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最近聴いてよかった音楽 24/01

あけおめことよろ。

最近聴いて良かった音楽です。新旧混合。


オスティナーティ / 山田岳

現代音楽ギタリストによる作品。なんでも1978年から2016年に作った作品が収められているそうだ。幅が広すぎでは。

印象的だったのは想起 - 迂回。ギター独奏とポエトリーによる非常にシンプルな曲だが、シンクロしていた両者が段々と離れていく様が面白い。ギターの音の説明をしていたはずのポエトリーが最終的に自転車の修理方法を喋り出す。その他の曲も「間」を意識した構成であり、昨今のアンビエントの耳で聴くと新鮮な発見ができるのではなかろうか。


ひなふトーン /  無果汁団

昨年の暮れあたりに話題になっていたらしいポップバンド。70~80年代のニューミュージック(シティポップに非ず)に多大なる影響を受けている音楽性だ。

ニューミュージック+けだるげ女性ボーカルと猫戦のような組み合わせだが、より色濃くノスタルジーを感じさせる作風だ。親の実家から出てきたカセットテープに入っていた謎の良曲のような雰囲気さえ漂わせている。90年代の女優が歌っているレア盤と言われたら信じるレベル。

ニューミュージックの再現は昨今擦られすぎたテーマだが、彼らは90年代ガールポップの再現と言う点で一歩先を行っているように思う。今後が大変楽しみ。


Sky Trajectories / Kikù Hibino

今年頭にひっそりと発表されていたIDM。イタリアのレーベルから出ていたが、どうやら日本の方らしい。

右へ左へとパンが振られる断続的に響くノイズが心地よい。池田亮二に通じる美学を感じるものの、それに上物が載っていく様は新鮮。意外となかった音楽性かもしれない。

アルバム3曲目から連続するボーカル曲たちは大変絶品。切り刻まれたポエトリーとミニマルテクノの絡み合いは大好物です。


151A / Kishi Bashi

インディーフォークの名盤。この前初めて聴いた。CMか何かで聞いたことがある曲がいくつか収録されていた上英語版Wikipediaさえ存在するので、相当有名なアルバムだったらしい。それを今まで聴き逃してきたのは何故…

of Montrealが泣いて逃げ出すほどの祝祭感あふれるインディーポップ。暖かな日曜の午後の日差しに満ち満ちている。個人的には何故だが分からないが三菱系のアウトレットパークがあるような郊外を思い出す。決して三井系ではない。

また日系の方らしく時折短いながら日本語詞も挟まるのだが、パンチラインばかり。特に「どうせだめだけど やめられないね」は真理。どうせだめだけど辞められません。


con / elyc

チリの電子音楽が盛り上がっているとかいないとかという話をうっすら耳にするが、本作もチリ産テクノ。

アニメジャケがネット系テクノの代名詞となって久しいが、多くの場合ハイパーポップやハウスなどアッパーなジャンルが多かったように思う。しかしながら今作は露骨にrei harakamiを彷彿とさせるかなりミニマルな音楽性。しかしrei harakamiにここまで寄せるのも苦労しただろう。柔らかくころころした音像は大変心地が良い。そしてランダムな電子音の狭間から時々ちらちら見え隠れするポップなメロディラインも花を添える。

アッパーな印象が強かったY2Kに対してダウナー方面から攻めてきたという印象である。ネオY2Kとしてrei harakamiが祀り上げられる日も近い。


Music Makes No Prophecy / Foresteppe

ロシアの歴史教師によるアンビエントプロジェクトの新作。過去作もなかなか良かったが、今作も非常に素晴らしい出来。

ベースとエフェクターだけのシンプルな構成だが、そのせいか寒々とした雪原が脳裏に浮かぶストイックなアンビエントに仕上がっている。アンビエントというと大抵空や海などの夏よりのイメージが思い浮かぶものだが、ここまで寒々しいものは滅多に見ない。ロシアの古くからの気候と現在の情勢のなせる業かもしれない。

