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シンエヴァ考察 冒頭のパリの意味

シン・エヴァンゲリオン劇場版について、いくつか話したいことがあるが、今回はその中の一つ、映画の冒頭のシーンについて、考察というか私の解釈を書こうと思う。

シンエヴァを見てから結構経ってしまったので、ギリギリ忘れる前にまとめておきたい。

(※完全にネタバレ、私独自の解釈なので正解かどうかは分かりません)


シンエヴァはパリの解放から

映画の冒頭約10分はフランス、真っ赤に染まったパリの街を元に戻すミッション。

ミサト艦長達ヴィレが真っ赤に汚染されたパリの街を元に戻すため、アンチLシステムを作動させようとするが、それを妨害しようと使徒のような顔?をしたゲンドウ、冬月ネルフ側のエヴァシリーズが大量にやって来る。

マリが敵を倒しつつ、なんとかアンチLシステムを作動させたヴィレによってパリの街は元に戻り、ネルフEU支部に保管されていた資材を使うことができるようになった。

大まかに言うとこういう話。

これで前作Qで大破したエヴァ2号機を新造して使えるようにできる。
そのための資材を入手する目的でEU支部があったパリの街を元に戻す必要があった。

話の流れとしてはこの資材入手が目的ということで良いのだが、この冒頭、実はこの映画全体を総括しての宣言なのではないか?と個人的には感じた。

これから、各ポイントについて書いていこうと思う。


オマージュ祭りの元祖としてのパリ

シンエヴァンゲリオンはオマージュ祭りだ。

色んな人が語っているが、この映画は庵野監督が好きな物が集まってできている。

宇宙戦艦ヤマトや、ウルトラマン、ガンダムやジブリと言った、庵野監督が好きだった物や上の世代の先輩クリエイター達へのオマージュが大量にある。

よく言われている戦艦が釣り糸の様な物で吊るされ、まるで特撮のようだったり、ミサト艦長はヤマトの艦長のようであったりと言うこともあるし、自分ではまだまだ気づけていない部分も大量にあると思うが、例えば、ジブリのような田園風景、人は大地と生きるんだというメッセージだったり、2号機の裏コード999で人を捨てるというのも、銀河鉄道999で機械の体を手に入れる(人間を捨てる)から来ていると思われる。

そういう、大量のオマージュをした今回のエヴァで、父親にしてやれることは肩を叩いてあげるか殺してあげるかのどちらかだというセリフ。

これがこの映画の大きなポイントで、それについても言いたいことはあるが、まず今回注目したいのは、この大量のオマージュの元祖とも言える物が実はパリにあったということ。


バンドデシネとメビウス

バンドデシネというフランスやベルギー近辺で出版されている漫画がある。

そのバンドデシネの作者の一人、メビウスことジャン・ジロー。

ウィキペディアでジャン・ジローのページを見て貰うと分かるが、宮崎駿や大友克洋と言った代表的なクリエイターが大きな影響を受けている。

特に宮崎駿監督の風の谷のナウシカなどは強い影響を受けていて、『メビウス ナウシカ』などと検索して貰えば良く分かると思う。

この日本の漫画、アニメ界の庵野監督よりも上の世代の巨匠達のイメージ元、言ってみればオマージュの元となるのがフランス、パリにいたメビウスさん。

つまり、今回庵野監督が自分が影響を受けた先人達のオマージュをするにあたり、まずはその先人達が影響を受けた源流とも言えるメビウスのいたパリを解放する必要があったのではないだろうか。

だからこそ、フランス語で「後をお願い」と書き残した前任者(先人)に手を合わせ、引き継ぐと誓っている。
引き継ぐとは、先人に影響され次のクリエイターがそこに自分のオリジナルを加えて新しい物を作るということではないだろうか?


