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Fujitaを見に秋田に行く

 藤田嗣治の「秋田の行事」を見に行きたいと思っていました。でもですね、ただ、大きな絵を一枚見に行くのですよ。ずっと迷ってましたが、行きました。秋田はもちろん初めてだったのですが、まず、印象的だったのは、県立美術館前の掘のはすの清らかさでした。そのなかで「秋田の行事」がありました。建物の大きな窓と池は、その掘のはすを意識しているらしく、そこからみえるはすのピンクとお城が美しかったです。

 絵は、マンネリ期の絵で、イマイチ、ピンとこなかったのですが、大作であり、独特の藤田嗣治の色調で、見てよかったです。着物とかも細密で力作です。パリ時代とちがい、華やかな色調で赤が強調されています。一番目にひくのは秋田のぼんてんまつりのウゴウゴとした生命感の描写かな。ずばり、生殖と豊穣の願いが伝わってきます。ほかの藤田嗣治は、神戸に行ってるらしく、少し残念でした。一緒に系統だって見たかったです。私が藤田嗣治にこだわるのは、彼が究極の商業作家だと感じているからです。有名な戦争画といえども、求められることを書く。絵にどこか嘘くさいというか、からっぽさがある。しかし、それに答えるということに誠がある。なんだか、北野武の映画「アキレスと亀」を思い出させるものがあるのです。アートの一つの本心を感じるのです。

 一緒に「異界をひらく」として、現代美術最先端、山口晃、松井冬子とかの展示が見れました。亡くなったひとですが、石田徹也もいくつかありました。彼の作品には、興味があったのですが、テレビの山田吾郎がBSでやっている「ぶらぶら美術館」で見てしまい、あざといかなと思って、展覧会を見そびれてしまったのです。学校を暗示した絵があり、今の社会の生きづらさ、ひきこもりをうながすさまが、すでに現れていて胸をつかれました。それゆえに陳腐さを感じて避けていたのですが、模型電車のジオラマの人工のみどりにのみこまれる自画像が緑が美しくて不気味でした。近所の神奈川県平塚美術館のコレクションなんですね。近くにあるのに、近寄りがたかったんだな。

 お向かいの秋田藩佐竹家の城跡、千秋公園に行ってみました。鉄筋の再現の櫓があります。

 展示によると、佐竹家は、あの甲斐の武田家の親戚で源氏だそうです。路の上からの秋田の町です。高い建物がすくなく、モザイクのような住宅の多い町並みです。海が少し見えますね。鳥海山と男鹿半島にはさまれ、海のみちがいちばん便利そうです。町はきちんとして清潔感があるけど、閉塞感もあります。後三年の役のあともちかくの横手市にあるそうで、人に征服され管理を強く感じる土地なのだと思います。というか、人と自然との相克が底に感じられるのです。楢と杉の針葉樹が多く、そのなかに田んぼしかない、独自の風景です。そして、すぐそばに暴力的な奥深い森がせまっています。この風土が見たかったのだと思いました。秋田の疎開時代、藤田嗣治は何を感じていたか肌で知りたかったです。次は角館にむかいました。

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