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ビフカツ

 村上春樹の「村上朝日堂」を読んだとき、関東では豚カツばかりで、牛肉のカツがないという話から、サウンドオブミュージックでも歌われたウィーンの郷土料理、ウィンナー・シュニッツェルにたどりつく。そうだ京都に行こうのCMで使われている、ジャズのスタンダードにもなった My Favorite Things に歌われている料理だ。読んでいて、ビフカツおいしかったなあと、記憶が刺激された。

 私の思い出のビフカツは近所の肉屋さんの紙のように薄く叩いてあげたカツだ。再現してみようとしても、味が決まらない。この前読んだ読んだ本だとかつて肉屋のカツは豚の脂を固めたラッドや牛脂であるヘッドをとかしたあげていたらしい。これをウスターソースをじゃぶじゃぶにつけ、キャベツとたべる。今どきのビフカツは分厚い高級品なので、衣のあじで食べるカツはあそこでしたたべたことがない、まぼろしの味になってしまった。

 ヌードルスをそえてと、高らかに歌うジュリー・アンドリュースにあやかって「村上朝日堂」を読んだとき、赤身の多いオーストラリアのステーキ肉で作ってみた。いやあ、美味しいけど、とんでもない高カロリーだ。本を読むことで、思いが紡ぎ出され、体験したくなる。たべものについて読むことはそういう快楽がある。

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