映画大好きポンポさん

以前から気にはなっていたけどなんやかんやで見ていなかった映画「映画大好きポンポさん」。

今日、レンタル店に立ち寄ったところ偶然にもレンタルが開始しているのを知って早速借りて来て観た。


この前テレビ放送したアナ雪2の感想も書かなきゃと思っているけれど、あちらはなんだか複雑で頭の中でグルグルしてしまっているのでとりあえず、今観終ったばかりのポンポさんについて書いておくことにした。

というのも、見る前から何やら評価が高いということは耳にしていたし、実際に観終った今、ネットで軽く感想を調べても☆4や5と言った評価が目立つ。

でも、正直に言うと個人的には思ったほどでもなかった。
5段階評価なら真ん中。☆3と言った感じ。

なのでこの映画が好きな人はこの先読むと不快に感じる部分もあるかもしれない。noteで色々考察したり、良かった映画の感想を書くのは良いけど、自分に合わなかった映画評ってどうかなぁと思ったが、まぁあくまで個人の感想として書き留めることにした。

以後、ネタバレ注意


全体的に普通に面白かった

とりあえず観終った感想としては普通に面白かった。

映画オタクで友達もいない、映画しかないアシスタントのジーン君が初監督に抜擢され、そのまま一気に才能を開花させて賞を総なめにするまで本当になんというか勢いで持って行かれた。

過去のトラウマや人間関係なんかで暗い沈むシーンもほぼ無いと言えるくらいで、とにかく今まで映画しかなかったということしか見せない最低限のネガティブなシーンの他はとにかく映画製作のための行動しかしないのでコロコロ切り替わるカットも相まってまぁ本当に疾走感が凄い。

主演女優に抜擢されたナタリーも、夢1つで田舎から出て来てバイトに明け暮れ薄汚れた貧乏生活からのシンデレラストーリーだし、やっぱり才能が開花するのは見ていて気持ちが良い。

既に売れっ子俳優のミスティアや世界一の超大御所俳優のマーティンも協力的だし、現場のスタッフも皆良い人。

そんな善人ばかりの優しい世界で楽しく映画を作ってますよと言った雰囲気の一方で、映画のストーリーの起伏としての葛藤や苦悩と言った部分は、劇中でジーンが作っている映画の主人公、世界的指揮者の苦悩のシーンで見せ、ジーンの葛藤もそこにリンクさせる形で補完しているので、映画製作におけるクリエイターとしての葛藤や悩みもちゃんと描いているように見える。


そんな感じで普通にサッーっと観たら面白かったし、ハリウッド(ニャリウッド)で成功してハッピーエンドで良かったね!なのだが、観終った後になんだかこうモヤモヤしたものを感じて、少し書いておきたくなった。

ここから個人的モヤモヤを書くので、不快な場合があります。
この映画が好きな人には申し訳ないです。


架空都市ニャリウッドの光と闇

ポンポさんの舞台は架空の都市「ニャリウッド」だ。
まぁどう見てもアメリカのハリウッドなわけだけど、ここはあくまでニャリウッド。

ハッキリ言ってしまうと、このニャリウッドと言うのは現実のハリウッドをモデルにした夢の国、ディズニーランドやUSJと同じ、あくまで現実ではなく現実を元にした都合の良い綺麗な世界なのだと思う。

今回、映画オタクで死んだような眼をしたジーンはポンポさんに才能を見抜かれ監督デビュー。
30回もオーディションに落ち続けていたナタリーはいきなり主演女優に大抜擢。

そこから一気にアカデミー賞までまさにアメリカンドリームを果たすわけだけど、さて、現実にこんなことがあり得るかと言う以前に、現実にはこの裏にはナタリーと同じ境遇から夢を諦める人、死んだ目をしたまま死にたい気持ちになる人がたくさんいると思う。

けど、ここニャリウッドは夢の国だからそこを気にしてはいけない。
交通整理やビルの窓ふきなど色んなアルバイトを頑張るナタリーの他に同じようなブルーカラーがニャリウッドにいただろうか?

