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障害者雇用 日々つれづれ 人事部の天命
人事部は会社のなかで不満をもたれやすい部署だと、ある小説に書いてあった。
どうやら異動の公布のとき、その人が思い描いていた部署とは違う部署が告げられるたびに、人事部へ不満が沸き起こるそうなのだ。
だから人事部の人間は社内での居心地があんまりよくないのだという。
そんな部署だからなのか、社員さんたちに滲み出る特徴がある。
私は人事部への所属が初めてだったのもあるかもしれないが、今回配属されて首をかしげる場面にも多く遭遇した。
そのひとつにメールでの言葉遣いがあって、例えば「何卒よろしくお願い申し上げます」という、いかにも仰々しいお願いが私に来たりする。
数部のコピーの依頼にも関わらず、である。
最初に見たときは、あまりの謙遜ぶりにとことん驚愕し思わずのけぞった。
こんなご丁寧でへりくだたれると、コピーした用紙も「ははーっ」と最敬礼でご献上たてまつりたくなる。
他部署とのやり取りがしょっちゅう私にもCC.で来るのだが、そのときも人事部の社員さんたちはなんとも腰が低い。
敬語に次ぐ敬語で、てらてらと修飾されて最大限の敬意が示される。
こんな日本語を流ちょうに使えるようになるのも、人事部ならではなのだろう。
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人事部という特殊な部族の方々には、おそらく徹底的に下の立場に徹した態度が望まれるのだろうと思う。
あらゆる部署との関りを通して、彼らはとにかく神経をすり減らすという天命を背負っているのである。
たとえばこのあいだ中途採用で応募が来ない部署があって、求人掲載期間を延長しましょうかと人事部の社員さんが提案したとき、そこの部長はおいおい応募が来ないってどういうことだ?と言わんばかりの強面なメールを返していらっしゃった。
人事部社員は、ここ3年前と比べても売り手市場になってきていることをふんわりと述べたうえで、「紹介会社に再度確認しながらアプローチいたします」とうやうやしくお返事なさっていた。
部長さんは、「お、おお、そうか、近年の傾向か。それは大変だな、ありがとう」的なメールを返してこられて、勃発しかけた争いはまったく問題なくおさまったのだった。
これはまさしく他部署と人事部のコミュニケーションのロールモデルである。
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3月末。年度最後の中途採用チームのミーティングが開かれた。
ミーティングの〆として、ある社員さんから来年度の目標が重々しく発表された。
それは人事部として外部からの人材を積極的に採用したい、頑張りたい!とのことで、不足分の埋め合わせだけでほぼ終わってしまった今年度の反省も込めたものだった。
そもそも突発的な人員不足(急に辞められちゃって人が足らない!など)を補うのも人事部の大きな役割なのだろうが、外部の光った人材を新たに見つけ出し、わが社の魅力をアピールしてスムーズに惹きこむことも人事部の重要な役割なのだろう。
出席していた中途採用チームメンバーは皆、その抱負を聞いて輝いた瞳とともにうんうんと大きくうなずいていた。
そのときに印象的だったのが、来年度の目標を発表した社員さんの言葉である。
「ほかの部署の方々にもこの方針を分かってもらうために、じわじわとやんわりと社内に浸透していくよう伝えていきます」
いきなり「新たな人材獲得戦略でいきます!」と社内に堂々とかざして、「皆の者ついてこい!」というわけにはいかないらしい。
人事部は、周囲にとっても気を遣う必要があって、下手(したて)に出ざるを得ない、なんとも肩の凝る部署なのである。
そして私の役割は、そんなみなさんを温かく見守ることである。
ーーーーー日々つれづれと続く
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