最初から曲の構成を練り直して組み上げ、現在公開している「初桜」の形で皆さんにお届けすることとなりました。四季シリーズはサビ部分のコード展開が類似するように作っているので、どうしても似たようなフレーズが湧いてきやすいのですが、歌詞が綺麗に聞こえるメロディーラインを模索し、満足する形に組み上げることができたと思っています。テンポは115。時花火が105、夢紅葉が120なので、それらの中間くらいのテンポです。

イントロ(0:00~0:21)

ピアノから始まるイントロは、一通り楽曲の構成が組み終わったタイミングで追加しました。当初はピアノのイントロ部分は無く、始めから歌唱でスタートする構成にしていましたが、様々な季節のことを思い出す時間・想い馳せる時間が欲しいなと思い、サビのメロディーを少しアレンジしたイントロを加えました。アウトロも同様の理由でピアノで終わらせています。

歌唱始まり部分(0:22~0:40)

タイトルでもある「はつざくら」の歌詞から始まる歌唱です。歌唱直前のGUMIのブレスで少し緊張感を高め、楽曲全体の雰囲気を伝えるべく「強すぎず弱すぎず、穏やかだがどこか凛としている」ような歌声になるよう調声をしました。

「初桜が舞い散る朝」歌唱部分 V6エディタ画面

今回の楽曲の調声は、自分で一度楽曲を歌い、その音声の波形やピッチの揺れなどを耳と目で分析し、それに近づけるという手法を取ってみました。また「初桜」の製作途中でSynthesizerVを購入したのですが、Maiに歌ってもらったときの波形・ピッチと、GUMIに歌わせていた波形・ピッチがわりと同じだったので、波形的には「人間らしい歌声」にはなっているかなと思います。(声質やブレス量はV6ではあまりいじれないのでそのあたりはどうしても…ですが。)

音作りの部分について、四季シリーズの各楽曲で使用した音をアクセントとして入れています。インスト音源を聞いていただけるとよりわかりやすいかもしれませんが、26秒当たりの「カンカン(奏雪)」、直後の「シャン(時花火)」「チリン(夢紅葉)」など散りばめています。0:30からの広がるようなコードは四季シリーズの他楽曲には無かった新たな展開として加え、サビの他の部分はシリーズ通して同じコード展開になるようにしました。

「変わらない想いを抱いた」では、「想い」の部分を少し強調するように歌唱させています。最後のロングトーンは、自分の考える理想の強弱・声質になるようパラメータ値を1ずつ変えてみて調整していきました。バックの音が消え、GUMIの声だけになる印象的(になってほしい)なロングトーンですが、テンションとしては高すぎず、ただ太くあってほしい…みたいなこちらの要望にきちんと応えてくれます。そう、V6GUMIならね。
ちなみにロングトーンではありませんが、「い行」の音程はビブラート強めにかけるとより自然に聞こえる気がします。「変わらない」の「い」の部分では音としては短いですが、ビブラートの開始位置を0にして、完全に揺れる音として歌ってもらっています。

「変わらない」の「い」 エディタ画面


歌唱後イントロ(0:40~0:56)

四季シリーズの各楽曲のフレーズや音色・コード展開を使用しています。

「時花火」要素を奏でる琴(0:40あたりから)
「奏雪」要素を奏でるギター(0:52あたりから)
「夢紅葉」要素を奏でるピアノ(0:54あたり)


あとはストリングスやシンセ部隊が頑張ってくれています。
パーカッション系の音色は29、それ以外の音色は23個使用してます。自分が作る曲にしては少な目です。

メロディーラインなど抜くと、全部で52音色を使用


[夏]Aメロ(0:56~1:13)

「時花火」のフレーズを使用した夏部分のAメロです。
バックで鳴っているパーカス部隊は「時花火」のAメロ(0:19~)でも使用した音色を採用しています。「時花火」のゆったりとしたテンポ感を演出するため、音層は薄目にし、静かな雰囲気を感じてもらえるよう意識しております。

[夏]Bメロ(1:13~1:31)

ピッチカートとピアノ&ベースによる刻みのリズムに変化します。
1:16では「時花火」のイントロと同じ、クレッシェンドする琴のフレーズを入れています。タラララタラララってやつです。

琴のフィルイン的な装飾

[夏]サビ(1:32~1:49)

「時花火」でも使用した「チリン」という音から始まります。
また、サビだけではないのですが歌唱部分はビブラートの波に合わせてDYNを手書きしています。ビブラートも手書きした方がV6GUMIの声は人間らしくなるかと思います。

サビ部分のDYN値とノート エディタ画面


「期待託し」の「き」はエッジボイス気味にしたかったので、実際に鳴らしたい音(下記画像の黄色丸)よりも低い位置に「き」の発音を置き、DYNで音を途切れ途切れに聞こえるよう手書きし歌唱させました。AirFXもかけてブレス感も足してます。

エッジボイスのためDYNをギザギザにした部分

[秋]Aメロ(2:05~2:21)

「夢紅葉」のAメロ(0:44あたり)やサビ(01:12あたり)で使用しているベルのフレーズをアレンジして鳴らしています。

「夢紅葉」要素のベル(2:05から)

