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香りで楽曲を再生する。「FLOWERS」の香水ができるまで。【前編】

この秋、WONKの楽曲を香りとして再生する新シリーズが始動します。第1弾として「FLOWERS eau de toilette」が登場。前作の「MOON DANCE」に引き続き、アーティスト・和泉侃さんと香水を共同制作しました。今回からはデザイナーとしてH.incの長谷川弘佳さんと早川和彦さんが参画し、シリーズでの香水づくりが始まります。10月27日に発売となったばかりのこのプロダクトができるまでの過程を伺い綴っていきます。

ミュージックビデオのように、音楽を立体的に楽しむ「香り」を

―香水づくりは前回に引き続きですが、今回から新シリーズなんですね。
長塚:「MOON DANCE」は僕らの作品を香りにしようという最初のプロジェクト。あれを作ってみて、今後も香りをテーマにものづくりをしたいなって。例えば、メンバーごとに香りを作ろうかなとかも考えたんですけど、バンドとしてこれからリリースする楽曲を香りにするのを連続的にやりたいねと、侃くんと話したんです。

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和泉:そうでしたね。「MOON DANCE」で楽曲を香りに変えていく過程はとても楽しかった。

僕は普段から香りの中に音楽や音を感じる時もあるし、その逆もあるんですよね。今回も、ミュージックビデオなどの映像表現のように香りを作って、音楽がより立体的に聴けるようにしたいなと思ったんです。

長塚:
今回からは、香りができる前からデザイナーとして、H.incの長谷川さんと早川さんが入ってくださってますます楽しくなってきました。
和泉:WONKのこれまでの世界観を踏襲しながらも、「MOON DANCE」の香水を経て、アップデートして、より進化したものを創りたい。一つ上のステージでクリエーションがしたいと思った時に、以前僕がご一緒した、お二人のことが浮かんで。純度の高いプロダクトであり「作品」を作りたいと思ってお声がけしました。

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デザイナーとして参画してくださったH.incの長谷川弘佳さんと早川和彦さん

早川:プライベートでも香りがめちゃくちゃ好きですし、デザイナーとして香りのプロジェクトをするというのも楽しみでした。何より、このプロジェクト自体の先進性に惹かれましたね。

「香りづくり」と「デザイン」と。同時並行で進むプロセス

―はじめて「FLOWERS」の楽曲を聴いた時にどう感じましたか?
和泉:僕は今までのWONKの路線と全く別だなと感じました。一人のWONKファンとしては、これまでWONKを知らなかった人にも、もっと届く気がして嬉しくなりました。あとは、音の作り方やアレンジも新鮮で結構驚いたかも。とにかくインパクトがありました。
早川:ゴスペル感というか、宗教音楽としてというよりかは、ゴスペルから感じる根本的なポジティヴさを、聴いていて感じました。


長谷川:このプロジェクトで出会う前からWONKは聴いていましたが「FLOWERS」は聴いていて元気づけられますし、この仕事の時以外にも、急にサビのメロディーが頭の中で流れてきたりします(笑)。中毒性ありますよね。
長塚:それ嬉しいなー。がんばって作って良かったです…(笑)!
和泉:楽曲がリリースされてから、このプロジェクトが本格的に動き出していきました。僕が香りを組み立てている間にも長谷川さんと早川さんがデザイン案を見せてくださって、その気づきから香りをこうしようかなとインスパイアされたりしましたね。
長谷川:今回の私たちのデザインの領域は、「FLOWERS」の香水デザインでなくて、「WONKの楽曲を香水化するプロジェクト」をどうパッケージデザインするかということだったんです。そもそもこのプロジェクト自体がおもしろいのは、耳から聞く情報を、香りという鼻から入る情報に変換して出すっていうことを考えているところ。なので、私たちも、曲にはCDや配信サービスという器があるけど、曲を香り化した時の器ってなんだろうっていうことを考えたんです。

キーワードは「香りを再生する」

早川:実際のデザインを考えていく中で気になったのが、音楽の「再生」という言葉でした。英語でいうところの「PLAY」とは、ぴったりイコールってわけでもなくて、「再生」っていう言葉の意味を今回考え直してみたんです。
長塚:なんだかハッとしました。僕の場合、「音楽」は、自分が身を置いている空間にどういう音があってほしいかで最近選ぶことが多いんですが、香りも一緒ですよね。空間の中に欲しい要素を「香り」で足している感じがしてます。今僕の手元にもあるんですが、本当にいいデザイン。

