授業第3回(10月12日)の受講生の皆さんからのフィードバックから

第3回の授業が終わりました。今回は「知覚」の第1回目。まずは信号検出理論(Signal Detection Theory)の枠組みと反応バイアスについて学びました。今日はどちらかというと理屈の話が多かったので、ピンときてもらえたかどうか心配なのですが、授業フィードバックを見ていきましょう。

あ、その前に。コメントの中に自分の名前や学籍番号を書いてくれる人がいますが、T2SCHOLAがきちんと記録しますので必要ありません。(第1回目でそれを記録し忘れたのは私の設定ミスです。ごめんなさい。ただ、もう大丈夫です。)


  • 信号検出の仕組みを数式に落とし込んで考えられるのは非常に興味深い。

  • リスキーになるか保守的になるかという今まで感覚的に判断してきたことを理論的に理解ができてとても面白かった。

  • 実際に現場で起きそうなことがある程度正確に数式に表されることに感動しました。

  • 聴力検査をするときの人間の判断の正誤を確率分布で表したのがとても印象的だった。

  • 見間違いやバイアスなど、一見数学とは関係のないような分野でも数式記号を使ってすっきりまとめることができるのはとても興味深いと思いました。

  • 理論に対しての例がわかりやすくて、スムーズに理解することができました。

  • SDTを学んだことで、かつてブラックボックスだった部分が徐々に見えてきたような気がします。

  • 信号検出理論とその応用例について理解できた

  • 今回は少し複雑になってきたように思ったが数学的、図形的な説明は分かりやすかった。反応バイアスと損益の話は麻雀などのゲームで思い当たるところがあった。

  • 信号を確認して、それが正しいのかどうかを確率で表現しているところが面白かったです。

  • 普段の意思決定を数学的に表すことができていて興味深かった。

  • 今回の授業は信号検出理論について学んだ。  1、2Qで確率統計をやり、確率変数を学習したため、今回の授業は理解しやすいように感じた。特に興味深かった点として、P(s)が大きくなるとバイアスβが1を下回りリスキーとなり、P(s)が小さくなるとバイアスβが1を上回り保守的となることが、患者のアンケートで顕著に現れていておもしろいと思った。

  • 知覚というものについて、ここまで具体的に学んだことは無かったのでとても面白かったです。また信号検出についてバイアスを数式で表現する所に驚きました。

  • 人が何かを識別するモデルを作成するにあたって、単に閾値を用いるのではなく、確率を取り入れることで、より再現度の高いモデルを作れることがわかった。

  • 今回は知覚について学んだ。複雑な脳のシステムを数学のモデルで考えるのはおもろいと思いました。

  • 人間の感覚は電気信号で、それを脳が処理しているなどのことは知っていたが、ノイズについて考えたことがあまりなかったので新しい発見になりました。

  • 知覚のことについて学んで、確率分布のグラフでどこに判定の基準を持ってくると良いのかと言うことについて考える考え方は面白いと感じた。

  • 反応性バイアスを確率密度と絡めることで、具体的な1つの最適なβを定められるところが面白かった。

今回は信号検出理論の枠組みと反応バイアスについて勉強しました。人混みの中から探したい人の顔を見つけるという日常的な状況をおもいっきり単純化して、ノイズの中から信号を識別するという枠組みにし、確率変数を使って説明しました。あの問題設定から数式が出てきたことに驚いていた人が多かったように思います。
ただ授業でも説明しましたしこの下でも触れますが、人間に適用した場合、厳密に数値を計算して等号が成り立つかどうかみたいなことはあまり厳密に考えても仕方のないこと。それよりもこの数式が表していることはどんな定性的な関係(e.g. どちらが大きくなったらもう一方は大きくなるか小さくなるか)なのかを理解してくれれば十分だと思います。

  • 確率の授業で発症率と誤診率を使った例題があったことを思い出し、今回の内容ともリンクしていたので、様々な分野が関わり合っていて奥深いと感じた。

  • 統計の授業でもやった2つの過誤に関するの話について、確率密度関数を絡めてより理解を深めることができた。

  • 機械学習モデルの予測性能評価において正解率、再現度、適合率といった評価方法があるが、これを信号検出理論にも適用できるのではないかと思った。

  • missやfalse alarmの話が確率を思い出しておもしろかったです。

検出力の統計学的な枠組みはさまざまな分野で共有していますので、同じ枠組みが出てきても不思議ではありません。「心理学でも出てきた」というあたりが妥当かと。

  • 信号とノイズの関係について、具体例を交えながら理解することができました。後半の反応バイアスの話からは急に数学っぽくなって難しかったのできちんと復習しようと思います。ミスとフォールスアラームのどっちなのかが難しかったです。感覚器から届く信号と実際の信号の強さのグラフで基準の線の位置と空耳の話が面白かったです。耳鳴りの話で確率の話が出てきたことに驚きました。

