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映画の話。『PERFECT DAYS』

数時間前、とんでもない映画をみました。
冒頭から引き込まれる世界観と淡々と進んでいく映像に衝撃を受けました。

見終わったあとのこの感情を忘れたくない!
その一心で眠い目を擦りながら、今この文字を入力しております。

今回は映画の話。
役所広司さんが主演を務める『PERFECT DAYS』という映画です。
公開は2023年12月。去年から公開されていたんですね。私はこの作品を最近知りました。友達から誘われて、予告を見て気になったので一緒に観に行くことに。

まぁとりあえず、何から話そうって感じなんですけど、映画観終わった瞬間大きく息を吸い込みました。なんだか言葉にするのが難しそうだけど絶対に忘れたくない感情の揺らぎがあって、友達に興奮しながら「すごかった…とにかくとりあえず、すごすぎたよね?」と。そんな安直な感想しか出てこない自分が情けないですが、この感想を言語化するのに時間がかかることが一瞬でわかりました。
アウターを着ながら、飲み終わったドリンクとポテトをもぞもぞ持って、お互いがお互いにこの感想を言い合いたいのだけど、自分の中でも感情がまとまってないことまで伝わりあったので、「とにかくどこかに入ってゆっくり話そう」ということで意見がまとまりました。

そのまま、私たちは渋谷のひっそりとしたお洒落カフェへ。
やっと感情も落ち着いてきて、自分の気持ちをまとまってないながらに話すことができました。

※これから先は私があの映画を見ての感想です。あくまで個人の意見であること、またネタバレを含む表現があります。ご了承ください。

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とんでもない衝撃作品だった。
始まりから、最後まで、瞬きをする瞬間すら惜しいと思うくらい一瞬たりとも映像を見逃したくない、そんな作品。
上映中はこの作品にだけ集中したくて、頭の中にある雑念をなん度も追い払った。どうしてこんなに淡々とした言葉の少ない映像なのに飽きずに観られるのか考えた時、きっと親しみのある土地で、人間一度は思ったことある綺麗な風景を平山の視点で映し出しているからだと思った。
「平山の日常」この作品を説明しようとするとこの一言に限るのだけど、ドキュメンタリーの様な、生活音がメインで会話は最小限、そんな日常を映し出している作品。それなのに、これほどずっと観ていたいと思う作品はないんじゃないか。起承転結などはなくていい、表現の方法とか見せ方とかそういうの次第で人の感情を動かす作品は生み出せるのだ、などと映画としての価値観を改めて考えさせられた。この内容でここまで人の心にアプローチできる作品なのがすごい、むしろこの内容だからこんなにも心を動かされるのかもしれない。

ふと空を見上げたときの木漏れ日、銭湯の曇り窓ガラスに入る光、誰もが一度は観たことのある光景で、ささやかな日常に思えるけど、その日常を切り取り幸せだという気持ちに変換できる、彼の生き方は、本当にかっこいい。というか人間それだけでいいのだとも思わされた。
彼のこの簡素化された日常でこれだけ自分の幸せを見つけることができたのでれば、私が過ごしている日常のほとんどはおまけに過ぎなくて、ただのオプションなのかもしれない。
人間生きる上で自分にとっての世界があればいい、誰かの評価や周りを目を気にしなくていい、自分の中だけでの生活を見つければいい。

こういう”他人からの目”にも着目された作品なのではないかとも思う。
一緒に観た友達は、「トイレの清掃員を題材にしており、怪しい光で植物を育てる平山の姿を見て、何かやばいやつなのではないか、それがどこかであらわになる瞬間があるのではないかと映画を見終わるまで思ってしまったけど、きっとトイレの清掃員だからという理由で勝手に人のことを先入観だけで決めつけるのは違うということを伝えているのではないか(自分もそう思ってしまった内の一人であるが)。トイレの清掃員をやってるから、“変な人・何か過去にあった人”なんて誰が決めたんだ、普通の人でも清掃員になってもいいのに。そういうことだろうな。」と言っていた。