シンデレラは一人で良い、映画のピントがボケるから灰にまみれた可哀想な女の子は世界に一人しか存在しない。

これが、この後に続く映画作り、クリエイターとしてのこだわりや狂気と言った部分と食い合わせが悪い。
嘘っぽく感じてしまう原因だと感じた。

この映画のタイトルにもなっているポンポさん。
伝説のプロデューサーを祖父に持ち、映画に関する才能を全て持った完璧プロデューサー。

この天才プロデューサーに認められた人だけがニャリウッドで成功する資格がある。
銀行員の彼もポンポさんに認められたので成功できた。

ディズニーランドで楽しむにはミッキーマウスの中の人を考えてはいけない。ニャリウッドの正義、神がポンポさんなのでポンポさんが考えるクリエイターの正義、映画の正解以外は全部駄目と言うのがこの映画。

なので、ラスト、この映画の一番良い部分は90分となる。

ということは、逆にいえばポンポさんが認めない人達。
例えばジーンとは対照的にキラキラした目の人達はこのニャリウッドでは資格なしとなるし、長い映画が好きな人達は一蹴される。

ポンポさんの言うことは本当に正しいのか

ポンポさんは90分以上の映画は視聴者に優しくないという。

ポンポさんに見せたい、たった一人のために映画を作るジーンは編集作業においてとにかくカットしまくる。

ナタリーの最初のシーンでも無くても話に影響しなければ容赦なく切り捨てる。

その結果、映画は90分に納まり、賞を総なめにするような最高の映画になる。


あれ?ジーン監督はニューシネマパラダイスとか長い名作も好きだったよね?

クリエイターとしてのジーンが必要、良いシーンだと感じたのならポンポさんに逆らってでも120分の作品を作り上げても良かったのでは?
追加のシーンを撮りたいというクリエイターとしての拘りは見せるが、ポンポさんが映画はこうあるべきと言ったこと自体には一切逆らわないのはクリエイターの狂気と言えるのだろうか。

そもそも、天才ポンポさんが言うことは全て正しいの?
私生活を捨ててでも映画を作ることと、とにかく90分以内にするためにシーンを捨てまくるのは全然話が違うと感じた。

ポンポさんに逆らって長い作品にした結果、プロデューサーと言い争い、再編集して答えを出す、結果は折衷案なのか意地を通すのか従うのか、それこそがクリエイターとしての葛藤だと思うのだけど…。

ジーン監督が「これは僕だ」と自分を重ねる自身が編集中の作品の主人公は既に世界的な指揮者であって、そこからの挫折と再起なのだけど、ジーン監督はこれが処女作であり失う物が足りていないのはどちらなのだろうか。


ポンポさんは本当に映画大好きなのか

ここが一番の問題というか疑問点なのだが、そもそもの話、ポンポさんは本当に映画大好きなのだろうか。

祖父の映画好きに付き合わされて見たくも無い、退屈なのを半ば強制的に映画に付き合わされ、言ってしまえば無理やり塾に通わせて英才教育を施したように映画の才能を身につけたポンポさん。

それによって長い作品は嫌い。

インタビューでポンポさんは実は映画で本当に感動したことが無いという。
自分で作ったら感動できない。

ジーンは「僕の映画には夢を叶えるためには切り捨てた物が足りない」だから追加のシーンが必要だと言う。

ポンポさんは何か自身で切り捨てた物があっただろうか?

結局、ジーンの作った映画はポンポさん好みの90分ギリギリの映画。


劇内作品の説得力問題

この映画、とにかく世界一の俳優やら伝説のプロデューサーやらアカデミー総なめレベルの作品など、とんでもないレベルの説得力が必要になる物が多々ある。

ポンポさんの技量についてもそうだが、基本的にこの映画での彼らの実力はほとんどセリフで説明されて”そういう物ですから”と半ばお約束として決定づけられている。

凄いことをやって、だからやっぱりこの人天才だとはならず、天才と説明された上でやることが成功するからなるほどとなる。

世界一の俳優の演技にしても短時間の俳優のカットの後のそれをモニター越しに見ているジーン監督のビビッ!とするリアクションでなんか凄い演技しているように見せる。

やっぱりここはニャリウッド、夢の国なのでそういうお約束と言われたら素直に受け入れないといけない。

なので、ジーン監督があれだけ頑張った編集作業で、結果完成した映画がどんなものか誰にもわからない。

疾走感が凄いのでそこに引っかかりにくくなっているが、一度ここに引っかかると一気にリアリティが無くなり、色々良い事言ってるようで説得力無く感じてしまうと思った。

個人的にはマイスターの脚本を見たジーンが言う、登場人物に物語を引っ張る力があるという部分こそ、俳優の演技力が大きく関わる部分で、そこを丁寧に説得力ある映像として作れる必要があったのでは?と感じた。


最後に

ここまで思ったことを書き殴っていたら結構な酷評のようになってしまったけれど、実は言うほど駄目だったわけでも無く、最初に書いたように本当に普通に面白かった。

ただ、やはり気になる点があったのも事実で、映画の感想を書くならただ好きな映画を褒めるだけじゃなく、言いたい事があったら書いておく方がフェアな気がして今回、観た直後にとりあえず書いてみた次第だ。

この作品はおそらくそのうちテレビでもやると思うし、そうなれば私はきっとまた観る。

その時はまた違った感想になるのかもしれないなとも思う。

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