見出し画像

VOCALOID6を用いたV6GUMIの調声について雑に解説する記事

えぽかろーぐの作曲・調声担当NAMiKiです。

2022年1月5日に投稿した「【V6GUMI】時花火/えぽかろーぐ」の調声・音作りについて、簡単に解説しようと思います。
今作で初めてVOCALOID6を触りましたが、V5までの仕様との違いに苦戦しつつもV6GUMIの良さを生かせるように試行錯誤してみました。

(2/14追記)
こちらの楽曲が「VOCALOID6 Megpoid楽曲コンテスト2023」にて「Megpoid賞」に入賞いたしました。応援いただいた方、運営・企画いただいた方々に感謝申し上げます。

前提

この記事は、「VOCALOID6のみで調声をしたい」という(ニッチかもしれない)方向けです。

作業者のレベルや慣れなどにもよりますが、歌声がそれなりに聞こえるようになるまでの調声作業という意味で言うと、他のAI歌声合成ソフトである「Synthesizer V」や「CeVIO AI」の方が早いし完成度も段違いです。(※ここでいう”完成度”とは「合成音声感が少なく人の歌声に近い」ものとします。)「Synthesizer V」では入力しただけで比較的自然な歌声になり、パラメータ調整をすれば不気味の谷を軽々と越えるとも言われます。ただ単にGUMIに”より人らしく・手軽に”歌ってもらいたいのであれば、SynthVなどで音声データを作成し、VOCALOID6の新機能「VOCALO CHANGER」を用いて音声をGUMI化するのがよいといえるでしょう。

それでも”自分の手で調声してGUMIに歌ってもらいたい”」「VOCALOID6縛りで調声したい」というニッチ(広義)かもしれない需要の支えになればと思い、VOCALOID6の個人的な簡易ノウハウをメモ程度に書き記そうと思います。

参考になる方がいらっしゃれば幸いです。


まずは解説対象楽曲をご視聴ください。

YouTube


ニコニコ動画

以下、雑な解説です。

イントロ

ヨナ抜き音和楽器+ウィンドチャイムという少ない音から始まり、すぐにギターや4つ打ちドラム、ストリングスといったたくさんの楽器が参加していく構成です。花火のように「静かに一気にあがっていき、その後ぱっと華やかに咲く」を感じられるようなイントロにしてみました。

また、イントロだけではありませんが、四季シリーズでは各楽曲の統一感を出すために、コード展開が類似するよう意識して作っております。


Aメロ~Bメロ

Aメロ ”海は暗く 小波を立てて” 歌唱部分

上記画像の通り、
「海は 暗く 小波(さざなみ)を 立てて」というフレーズの場合、

う み わ く ら く さ ざ な み を た て て

といったように
14文字そのまま打ち込むのではなく、

う ー み ー わ ー く ら く ー
さ ざ ー な あ み を た て て ー あ [h]

と23文字打ち込んでいます。

ここでの主なポイントは3つ、
・音節・拍以上に音を分ける
・「囁き感」のためにエクスプレッションを調整する
・息の表現「h」もしくは「h+直前の音の母音」を入れる

です。

【音節・拍以上に音を分ける】
AI MegpoidというかV6のAI VOICEBANKの特性か、「一つの音を発声するときに、やや下からしゃくるように発音する」という癖があるように思います。これが「人間の発声に近い」と感じる要素の一つだと思いますが、この特性を生かすべく、「うみ」というフレーズを「うーみー」という4発声に分け、人間の声のような「微妙な震え」や「不安定感」を表現しています。

「海(うみ)」の打ち込み部分

また、「うみ」の「み(G#2)ー(A2)」は、手動でしゃくりをいれるべく「半音下げ⇒鳴ってほしい音」の2音に分けて打ち込みます。
V4のときは「み(G2)ー(A2)」といったように2音下げくらいからしゃくるとちょうどよかったですが、V6だと場合によっては低音のアタックが強くなってしまうので耳で聞いてバランスがいいと思えるようなしゃくりに調整しています。(今回のこの部分は半音下げを採用。)

「囁き感」のためにエクスプレッションを調整する

「う」のエクスプレッション調整

ノートに表示されている緑の線が、音の強弱を決めるエクスプレッションツールとなっており、この値を変更することで声の大きさを調整できます。エクスプレッションは一つのノートに対し「前方」「中間」「後方」の3か所でそれぞれ値を設定することができます。