  • 確率の講義を受けてないので、理解するのに、少し頭を使う必要があった      理解できたのかは、自分でもわかっていません。 友達と議論したいと思います。ただ、あの4つの項目で評価されているという、構造を知ることができたのは非常に有意義でした。

  • 条件付き確率を使った議論のあたりが、行間を自分でうまく埋められなかったので、理解をするために、別途参考資料等を載せて欲しいです

  • 確率変数の話あたりから理解するのが難しかった。なぜ横軸があの時点で保守的になるのか、リスキーになるのかがわからなかった。またそれによりβが上がるのか下がるのかの式の部分の理解が追い付かなかった。

  • 本日の授業では、信号検出理論について医者の風邪薬の処方の話や、鉄の高炉を止める際のリスクに伴う、反応バイアスの変化について態勢的に学ぶことができた。一方、確率密度関数を用いた、より厳密な話については難しかったので完全に理解することはできなかったのですが、その後の反応バイアスβの理解がわかりやすくなるきっかけとなり、少し理解がしやすくなったと感じました。

確率密度関数が出てきてしまったので、確率論を勉強していない人にはちょっと難しかったかもしれません。いきなり「ここからプラス無限大まで積分」してしまってごめんなさい。この授業も他大学の人を含め色々なバックグラウンドを持つ学生さんに履修してもらうようになったので(今年は履修申告者70名を超えました)少し考えます。

  • 今回、主に信号検出理論について学んだ。フレームマークのように、実際の信号と観測者の反応としての信号の関係性が示されていたが、これらが日常でよく見る光景に当てはまることができることを知り、面白いなと思った。また、これらを数式で表したりもしていたが、今回の講義を聞いて、リスクを背負う選択をするときの損益を考える際にこの考え方は使えそうだと思ったが、これは実際に使われているのか気になった。

  • 高炉の実例を用いた反応バイアスの変化がわかりやすく、私たちの判断の決定に実際にバイアスが影響してるのを理解できてとても面白かった。また最後に紹介された人間のバイアスのデータが新鮮だった。

  • 確率変数が出てきたあたりから難しい内容に感じたが、かろうじで理解出来た。しかし、βとvalueCostの関係を考えるところで、それぞれのvaluecostをあげた時にβの値がどうなるかを考えるのがよく分からなかった。

  • 高炉の例で出ていた、高炉の故障と反応バイアスの話は、開けるコストは計算可能だが、故障があった際の被害の程度は想定しにくいこともリスキーになりやすい要因としてあるのではないかと思った。

先ほど(+授業中にも)触れましたが、厳密な損益(VやC)を求めて最適な反応バイアスβoptを算出することにはあまり意味はないと思います。むしろVやCがそれぞれ大きい時、小さい時に人間の反応バイアスがどのような戦略をとる傾向にあるのか、という定性的な関係を示してくれることに意義があると思います。

  • 障害を検知し、本当に障害があったとき褒美を与え、本当はなかったときに罰を与えることをしたとき。褒美や罰の量によって検知者が保守的になるかリスキーになるかが変わるということを知り、面白いと思った。またどこに検知の基準を置くべきかも、確率密度を用いることで求めることが出来るということを知り驚いた。

一瞬「第2回でやった強化学習の話と混同しているのかな?」と思ってしまいました。損益の V (利益)= 「褒美」、C (損失)= 「罰」ですね。あー、よかった。確かに授業中にそのような言葉を使ってしまったかもしれませんが、あの話はもともとは「見逃したらどのくらいの損失になる」「発見することによってどのくらいの利益」になるという経済的な損益 (pay-off)からきています。しかし観測者にとっての「損益」として、ご褒美や損失に置き換えても、確かに成り立つかもしれませんね。

  • シグナルがあるか判断する基準って自分で簡単にいじれるものなのでしょうか。人混みの中で人を見つけるならなんとなく理解できますが。

  • ノイズがある中で目的となる信号を見つけるのはミスとフォールスアラームの配分の問題でだということを学んだ。  日常によくあるシチュエーションについて、こんな研究が存在していることが面白いと思った。

  • 直線だと判断が難しいから確率分布にしたという説明はとても面白かったです。保守的とリスキーの時を例に例えて説明されていた点がとてもわかりやすかったです。

反応バイアスは、人間が自分の意思で(戦略的に)選択・調整できるものとされています。それが次回勉強する感度との大きな違いです。
ただ実際には「自分で選んでいるつもりになっている」バイアスもいろいろなことに影響されている、という話が次回の後半に出てきます。

  • 普段の自分の判断が無意識であるのだと思った。機械学習の話を聞いているような感覚だった。 人間の意思決定プロセスは思っているよりもうまくできているのだと思った一方、人間のクセもあることが分かった。

  • 人間が確率を見誤るのは「創造的な反応をしたがるから」とおっしゃっていましたが、「極端な結果(0%か100%か)に自信を持てないから」ではないのでしょうか?