また、「夢紅葉」の間奏等で使用している音色を、コーラスの掛け合いのように入れてアクセントとしてみています。(2:08あたり、「薄茜色」の後など。)

[秋]Bメロ(2:22~2:40)

2:26のギターで「夢紅葉」のAメロ(夏の終わりとともに)のフレーズを演奏しています。また、夏部分の1番では無かったコーラスを追加し、楽曲を少しずつ盛り上げていっています。

[秋]サビ(2:40~2:57)

サビ冒頭の2:41で夏要素である「チリン」という音、冬要素である「シャン」という音の両方を鳴らし、夏と冬の間であることを表現しています。

[冬]Aメロ(3:14~3:30)

冬の雰囲気を出すため、いったんブレイクを挟んでいます。
「奏雪」で使用したベル音、また3:22からはシンセも追加し、楽曲の関連性を表現してみました。3:30のBメロへの受け渡しをするシンセの下り音も、奏雪で使用していたフレーズになります。

「奏雪」のシンセフレーズをアレンジし流用

[冬]Bメロ(3:30~3:50)

3:35では「奏雪」のイントロ・間奏のフレーズをギターに奏でさせました。ソロギターの音源は「Ample Metal Hellrazer2」を使用しています。ギター弾けないのでめちゃくちゃ助けてもらっている音源です。ピッチベンドを駆使してチョーキングっぽくさせてます。

[冬]サビ(3:50~4:08)

今までで一番パワーのある入りになっているかと思います。「はつ」の「つ」の後方エクスプレッションを高めに設定し、「ざくら」のフレーズに繋げています。今回の楽曲は繰り返すフレーズが多いので、単調に繰り返すだけでなく、歌わせ方や楽器を部分部分で変えてみています。楽曲と共に季節を巡るような感覚を味わってもらえたらと思っています。

3番サビの「はつざくらが」部分 DYNも少し強めに設定


間奏(4:08~4:22)

夏・秋・冬それぞれの楽曲で使用した特徴的な音色を使っています。サスの後のキラキラ音が好きでよく使います。Revoさんの楽曲でもよく聞く印象。リスペクト。

落ちサビ(4:22~4:39)

何度も録音して、ボーカルが映えるピアノを模索しました。
歌詞の「時を刻む」に合わせ、秒針の音を入れています。ピアノをもう少し伸びたテンポにしたい気持ちもありましたが、秒針がメトロノームのようでもあったため、ほぼテンポ通りに弾いています。
元々ピアノ弾きなので、落ちサビのピアノ弾いている時が一番気持ちいいです。

歌唱についてはV6GUMIの歌唱可能な範囲で、最もテンションの低い状態にしています。エクスプレッションを0~1桁台にして、DYNで音量を整えています。
また、転調前の「永久(とこしえ)」では、一音ずつクレッシェンドするようエクスプレッション・DYNを設定。発音タイミングもバランスがよくなるよう調整しています。

ラスサビ(4:39~5:22)

「はつ」の「つ」で強めにクレッシェンドしブレスを挟んでから楽器隊が入ってきます。「ざくら」の「ざ」は「ずぁ」と歌わせ、他サビとニュアンスを変えています。4:47あたりの「何も」の「も」は語尾のピッチをあげ、より感情的に聞こえるようにしてみました。感情的にしすぎると雑に歌唱しているようにも聞こえてしまうので、バランスを取りつつ調整していっています。またビブラートは手書きの方が感情的に聞こえたので、ほぼ全部手書きにしています。

5:01からの本当のラストサビでは、ベースの動きを増やしてクライマックスを演出してみました。5:10や5:14のバックで鳴いているギターも曲の最後を盛り上げてくれています。

「幾度目かの 初桜の下で」という四季シリーズの本当に最後になるフレーズは、楽器や音色、メロディー、歌わせ方などを何度も変更し今の形になりました。盛り上げたまま動で終わるか、はたまた静で終わるか、ピアノだけにするか、エッジボイスにするかなど…。この部分の製作を終えるとシリーズが終わってしまう、という寂しさや緊張感と戦いつつ、納得いく形の終わりになるよう時間をかけて検討しました。最後に秒針の音を追加し、四季シリーズが繋がり・続いていくことを表現し、作品・そしてシリーズの終わりとしました。

アウトロ(5:22~)

GUMIのコーラスと共に作品の終わりを奏でます。
5:36で「時花火」、5:44で「夢紅葉」、5:50で「奏雪」のそれぞれのメロディーをギターが歌い、ピアノが最後を締めて楽曲が終わります。

題字について

四季のイメージの色を使いつつ、しあびす先生の名画を邪魔しないような題字を書きました。※イントロ歌唱後とアウトロで登場します。

おわり

四季シリーズは「夢紅葉」から始まり、ニコニコ動画・YouTube・ビリビリ動画にて、大変ありがたいことに多くの方から嬉しいお言葉をいただいてきました。本作でシリーズは完結ですが、四季シリーズをまとめたCDの製作、楽曲配信なども検討しておりますので、ご興味ある方がいらっしゃいましたらtwitter等で情報見ていただければと思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

NAMiKi


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