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長谷川:ジャケットがオレンジだからオレンジというわけではないのですが、改めて「FLOWERS」を聴いてフラットに考えてみて、このオレンジを選びました。「FLOWERS」に限らず、これから生まれていくであろうWONKの楽曲を香りのシリーズとして展開するということで、透明な色のグラデーションを見せるだとか、様々なビジュアライズの方法を検討してきました。様々なご提案をさせていただいて、皆で検討してというプロセスを繰り返して、最終的に歌詞のみで表現するのが良いよねということになり、そこからどの形がいいかを検討して、形に対して文字の入れ方を検討していきました。今のこの円形に落ち着いたのは「再生する」という回転していく感覚が、表現方法としてストンと腑に落ちたからなんです。
早川:ボトルの円柱形と、パッケージの円筒型の箱。楽曲を再生してまた終わってということと、香水で始まりの香りから、終わりの香りまで移ろうような一連の流れを円筒のパッケージにおさめてみたいと思いました。それであえて、歌詞も回転する方向に向かって、縦に並べました。
和泉:これを初めて手にした時、うわ~~~って思いました。意味のない部分がないというか。プロダクトとして輪郭がはっきりしていて、手に取る瞬間も、開ける瞬間も、違和感がない。日常のどこかに置いている時も、いい光の受け方をしてくれて、美しいです。
長塚:僕的には、歌詞がちょっと読みにくくなっている仕様っていうところに、グッときました。

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長谷川:そこの部分、とてもこだわっています(笑)。香りという情報をちゃんと主役にして、歌詞はあくまでそれを引き立たせたかったんです。だから微かに見えるくらい。香りの次に、歌詞がうっすらと見えてくる、その段階を経て楽曲を味わってほしくて、このように仕上げていきました。

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「再生」をテーマに、香りづくりとデザインがセッションしながら生まれていったこのプロダクト。
気になる香りづくりについては【後編】へ続きます。
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長塚健斗
WONKのボーカリスト。個人では、冨田ラボやKing Gnu、millennium parade、Ryohu、elephant gym(台湾)らの作品に参加。料理人としての一面も持ち、大学在学中よりイタリアンやフレンチの有名店出身のシェフの下で本格的に修行を開始。卒業後、弱冠24歳にして都内ビストロの立ち上げに料理長として携わる。現在もフランス料理をベースに商品開発やイベントを開催。所属レーベルEPISTROPH ではオリジナルブレンドコーヒー“ Introspection” やフレグランス“Moon Dance” のプロデュースも行なう。
https://www.instagram.com/kentwits/

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和泉 侃 アーティスト(Installation / Scent Design & Direction)
「感覚の蘇生」をコンセプトに、身体感覚の変化を生み出す作品を探求するアーティスト。 2011年から香りを使ったスペースデザインを専門とする企業に所属し、5つ星ホテルや様々なジャンルの店舗空間を香りで設計するプロジェクトに携わる。 2015年により本格的に作家として活動を開始し、インスタレーションの制作発表のほか、空間や製品における香りのデザインやディレクションを手がける。 2017年に淡路島に拠点を移し、植物の生産、収集、蒸留などの原料製造から、調香やボトリングのプロダクトアウトまでの過程を一貫する取り組みをはじめる。https://www.instagram.com/izumikan_products/

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H inc.
2017年、クリエイティブディレクター&プロダクトデザイナーの早川和彦と、アートディレクター&グラフィック/インターフェイスデザイナーの長谷川弘佳が共同で設立したデザイン会社。ブランディング、プロダクト、グラフィック、ウェブ、映像ディレクションなど、活動領域は多岐に渡る。主な仕事に、資生堂WASO・ブランディング、ユニクロ・ウェブ広告、Ocean Tokyo・プロダクトデザイン、サンアド・企業サイト、ACPブランディングなど他。
早川和彦 | KAZUHIKO HAYAKAWA Creative Director / Product Designer
長谷川弘佳 | HIROKAHASEGAWA Art Director / Graphic & Interface Designer
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Photo (Product) : Kohei Watanabe(UN.inc)
Edit : Momoe (EPISTROPH CREW)


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