  • 最後の心理的な弱さの部分について心当たりしかなく、強く実感できた。また、判断を数値化すると言うのとても面白かったが、想像通りやはり複雑であり、人間の思考というのは一筋縄ではやはりいかないなと思った。

  • 確かにほぼ当たるゲームに対して慎重になりすぎたりすると納得した

  • 信号検出理論SDTのフレームワークにおけるHit,CR,Miss,FAがどういう意味なのか理解することができた。また、今日の授業で最も興味深いと感じたのは人間の鈍いβが確率を内側に見がちであるということである。自分の経験を振り返った時にゲームのガチャで確率1%から3%にあがったときすごい出やすくなっただろうと感じてしまうが実際には思っているほどではないということを思い出した。人間の本能は理論だけでは理解できないことがわかった。

授業の最後に(駆け足になってしまいましたが)、実際の人間は必ずしも理論的に最適な反応バイアスβを採択していない(Sluggish β)ことを紹介しました。この授業は基本的に古典的な(20世紀の)認知主義に立脚していますが、折に触れてそこからに乖離、特に人間が必ずしも合理的な処理を行なっていないことを紹介していきます。それが今日の行動経済学や、私の専門である感情の分野につながっていきます。

  • グラフの話が難しかったが、人間のこうした感覚を確率密度関数を用いることでグラフ化できるところが面白かった。加えて実際カクカクな信号が、感覚器の受け取る信号としてはギザギザになっているのも興味深かった。

実際の感覚神経の信号(電位)を測定した例を次回の授業に持っていきますね。

  • 意思決定の場面で、信号検出理論を用いて数学的に考えれば合理的に意思決定を行えると思う。

うーん、信号検出理論は知覚、すなわちインプットとなる外界からの信号の中に何を見つけることができるか、だけに関係する理論です。意思決定はもう少しいろいろなことが関係してきます。詳しくは第9回の「意思決定」の回で触れますね。

  • 信号検出理論と同じようなことが、レーダーやレントゲン検査などでも行われていて、ノイズが何か、正しい対象が何かを整理することでどうすれば精度を上げることができるかがわかりやすくなると思った。信号が変わるときのバイアスの変化の仕方についても理解できた。

信号検出理論は人間だけのための理論ではありません。ノイズの中から信号を検出するという枠組みがあてはまる様々なシステムに適用されます。次回の授業ではROCチャートをつかって検査方法の比較をする、といった産業上の応用例も紹介します。

  • 今回、ノイズは見つける対象の意図とは関係なく、検知を妨げるものとして扱われることが多かったが、見つける対象が意図的に検知を妨害した場合もそれはノイズの定義に当てはまるのかお伺いしたいです。(具体的には、飛行機を検知する場合の雲は飛行機の意図とは関係なく発生し、ノイズの例であった。しかし、戦争において敵機がレーダーに見つからない対策をした場合、それはノイズと言えるのか。という質問です。)

具体的にどのような妨害をするかによりますが、例えば古典的な例で言えば「煙幕をはる」などはやはり信号検出理論の枠組みに入ると思います。

  • 世の中のすべての情報にノイズが含まれていることがわかり、信号検出理論でノイズを排出することができることを学んだ

うーん、それは言い過ぎかな?(ほとんど)ノイズのない情報もあると思うし(少なくとも理論的には)、信号検出理論はノイズを「排出」するものでもありません。むしろ「どんなに頑張ってもノイズと信号を綺麗により分けることはできないよね」という理論だと理解してください。

  • 二つの確率分布は正規分布である必要がありますか?

いいえ。というよりも、人間を対象にする場合に、信号とノイズのそれぞれの確率密度関数を正確にモデル化することは現実的ではありません。授業で例を出した聴覚信号だって、人間ひとりひとり分布が違うでしょう。心理学の場合はそこをあまり厳密にやっても仕方ないので、単純化してあのようにモデル化して、そこからわかる定性的な関係を理解しよう、という立場であると理解してください。

  • 信号検出理論では被験者のバイアスを検出できるなどのメリットがあると思いますが、逆にデメリットはありますか?

