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障害者雇用で1ヶ月④ 在宅勤務

在宅勤務が始まったのは、働き始めて3週間目のことだった。業務もまだよちよち歩きの頃である。パソコンの画面を見つめては来ないだろうメールを待ち続け、途方に暮れて部内共有のフォルダを片っ端から開いたり(これはむしろ業務内容を把握するために勧められていた立派な「業務」だった)、パソコン画面のスリープ状態のための写真をダウンロードしたり、部が所有しているビジネス本や自己啓発本を持って帰って熟読したりして楽しんでいた。

しかし正直なところ在宅勤務は困った。今の会社での障害者雇用業務は、社内にいないとできないものが多い。コピー機に用紙を補充したくとも紙もコピー機もない。社内便は社内だから話が成立する。シュレッダーの掃除も不可能だ。

週に2回の在宅勤務は今後もこうなるのかと考えると気分が萎えた。

一度ウェブ会議に出席することになった。そのときはいよいよ来たかとテンションが上がり、カメラに映るからと緊張して化粧までしたのだが、蓋を開けてみるとカメラをオンにする人は誰もおらず、なんと気楽な職場なのだろうと思った。同時に優先順位がしっかりしていて(大事なのは服装とかじゃなくて業務なのだ)、これは信頼できる会社だなと安心した。

安否確認のため在宅勤務者は昼休み12時きっかりに人事部社員にメールを一斉送信することになっている。タイトルに名前と「テレワーク中の安否確認」と打って送るだけなのだが、特にこれといって他にやり取りもしていなかったから、このメールは私にとって存在意義を示すことができる唯一の機会だった。

在宅勤務は週2回ほどである。当初はコロナ禍によるものだったそうだが、近年の社会的潮流となっているテレワークの波を受けて始めたのもあるのだという。だからコロナ禍が落ち着いても引き続き在宅勤務は継続するとのことだった。

勤務開始前は在宅勤務が100%いいと信じていた。私はてんかん患者ということで社内で発作が起こったら社員さんたちに心配かけるだろうし、発作後には体を休めたほうがよい。大勢の人々のなかに入ると職務に集中できるかも自信がない。

だから就労移行支援事業所でも在宅がいい!とうったえかけていたし、今回在宅があると分かって心の底から安心した。実際に業務が降ってくれば静かに落ち着いて取り掛かることができる。出社時の何倍ものスピードでパソコン作業が片付く。

しかしぶっちゃけ、私にとっては在宅勤務は週2くらいがちょうどいいことが分かった。

業務がオフィス内でしか成立しないことが多いのもあるのだが、相談したいことをメールにすると文面が長くなったりもするので話しかけたほうが早かったりもする。


ほどよく在宅で、ほどよく出社がいいなと思ったのが、ここ1カ月で分かったことである。


ーーー続く

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