今回の「海」の「う」の場合、
 前方エクスプレッション:18
 中間エクスプレッション:61
 後方エクスプレッション:36
で設定しています。

値の解説ですが、始めに「前方エクスプレッション」を低めの値(20前後)にし、音の立ち上がりを遅らせる=音がはっきり聞こえるまでの時間を遅らせています。この部分が「囁きの入り」になります。
続いて音の核である「中間エクスプレッション」っですが、デフォルトの50より少し高い値(58~70くらい)に設定することで、「前方エクスプレッション」の値の低さの影響を受けすぎずに音を鳴らすことができます。前方・中間ともに低くする場合もありますが、今回の「う(B2)」の音については”B2というやや低めの音”であることと、"バックでなっている音の音域に被っている"ことから、「囁き感は欲しいが存在感も必要」と判断し、「中間エクスプレッション」の値をやや高めに設定しています。
最後の「後方エクスプレッション」は、音節の終わりであれば0に設定してもいいくらいですが、今回の「う」はそのあとの「ー」と1セットのため、30~45くらいの値で設定し、音のつながりが不自然にならないようにしています。ちなみに、「後方エクスプレッション」のみ極端に高くすると、唸るような、「…っう~!」といった音に近くなりがちです。(これはこれで使うときもあるのですが。)

今回の値は上記のように設定していますが、結局は耳で聴いて理想の音に近づけることが最も大切だと思っています。先ほども少し触れましたが、「バックの音(インスト)の音域や音量」、「歌ってもらうノートの音が開音節か閉音節か」、「前後のノートの音程や子音」などによっても、設定する値は変わってきます。値を微調整して、調整した部分を聞いて、また微調整して…を繰り返し、理想に近い歌い方をGUMIさんと一緒に模索しています。

息の表現「h」を入れる

「小波を立てて」の最後の「て」付近

歌のフレーズの語尾を上げる「ヒーカップ唱法」を再現するため、フレーズの最後に2~8音ほど高いノートを用意します。V5までは、オクターブ上くらいのノートを入れるとちょうどよく感じていましたが、V6AIのエンジンでは「より素直に」入力したノートを歌おうとしてくれるように感じますので、「気持ち上げる」くらいが聞きやすいかなと思っています。また、入力する音は母音の中から選ぶことが多いです。色々試した結果、ここでは「あ」を入れました。
また、その上げたノートの後に「[h]」の音を入力しています。実際に入力してみるとわかると思いますが、「は[ha]」の「[h]」だけを入力しているような音が鳴ります。これで「息の表現」をしています。ただ、この「[h]」は青い波形の通り、非常に小さい音で鳴るので、前述したエクスプレッションをすべて最大にしています。DAW側で音量調整してしまうのもありだと思います。

これらに加え、発声のタイミングやビブラート、ピッチ調整などを全体に適用していきます。

サビ

サビ "あなたがくれた光"の"あなたが"歌唱部分

サビ部分では、タイトルにもなっている「時花火」というフレーズが華やかに聞こえるよう、インスト音源側も楽器を増やし、花火の「動」の部分を表現するよう心掛けました。Bメロの最後(「幼い面影が並ぶ」)でいったん落ち着いた歌唱パートですが、ここからは力強さを加えていきます。

バックの音に負けないよう、全体的に歌唱部分のエクスプレッションを高めに設定します。特に、「音程が上がるかつ地声で歌う部分」「母音が”あ”の音」については、他の音よりエクスプレッションを高めに設定すると、人の歌唱に近づくように思います。自分で歌ってみたときに、口が大きく空いている音(母音が”あ”)は声が大きくなるかと思いますが、それをボカロ側でも再現してもらうイメージです。逆に、口を閉じて発音する「い」「う」はエクスプレッションもやや低めがいいかもしれません。(このあたりは耳で聴いてみて微調整しています。)

上記画像では「あなたが」の「が」を、裏声っぽく聞こえるよう、しゃくりを強め・裏声部分はビブラートを細かく(速度を早く)調声しています。しゃくり部分は、場合によってはもっと低い音程(F3とか)にしてもいいと思います。鳴ってほしい音程の発声タイミングを遅らせるのも、裏声感につながると思います。

まとめ

V5の時と弄れるパラメータが変わってしまったV6エディタですが、V6で変更できるパラメータである「ピッチ」「ビブラート」「エクスプレッション」「タイミング」や、DYN・PBなど、細かく調整すれば個性も出せるかなと思います。

まだまだ研究途中の身ですが、どなたかのVOCALOID6楽曲作りの応援や参考になるのであれば幸いです。

よかったらV5で作成した楽曲、V4GUMI版等も聞きに来てください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?