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あの頃初めて手にした小説


「頑張ったご褒美に何がほしい?」


「本がいい!」

と言っていたあの頃から、早、20数年。私も自分のお金で本が買えるようになりまして。

自分で言うのもなんですが、お菓子でもなく、おもちゃでもなく、本がほしい子どもなんてかわいいですね。ここら辺で一度、自分で自分を褒めておきます。

お腹の中にいる時から、母は毎日読み聞かせをしてくれていたようで、そのおかげか、物心がついた頃には、すでに私は本好きで、いつも本に囲まれていました。本屋さんに行くのが何よりも楽しみで、(もう潰れてしまったけれど)3歳の頃から通っていた本屋さんの景色は今でも覚えています。

本屋さんでたくさんの本に触れている時間は、とても幸せで、つい時間を忘れて、1人の世界にのめり込んでしまいます。そして、つい、自分の持ち物を陳列棚に置きっぱなしにしてしまうのです。
突然ですが、皆様は小さい頃、子どもに子どもの財布を盗まれたことがありますか?私はあります。
3〜4歳頃のこと。本屋の中のキッズエリアで絵本に夢中になっていたら、お気に入りの財布を盗まれました。中にはカチャカチャと音がする硬貨や、少し小さくなったボール紙の夏目漱石さんたちがたくさんいらっしゃったのでしょう。完全に私の不注意なのですが、めちゃくちゃショックを受けていたそうです。
ちなみに、その数年後にもう一度本屋さんで財布を置きっぱなしにし、盗まれます。学習しませんね。さすがに今は用心深い大人になりましたが。

導入(ほとんど関係ない話?)がびっくりするくらい長くなりましたが、ここからタイトルにもある「初めて手にした小説」についてです。

私には、保育園からずっと仲が良かった本好きの親友がいました。その子は「ハリーポッター」シリーズとか、ミステリー系、ホラー系の長編小説を小学生の時から普通に読む子で、「あんな分厚い本を読めてかっこいいなあ」と、小学生の私は密かに憧れていたのです。
しかし、私も親友みたいに、さらっと分厚い本を読みたいなあと思いつつも、なかなか勇気が出ず、いつも通り薄めの本を読む毎日でした。

薄々気付かれているかもしれませんが、私はめちゃくちゃ“ええ格好しい”です。お恥ずかしながら。とりあえず「こんな分厚い本読んでるん?すごい!」とか「賢そう!」とか思われたかったわけです。

そして、そのまま中学生へ進級するのですが、

なんと、ここで、全私にチャンス到来。
来ました「朝読」の時間。
ついに私と小説(主に文庫本)が出会います。
朝読の時間に、分厚い本読んじゃえば、親友みたいにかっこよくなれるんじゃ?という不純な動機で、私は本屋さんへ向かいました。

とにかく分厚くて、読んでるとかっこよく見える本、そしてある程度みんなが知っているような作者、、と文庫本コーナーで目を皿にして探す私。

ついに「これや!!!!」というものに出会いました。

東野圭吾「ダイイング・アイ」

完全にジャケ買いというか不純な動機買い?
あらすじも見ず、ただ「分厚い」「スタイリッシュな装丁」「作者が有名」この三拍子が見事に揃ったのがこの作品でした。
私が初めて自分のお金で手にした小説(文庫本)です。とても失礼な選び方ですいません。
文庫本デビューが東野圭吾って、結構イキってる中学生ですよね。私はそう思います。

結論からいうと、めちゃくちゃ大人なミステリーで、中学生の私には刺激が強かったです。でも、おもしろかったですし、インパクトが強すぎたせいか、何年経った今でも話の内容は結構覚えてます。出てきたカクテルの名前は「ビトウィーン ザ シーツ」で、バーの名前は「茗荷」だったように思います。中学生が触れる単語ではないですね。

正直読み始めたときは、朝読の時間に読むもんちゃうわ、、間違えたわ、、と思ったのですが、その時に東野圭吾さんの王道ミステリーを読んだことによって、小説のおもしろさを体感することができました。その後も、薄い本から分厚い本まで幅広く読めるようになり、大人になった今も、小説の沼にどっぷりと浸かり続けています。

かなり動機は不純でしたが、あの時、あの某レンタルビデオショップの本コーナーで、東野圭吾さんを手に取った私、よくやった!中学生時代は、基本的に黒歴史なのですが、この小説に関しては、あの頃の私が“ええ格好しい”でよかったと思っています。

ちなみに、私が分厚い本を読むことに憧れを持つきっかけとなった親友とは、もう疎遠になってしまいましたが、きっとどこかで元気にしているのだと思います。あの子のことだから、きっと読書は続けているはず。
こうして、初めて手にした小説を思い出すとともに、またあの頃のように、おすすめの本を紹介し合いたいなと、親友に思いを馳せるのでした。


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