ちなみに、今回、パリの街が解放されたのはネルフのユーロ支部があったからだが、今までのエヴァンゲリオンの中でユーロ支部がパリだと言う話は無かったと思う。

エヴァ2号機はドイツ支部だったし、3号機はアメリカ支部が開発だった?とにかく、ユーロ支部がパリにあるというのは今回の映画の冒頭で急に明らかになった。

何故パリなのだろうか、現実のEUの本部はベルギーのブリュッセルだ。
ドイツ語を話すアスカや2号機のように、フランス語を話すパイロットやそこで開発されたであろうエヴァも具体的にはいない。

それなのに、何故かエヴァ1機を新造できるだけのパーツが眠っているユーロ支部がパリなのは何故なのか。

個人的には上記のバンドデシネ、メビウスへのリスペクト以外思いつかない。


もう一つのメッセージは3.11

もう一つ、今回のエヴァではどうしても思い出してしまうのが、3月11日に起きた東日本大震災だ。

トウジ達が暮らす、第3村はどう見ても被災地の仮設住宅だし、汚染されたパリの街を始め、汚染され人が住めなくなった土地とその浄化を少しずつしているというのも原発の放射線問題と重なる。

さらに、映画の途中途中にでてくる、宙に浮いたままクルクル回っている送電の鉄塔たち。

シンエヴァは色んなメッセージを重ねて作ってあると感じるが、その一部が原発、電力問題なのはほぼ間違いないと思う。

庵野監督の前作、シンゴジラでもゴジラは原発の暗喩だと言う人は多かったし、自分もそう思う。
シンゴジラでは上の世代じゃどうしようもなく、主人公である若手政治家が奮闘していた。

今回のシンエヴァでも同様。

上の世代のゲンドウ、冬月はこの冒頭のパリの戦闘に何を持ち出すかと言えば、いつぞやのヤシマ作戦で使った超大量電力兵器。

しかも、発電機エヴァまで大量に並べてモリモリ電気を生み出してビームを撃って来る。

そもそも昔はエヴァはコンセントで繋がれ、外れると内蔵バッテリー。
電気で動いていたのが、今現在はもうそんなことはない。

S2機関搭載と考えると、言ってしまえば発電して電気エネルギーを充填して攻撃しなくても、それこそヤシマ作戦で日本中の電力を集めて倒した使徒ラミエルは、別に電力が無くても同レベルのビームを自身内部で作って撃てたわけで、あんな大量のS2機関搭載のエヴァシリーズを作れるゲンドウ、冬月のネルフなら、S2機関でエネルギーを直接作ればいいだけのはず。
てか、使徒は良く分からないビーム普通に撃つし。

わざわざ一度発電する電力にして充電するというプロセスを踏む必要が感じられない。
旧世代はいつまで昔の手法や電力発電にしがみ付いているんだという暗喩ではないだろうか。
ちなみに第3村では電気はソーラーパネルで賄っていたと思う。


そして何より大きな理由は、アンチLシステムが作動した時のタイムリミットまでの残り時間。

11.03秒。

11と03だから逆から読んだら30.11だし、並び替えて3.11というと少し無理やりにも見えるが、実はそうではなく、
フランス語では日付の記載方法が日、月、年の順番になる。

つまり、このままの状態で11日、3月ということ。



この冒頭のパリでの戦闘で、これからオマージュと旧世代の起こした原発等の問題、その引継ぎの話だと映画全体をまとめて宣言していたように思える。

もちろん最後まで見終わってから改めて冒頭を考えて初めてそう感じたのだけど。

また、このパリの戦闘で一人奮闘するマリが握っているのは操縦レバーや以前のエヴァの様にシンクロだけでもなく”ハンドル”

劇中、あれだけ縦横無尽に飛び回るヴンダーの舵取りは無いしそもそもヴンダー自体影すらなく、一人ハンドルを握って舵を取っているのはマリだけ。

この物語自体のハンドルを握っているのはマリだということもここで宣言されていた気がする。


以上が、シンエヴァを見て思いついたことを軽くメモ書きしてあったものをまとめた内容です。

メモ自体は見てほどなくしてから書いてあったので、多分忘れてないだろうけれど、もしかしたら勘違いの部分があるかも…。

冒頭は公式でも公開されていたと思ったら、既に公開は終了しているようで、これを書く時に改めて確認はできなかったけれど、いずれにしてもDVDが出たら改めて見てみたいと思っています。


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