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ある日のすみっこ

 銀座でエル・ファニング主演の「メアリーの総て」を見た。私はこういう歴史映画好きなんだけど、18才でフランケンシュタインを描いた女性の、爆発的な姿を描くのはむずかしい。お洋服がすてきだし、頑張ってたとは思う。サウジアラビア出身の女性監督。客観性ということなのか、イギリスは移民系の監督が歴史ものをを描く伝統があるのかな。「エリザベス」もそうで、インド系の監督だった。カズオ・イシグロもだけど、比較することで相手を深く知りたいということかもしれない。

 時間待ちに本屋の教文館に行く。階段の踊り場にサイン本を売っている。このまえ読んだ川本三郎さんの最新のエッセイ「映画の中にあるごとく」があった。ちょっとほしかったけど、そこまででは。で、図書館でやはり時間待ちをしていたらあったのでうれしかった。

 読んでみると、前田敦子のふつうがいい、山下敦弘監督の「もらとりあむタマ子」と呉美保監督の「みんないい子」が同じにお気に入りだった。特に後者は、単純な社会ものではないと感じてたので、きちんと、それが言葉にされていてうれしい。悪役をしがちな高良健吾が、善意の人を演じているのが不器用さに通じてて、説得力があった。その裏返しとして「万引き家族」で善意でもって、少年を家族からひきはなす公務員の役につながったのだと思う。

 見てみたいと思った映画があった。「おみおくりの作法」ビスコンティの姪の息子で「フルモンティ」のプロデューサー、パゾリーニ監督の初映画らしい。パゾリーニさんって、あの名監督と同じ名字だ。これは映画を撮るの勇気がいる。だから、ちょっとプライベートな映画。見てみると、ずっと、身寄りのない人の死後の世話をしてきた公務員の話だ。エッセイのなかでは、吉本ばななさんの短編「田所さん」が引用されていた。ブログをみていて、好きだと言って人をフォローしたぐらい好きだ。

 映画は、亡くなった人の遺族として美しい女性が出てくるあたりでぐっと話が広がっていく。「ダウントンアビー」でベイツさんの奥さんの役の人が演じている。犬のシェルターの職員でやさしい。そこで、淡いロマンスがあかんじられる。あっという結末なので、ちょっと驚く。しかし、こういう、無垢ななにかが、世の中を支えてるとしみじみ感じる映画だ。そういえば、もう、クリスマスなんだなっと銀座の風景を思い出した。

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