うーん。信号検出理論は、現実に起こっていることを少しでも理解するための枠組み、ですので、デメリットというのは特に無いのでは… 強いて言えば「それだけではわからないこともある(きちんと捉えきれない範囲もある)」ということでしょうか。

  • 信号が起こる確率によって反応バイアスに違いが出て、保守的になったりリスキーになったりするという説明を病気を例に出して説明していたので、すごく分かりやすかった。冒頭で仰っていたように、日常生活に落とし込んで考えられる学問なのですごく身近に考えられていいなと思いました。

  • 人間が保守的な行動を取るかリスキーな行動をとるかなど、私たちの普段生活の行動選択が確率で表されているのは面白かった。

  • 前回の授業では認知プロセスを学んだが、今回は、その中の知覚に焦点を当てていて、理解が非常に深まった。友達の顔の判別はこれまで無意識的に行なってきたが、どのようなプロセスを経て脳内で判別していたのかを知ることができとても面白かった。信号の検出にも保守的な部分とリスキーな部分があるのが、面白いなと思った。脳はそれを毎日自動的に処理しているのはすごいと感じた。

  • 人混みの中で友達の顔を認知できる理屈がわかって面白かった

そうですね。信号検出理論に限らず、特に認知主義の心理学は日頃私たちが考えたり行動したりする過程をモデル化しようとするものですが、私たちの日常に「心当たり」があっても全く不思議ではありません。むしろ「あ、これって授業で出てきたあれか!」と気づきが多いほど、理解も進むと思いますし、勉強も楽しくなってくると思います。

  • 人間にとって知覚するということがどれだけ生きていく上で大事なことがわかった。その中で以下にノイズを消していくかも重要であることがわかった。そして知覚の衰えが認知症に繋がるのだとも思った。

認知症は知覚の衰えだけではなく、もっと様々な、そして複雑な症状です。いろいろな原因で脳細胞が死滅したり機能が衰えたりすることの結果として生じる様々な症状が含まれます。知覚だけでは説明できませんので注意してください。

  • 横断歩道の例で、認知プロセスのメカニズムにつあてよく理解できたとともに、AIによる認証システムがその仕組みとして近いと感じた。AIが容疑者を追跡するなどといった時の利用方法から何か人間も着想を得ることができないかなとふと疑問に思った。一方で3ヶ月ほど前にもAIによる誤認逮捕があったため、認証AIシステムの課題点とその対策についても少し興味を持った。

うーん、信号検出理論はかなり単純化しているので、今の機械学習の方がずっと複雑な信号処理をしていると思うのですが.. 機械学習の判別信号について閾値を当てはめればこの枠組みにならないこともないと思いますが、この場合のノイズってなんだろう?

  • また、航空局のレーダーはどのくらいの距離まで検出することが可能なのか、目的とする信号までの距離によってレーダーの精度は変わってくるのか疑問に感じました。

レーダーは一般に利用する電波の周波数によって到達距離や精度が変わってくるようです。また地球は丸いので設置する高さによっても到達距離が違うのだとか。私は具体的な数字は知りませんが、Wikipedia に原理が詳しく書いてありました。興味があったら読んで見てください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/レーダー

  • 人混みの中でなぜ友達の顔を見つけられることができるのか?という、当たり前のようで、よくよく考 えると何故かわからない問いに対し、知覚からの信号を学ぶことで、理解することができた。これに似た問として、自分の名前が呼ばれると、どれだけ騒がしい状況でも、なぜ反応することができるのか知りたいと思った。

この話は、第5回の注意の回で触れます。次の次の回ですね。お楽しみに。

  • 次回の実験が楽しみだ。     

次回はミニ実験ありません。次の次の回(第5回)に一つ、ミニ実験を用意しています。そこを楽しみにしてください。

  • 信号検出理論を理解し、次回から始まる五感についての講義をしっかり聞いていきたい。

次回は五感に関する話もしません。というか、感覚については第2回で話したので、基本的にこの授業の中ではもう出てきませんよ、と今回の授業で言ったはずなのですが…(どこからこういう誤情報が紛れ込んだ?)

  • ニューロンが化学物質を放出し周辺の神経細胞で電気信号が生み出され、その量が一定以上になって意識的、無意識的な思考に変換される工程のことを認知プロセスだと解釈しました。

えーっと、今回の授業ではこのような話はしていません。電気信号と閾値の話はしましたが、「思考」という概念は用いていません。また今回扱ったのは知覚の段階だけですので、認知プロセス(全体)の話もしていません。

  • 今回の講義で信号検出理論の考え方の部分については理解ができましたが、この理論が工業のどのような部分で応用されるのか想像がつかなかったため、次回の講義を楽しみに感じました。

  • 工場でnoiseは正常品で、signalは不良品のは印象的でした。

はい。というわけで次回は知覚の後半2回目です。信号検出理論のもう一つ重要な概念である感度(sensitivity)を話と、産業上の応用(ROC、visilance task)について紹介します。不良品を見つける、という品質検査の例にも触れます。お楽しみに。

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