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今市事件判決文を要約(1) | 間接事実について

本記事は、今市事件の控訴審判決の間接事実に関する記述部分の要約です。

システムの走行記録

被告人車両の通行記録は、Nシステムによって読み取られたデータを印刷したものです。
Nシステムは信頼性の高い技術であり、証拠として使用することに問題はありません。また、警察庁の通達は内部的な規則であり、具体的な事件で証拠とする必要性を考慮することは法律で禁止されていません。
被告人車両の通行記録は被告人の犯行の間接的な証拠であり、他の通行記録や被告人の行動と一致しているため、原判決の判断には問題はありません。

参考資料

通行記録地点から遺棄現場の位置関係

遺体に付着していた獣毛

被告人の飼い猫の毛とされるものが見つかったが、その出現確率からみて一致する可能性は低く、地域的なDNAの偏在も考慮すれば、獣毛は被告人の飼い猫に由来するものではないとされた。
しかし、原判決では証明力の評価が慎重に行われず、出現頻度に基づく分類に依拠しているため、判断が適切とは言えない。
そのため、弁護人の主張には一定の理由があるが、完全に同意することはできない。

遺体の右頸部の損傷

遺体の右頸部には2つの等間隔な損傷があり、専門家の証言によれば、これはスタンガンの電極による可能性が高いと判断されました。
また、被告人からはスタンガンの箱だけが押収され、その箱に入っていたスタンガンが被告人のものであることが確認されました。
このスタンガンの存在は遺体の損傷と矛盾しないため、原判決の判断には問題はありません。

参考資料

右頸部の損傷

スタンガンの突起部の幅が3.8cmに対して、
傷の幅は3.5cmとなっている。

犯行機会の可能性

弁護人は、原判決が被告人が特定のレンタルショップにいたことを根拠に被告人を犯人と推定しているが、そのような場所にいた者は多数存在する可能性があるため、被告人の犯人性を推定することは誤りだと主張している。
しかし、原判決がレンタルショップの貸出記録から被告人が特定の時刻にその場所にいたことを認定し、それに基づいて被告人に犯行の機会があったことを示したものであり、積極的な推定ではないため、弁護人の主張は原判決の趣旨を理解していないものであり、誤りである。

参考資料

レンタルショップと誘拐現場の位置関係

不審車両の目撃情報

弁護人は、郵便局員と女児らの目撃証言に基づく自動車の特徴が被告人の所有車両と一致していないため、被告人の犯人性を推定することはできないと主張しています。
一方、検察官は女児らと郵便局員の証言を考慮し、被害者を拉致した犯人が白い4ドア自動車の運転者である可能性が高いと主張しています。
検察官は原判決が不審車両として特徴付けており、それが被告人の車両と矛盾しないことを示していると述べています。
検察官の主張が正当であり、原判決は被告人の犯人性を推定しているのではなく、弁護人の主張は誤りです。

拉致現場の土地勘

弁護人は、被告人の学校在籍期間が短く、周囲の土地について詳しい知識がないため、原判決が被告人に土地鑑があるとする点は誤りであり、被告人の犯人性を推定することはできないと主張しています。
一方、検察官は長期間同じ場所にいれば地理に詳しくなるのは当然であり、被告人の供述調書にも地理知識が示されていると主張しています。
原判決は被告人が拉致現場に通学経験があることを間接的な証拠として認定しており、その判断は合理的です。

推定される犯人像との整合性

弁護人は、被害者に対するわいせつ行為を示す証拠がなく、ナイフや猟奇的な殺人動画を持っているだけでは実際に殺人が起こるとは言えないと主張しています。
一方、原判決は検察官の指摘も考慮しながら、被告人の行動が殺人事件の犯人像と一致していると述べています。
原判決は被告人の犯人性を積極的に推測しているわけではないので、弁護人の主張は原判決の趣旨を誤解しており、適切ではないと主張されています。

間接事実の総合評価による判断

弁護人は、被告人の犯人性を示す間接的な証拠を調べた結果、それらの証拠の力は非常に弱いかほとんどないと主張しています。しかし、客観的な証拠からは、被告人が犯人である可能性が高いという原判決には大きな誤りがあるとも主張しています。

具体的には、以下の点が指摘されています:

  • 被告人が普段通らない経路を深夜から未明に通行し、事件現場と被告人の行動が整合しており、被告人が遺体を遺棄したことに矛盾がない。

  • 被害者の失踪時に目撃された車と被告人の車が似ており、被告人がその場所に自動車で行くことが可能だった。

  • 遺体から採取された毛が被告人の飼い猫のものであり、被告人が遺体を連れ去った可能性を示唆している。

  • 被告人には事件現場や遺体発見現場周辺の土地の知識があり、遺体の遺棄と拉致行為が被告人によるものと推測される。

  • 遺体には被告人が使用していたスタンガンの電極による傷があり、被告人がスタンガンを使い、ナイフで被害者を殺害した可能性が示唆されている。

これらの間接的な証拠を総合的に考慮すると、被告人が殺害犯人である可能性が非常に高いと結論されます。

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