アンビエントあるある:その1「1トラックしかない」に本作も該当するが、そのシンプルさ故か他のアンビエント以上に40分間するっと聴けてしまう。近年でアンビエントを最も体現したアルバムかもしれない。


At Breydon Water / J. Wiegold

最早みんな大好きと言ってよいだろうシンガーソングライター・J. Wiegoldの作品。話題になっていただけあってかなり良質な内容に仕上がっている。

CorneliusのPoint~Sensuousのようなアコースティックギターの独奏とテクノ的な手法を両立させた作風。息遣いやギターの指がかなり近い。また歌やメロディから濃厚なサイケデリアを感じる。都会から遠く離れた森の中で聴きたい音楽である。

本作で扱われている、オーガニックでありつつも電子音楽の背景を感じさせる手法は今後のフォークにおいて非常に重要なものになってくるように思う。


Me and My Den / khc

昨年ポスト空気泥棒として話題になった韓国のフォークトロニカユニットkhcが今年も新譜を出した。

前作はどちらかというと「トロニカ」だったが、今作はかなり「フォーク」寄り。フォークギターに載せた朴訥な歌と電子音響の絡み合いが絶品。ポップながらどこか狂気的な前衛性を帯びている様は、ちょうど日本の関西うたものフォークのノリに近い。ただひたすらに前衛を走るだけではなくこういう歌ものもできちゃいますよ、という器用さをアピールしているかのようだ。

空気泥棒よろしくあまり詳らかになっていないユニットだが、今後の韓国インディーの注目人物であることに間違いはない^^;


Here O.S.T. / Ameel Brecht

ベルギーの映画のサントラ。同国の実験マンドリン作家による作品らしい。

映画のあらすじはというと、「植物学者の女性と移民労働者の男性が織りなす些細で優しい日常の断片をつづったドラマ」らしい。なんでも苔が話の重要な部分を占めるらしく、サントラもそんな湿度の高い森のような空気を漂わせたヴァイオリンが終始メインに据えられている。

この静謐なサントラと共に繰り広げられるお話とは一体どんなものなのだろうか気になる。既に公開されているようなので見に行こうかな。


La Voz De Las Cumbres / The San Lucas Band

グアテマラの山村出身のバンド。村の行事で演奏していたらしいが、あまりにも凄い。あまりにも下手なのである。

その下手さはThe Shaggs、Portsmouth Orchestraと比肩するほどのレベル。ここまで来たら最早芸術である。ただ彼らと違うのは努力の跡が垣間見えるところ。一所懸命に合わせようと努力している団員たちの姿が目に浮かぶ。それ故このアルバムの面白さはただ下手なだけではなく、その下にある意図が垣間見える点にある。注意して聞けばジャクソン・ポロックの絵にふとリズムが見えたときのようなアハ体験を感じられる。

ちなみにジョンハッセルの愛聴盤らしい。第4世界を通り越した世界がここにある。



その他雑記


・もってけ!セーラーふくがサブスク解禁したらしい。電波ソングの帝王であり、ネット系テクノの直接的な影響元の一つと言える存在。

・そういえばこれ神前作品ですね。ある意味でポスト渋谷系なのかもしれない。


・知らない間に鈴木慧の遠い旅の同行者がサブスクに来ていた。物凄くチープなシティポップ。


・すずめのティアーズ、サブスクにないと思っていたら"Suzumeno Tears"名義で登録されていたらしい。昨今の民謡再解釈で最良のバンドと思うので注目です。


・CymbalsのEP類も来た。人に薦めやすくなったのでとても嬉しい解禁。


・それでもやっぱり性的衝動が蘇っていた。

・胸やけうどん、作るか…

・初売りでとうじ魔とうじのCDを発見した。これは美味しい。

・年末に後輩に京都へお使いに行かせた結果手に入れた頭士奈生樹のライブ音源、めたんこ良いですね~


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