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私の癒しの種 ミッケ!

「いつも穏やかな心で過ごせたらいいのに。」と強く思っていた時期がある。「ああでもない、こうでもない」ともがいてみたものの結局どうにもならずに時が過ぎ、薄れて過去のものになる。それだけならいいのだけれど、前を向いて歩いている心にずっとまとわりついてくる、なかなか手ごわいものもある。うっとうしくて、払い除けてしまいたいものの正体は何なのか。

ー理不尽ー 

私の中で「理不尽」が、どうにも穏やかな心を阻んでいるのだ。自分でも呆れるほど自分自身と向き合う私は、何処に身を置いていても、何をしていても、理不尽なことに出会ってしまう可能性はあるので仕方がないとわかっているのに、通り過ぎることも並走することもできない。ばたばたぐるぐると回って元に戻り、迷宮に入ってしまう。せめて、通り過ぎるフリとか並走するフリができればいいのにと、何度嘆いてきたことか。自分自身にも他の誰にも嘘はつきたくないという正直者が私の中にいる。

不安、不満、理不尽。ストレス発散は一時しのぎに過ぎない。長い間「嫌な自分」と向き合って、ようやく私なりに、気持ちの四隅をつまんで真四角に折り畳み、折り紙で鶴を折るように綺麗に形を整えていく方法がわかり始めた。少し時間が必要だけど、ふっと微笑みを浮かべて力が抜けたことに気付く瞬間が嬉しい。

何てことない日常の中で折り紙を見つけるのは、意外と簡単なことだった。例えば「洗濯板」。シンプルに暮らすということに興味を惹かれたのがきっかけで、だいぶ前に使ってみたけれど、やっぱり手洗いは面倒くさくてやめてしまった。それを改めて手にしてみる。国産のサクラ材で作られた、長さ26cm×幅12cmの小さなもので靴下やハンカチを洗う。硬いイメージの木が水に濡れると、なんとなく柔らかく感じて心地よい。サクラの木のことを知りたくなって調べてみた。

お花見でよく目にするソメイヨシノは、成長とともに幹の中に空洞ができ、木材として使うことが難しい木。園芸種に属する。一方、サクラ材として家具や箸などに使われることが多いのは野生種のヤマザクラで、細かな木目で水には強く、加工しやすいという特徴がある。流通量はそれほど多くない。カバやミズメが木の質が似ているという理由からサクラ材と呼ばれて流通していて、ヤマザクラのことをホンザクラ(本桜)と呼び、それらと区別している。また、カバ細工と呼ばれる茶筒などの工芸品は、ヤマザクラの樹皮を使って作られている。

もっと色々知りたい。次に箸を買うときは、サクラの木で作られたものにしてみよう。

綺麗になった靴下の形を整えて干すことを何度か繰り返していくうちに、面倒くささより充実感の方が大きくなった。手荒れが気になるので手袋をして洗うようになったけれど、少しでも木のぬくもりを感じたくて薄手の手袋を選んだ。汚れはよく落ちるし、よれたり傷んでいる様子もない。板に刻まれた波型の溝が、洗濯物の生地を傷めないように工夫されているらしい。私が使っているのは職人さんの工夫で作られたものだ。

どうにもできないこと、ずっと付いてくる嫌なもの、どうしようもなく傷ついてふらふらになってしまうこと。上手くかわすことができず、まっすぐに受け止めてしまう。だけど時に支えてもらいながら、立ち止まらず自分自身と向き合い、心に折り合いをつけてより良く過ごせる方法を見つけたいと歩んでいると、何かしら発見がある。そこから新しい世界が広がるのは面白い。

迷宮の中で「癒しの種」を見つけたら、水をやり育ててみる。運よく花が咲くかもしれないし、咲かなくても、芽が出てくれたらそれが育つ姿を観察できる。そのまま、ありのままを受け入れるのは簡単ではないけれど、いざという時にはそれができるようにと心掛けている。

ここだけの話。

きれいごとに聞こえてしまうかなと思い、人にはあまり言わないでいたけれど、私は答えの出ないことを考える時間が持てることを、とても素敵なことだと思っている。







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