確かにそうだとも思った。迷子の男の子を平山が助けた時、お母さんは子供を見つけるなり、平山が握っていた手を拭いていたし、明らかに妹と社会的地位の差があり「本当にトイレの清掃員をやっているの?」という発言、些細な所にそういう小さな引っ掛かりが散りばめられていた気がする。
そういう人に対する先入観とか人間のあんまりよくない価値観とか、そういう部分をメインで分かりやすく表現しているわけではないのだけれど、作品を全て見終わった後にそういう意味が込められていたのかなぁと考えさせられたし、その人のことよく知りもしないのに、勝手に決めつけるのは違うよなと改めて思わされた。

また、劇中にカセットで流れる音楽も最高で。
お恥ずかしながら、ほとんど初めて聞くものばかりだったけど、どの曲も平山の生活を支える“音”としての役目を全うしていた。私もイヤホンをして散歩すると、まるで自分が主人公の世界になった気分になるとがある。そういうのと同じ感じなのかなぁとか思ったり。

自分の好きな曲、毎週新しいものを発掘する古本、汚れを洗い流す一番風呂の銭湯と、ちょっとのお酒、そういう自分の好きなものでルーティン化された世界は自分にとっての最小限で最大限の幸せなのだと思わされる。
でも、淡々とした日々を過ごすからと言って、機械的で感情のない人では
なく、代わりに仕事を急に引き受けたときはちゃんと無理だと怒るし、好きな相手が他の異性と抱き合っているところを見たら逃げ出して酒とタバコに頼るし、妹と別れた後は泣くし、平山には人間らしい部分もあるのが面白かった、というか人間味があって良かった。
その寡黙で真面目な平山の表情から読み取れる「人間」の部分がこの作品に深みと温かさと味を出しているとも思わされる。
セリフ量が少ないのに、表情だけであそこまで表現させるのは、本当に役所さんだからだと思う。本当に日本を代表する役者だなと強く思った。

あ〜、あとそれから、見終わった後に、YouTubeに出ていた監督のインタビューをみたけど、自分の中でモヤモヤしていた部分が腑に落ちた気がした。
平山の過去について、劇中では明確に明かされることはなかったけど、“僧侶”のような人をイメージしていたのか…と納得。監督の中で想像していた人物をあそこまで表現できるのは完全に監督の腕なのだけど、あのインタビューをみたら映画がもっと理解できると思った。
でも、個人的には映画を見る前にあのインタビューをみなくて良かったなと思う。あそこまで説明されないほうが初見の映像を先入観なく楽した気がしたから。
監督がインタビュー内で言っていた「平山は、みんなの中にいる」という言葉。とっても納得がいった反面、はっとさせられた。
平山、いる。私の中にもいる。絶対にいる。
そういう部分を自分がどう受け止めて行動できるか。そういうことなのだと思う。
何をしていても、何が幸せで何が楽しいのか、今の自分は本当に満たされているのか、そういうのが自分でもわからなくなる時がある。平山はそういう自分の感情を超えた姿。私たち人間の極地?そんな気がした。

私も平山みたいに生きれたらいいのにな。

映画ポスターにも書かれていた。見終わった人はみんなこう言うんじゃないか?そういう意味で「こんなふうに生きていけたなら」と書かれているのかなぁ…。
あーーーーすごかった。

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ここまで長々と話したけど、とにかく私の感情にドン刺さりで、とんでもなく最高だったってことだけ伝わってれば嬉しいです。
映画を見てサラッと感想を共有することはあるのだけど、こんなにもガッツリ人と感想を共有してディベートしたのは初めてだったからその熱量でnote書いちゃいました。
あーーー感情を言葉にできて良かった。(出来てないところもたくさんあるけど)

こんな長いレビューを読んでくれたそこのあなたには、明日小さな幸せが訪れますように。(笑)
それではこの辺で、おやすみなさい★

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