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私が好きな詩3

大江山 いく野の道の 遠ければ
まだふみも見ず 天橋立
小式部内侍

年下のふたりの親王の恋愛を描いた「和泉式部日記」で有名な和泉式部の娘である小式部内侍の和歌。これも百人一首のひとつ。

心に残っているのは、昔、まんが日本昔話というアニメの中でこの歌を詠んだいきさつが描かれていたからだと思う。

恋多き女性である和泉式部が袴垂という盗賊をやっつけたされる武勇のひと藤原保昌と再婚し、丹波の国府の赴任に同行した。そのとき、まだ、彼女は少女ともいえる女性だった。ある男に彼女に天才のお母さんがいないと歌が読めないでしょとからかわれた。そのときに詠んだ歌。彼女もたいした才能だと男は恐れ入ったらしい。

丹波に行く途中の難所、鬼が出るという大江山、銀山がある生野、そして目的地の名所である天橋立を読み込んで、「まだふみも見ず」と手紙が来ないことと、橋を踏むとかけている。

アニメは美しい和柄の絵と音楽が素晴らしかったのもあるけど、女性として生きていく母の道中を心配する思いと彼女自身の生きていく決意が描かれ、雅で細やかだなって感じた。

直接に描かれていなかったけど、彼女は母より先に若くして子供を残して、出産で亡くなったらしい。娘想いの和泉式部はいくつも挽歌を残している

和泉式部は歌によると最初の夫と娘との生活が好きだったらしい。けれど、才気ある女として男をさまよって生きてしまった。そういう母に対して女として共感し尊敬しながら、寂しさを抱えながらはかない人生を生きた娘。

 アニメ作家さんも母恋の思いを感じたのかな。いつの時代にもある皮膚感を感じる母娘のすがたかもしれない。


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