【詩】祈るものたちに残された氷の幻想

彼らに遺された幻想は氷のように美しい
しかし、氷のように確固たる存在ではない
人々の間にあっては氷など、
時には無いものと言われるだろう
春になれば溶けて
夏になれば跡形もなく消えてしまう
輝いて見える時だけ美しく、
輪郭さえ光に透き通り、見る者の目には時折
その本来の姿さえ見えないのに
それでも彼らに唯一遺された氷の星
暗い夜に白く瞬く祈りの星
祈り続けた者にだけ遺された氷の幻想
その他に何も与えられなかった国で

私たちはその儚い氷の幻想に縋り己を憐れむ
氷の刃が自らを傷つけるときも、
故に喜んでそれを受け入れるだろう

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