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解決するより好きになれ:澄川地区&さっぽろ天神山アートスタジオ訪問記

私の職場の一つ(札幌市立大学デザイン学部)では、地域へのフィールドワークが必須要素となっている授業「学部連携基礎論」が設置されています。その一環で、札幌市南区澄川地区にフィールドワークに行ってきました。

今回は、そのご報告。

この「学部連携基礎論」は「札幌市の各地域の特徴と課題を看護学、デザイン学的視点から分析し、地域の課題を明確化する過程を通し、 それぞれの専門性に対する理解を深めるとともに、異分野連携に必要な基礎的知識・技術・態度を習得する」ことを狙いとしています(シラバスより)。実際、デザイン学部&看護学部の混成チームで、札幌市南区の地域が一つ割り当てられ、その地域を調査・観察し、三年次の「学部連携演習」で問題解決の提案につなげることが求められています。

さて今回訪問した札幌市南区澄川地区は、人口3万人弱(2009年1月1日現在)が住むタテに細長い地域です。6キロ北側には札幌の中心地・すすきのがあり、札幌市営地下鉄南北線を使えば10分で到着できるアクセスが良い地域です。歴史は意外と長く1882年に福岡県からの団体移住者が入植したことから始まり、その後住宅地として発展してきました。

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駅前はごちゃっとしていて飲み屋が多い印象。その理由は、隣駅が「自衛隊前」ということで、自衛隊の隊員さん向けの居酒屋が多いから、なんて噂も聞いたことがあります。若い人には澄川イーストというエリアもあります。

さて学生がフィールドワーク実行中、私は自主企画ということで、近くにある、札幌市の文化・芸術の交流施設「さっぽろ天神山アートスタジオ」に突撃しました。

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さっぽろ天神山アートスタジオは、元々は「札幌天神山国際ハウス」という宿泊施設だった建物です。2014年の札幌国際芸術祭の時に、海外や県外のアーティストや文化芸術の関係者が滞在できる場所が必要ということで、急遽リノベーションされた施設です。

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滞在費がとても安い!

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さて突撃したにも関わらず、「さっぽろ天神山アートスタジオ」の方には、大変親切にご案内して頂きました。まず一階は市民に開放されています。私が訪問した時はたくさんの子どもが遊んでいました。

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その他、第三日曜日にはアーティストと地域住民でご飯会「アート&ブレックファストデー」を毎月、第三日曜日に開催したり、様々なワークショップをやったり、かなり地域に根ざした活動をしている印象を受けました。

さて(居心地良すぎて)長居してしまったので、急いで学生チームに合流し、ミーティングに参加しました。その中で、来てみなければ分からない澄川の特徴や魅力みたいなものを振り返ってもらいました。最後に「澄川にハッシュタグをつけるとしたら?」というお題を出して、発散した澄川の「特徴」を整理しました。ここから迷わず最終発表に進めると良いなあ。

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どうしてもフィールドワーク&提案というと「この地域はこれが問題で、この問題を解決するために、こういうことをすべきだ」という「問題発見ー問題解決」のフレームワークになりがち。ただ、これだと「あら捜し」みたいになり、深く地域を見れず、結果として効果的な提案ができなくなってしまいます。なので、私は「マニアック澄川」というコンセプトで、とにかくマニアックに澄川を見よう。誰も知らない澄川を提案しよう、というスタンスで活動しています。

理論的にも、Kretzmann と McKnightによる、地域の資産に注目するABCD(Asset Based Community Development)アプローチ*1や、加藤による「ボランティアモデル」*2も、「問題発見ー問題解決」のフレームワークの批判から生まれています。まあ、私自身、自治体と一緒に仕事をする時は問題発見からではなく、まずはその土地を好きになった上で「これがあればもっと良くなる…!」というスタンスで提案してるしなあ。

そんなことを考えつつ、さっぽろ天神山アートスタジオに突撃していたのですが、そうしたら偶然見かけた「天神山アートキャンプ」のコンセプトが、これまた、上記のことと完全に一致して、一人で喜んでました。

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「すごく よく みる」ことって大事!!

おまけはホタテ大盛り。学生の一人がちょうど澄川駅前の居酒屋でアルバイトしていたので冷やかしがてら、グループワーク終了後に、そのまま一杯やりました。ホタテも日本酒も美味しかったです。

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*1:Kretzmann, J. and McKnight, J.(1993)Building communities from the inside out: A path toward finding and mobilizing a community’s assets. Skokie: ACTA Publications.

*2:加藤文俊(2017)「産学官連携における〈自立〉と〈自律〉に関する考察」地域活性学会研究大会論文集 9

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