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心が覚えているほどの強い感情があるならば【ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」】

蓋を開けたら思いの外、マイ琴線に触れるドラマが多めな今期。
中でも、ベスト3に入るくらいにはハマっているのが『アンメット ある脳外科医の日記』
主演の杉咲花ちゃんは、もう出てたら観る俳優リスト入りしてるから。
ドラマ始まること知ったの放送当日くらいの情報キャッチ力だったけど。

もう4話まで来ちゃっているので、いまさらのあらすじをサラリと触れておくと、花ちゃん演じる脳外科医のミヤビ先生は、1年半前に不慮の事故で脳を損傷してしまったことで、過去2年間の記憶をすべて失い、新しい記憶も1日しか持たずで、寝て起きたら昨日の記憶がなくなってしまう記憶障害に。
「私はまだ医者なのだろうか」という葛藤の中で、医療行為は一切行わない助手として勤務しているところに、アメリカ帰りの名医(定番)三瓶先生が赴任してくるところから物語は始まります。

コミックが原作とか予備知識一切なしで飛び込んだので、脳外科医が自分の記憶障害とどう向き合っていくんだろう?という点でまずグッと惹きつけられたし、記憶が1日しか持たないってそれどんな「50回目のファーストキス」なの?と。ハリウッド版ねもちろん。(そこじゃない)

「この人なんかどっかでみたことある」感がとてもある若葉竜也が演じる三瓶先生がもう、佇まいから訳アリ感が滲み出ているところも込みで、初回から前のめりで拝見しまして、そして大泣きしましてね。

ミヤビ先生が、前日に起きたことも診療内容も忘れてしまう自分がメスを握ることはできないって手術を辞退したときに、三瓶先生に「あなたは障害を持つ人が、人生を諦めてただ生きていけばいいと思ってるんですか?」って言われちゃって耐えきれずに泣いちゃう前から泣いてたから。
医者であるはずの自分が患者を救えないことに、誰よりも傷ついてるのはミヤビ先生だよね…と。

でも三瓶先生は、ただでさえ人手が足りないという現場のリアルと、何よりも自身が脳外科医の立場から「(ミヤビ先生の場合は)記憶がなくても治療はできる」という確信があって、できないことは周りがフォローすればいい、とミヤビ先生を医師として復帰させたいという思いがあってのことで。

初回から心に残ったのが、2人のこのやり取り。

三瓶「強い感情は忘れません。記憶を失っても、そのとき感じた強い気持ちは残るんです」
ミヤビ「記憶がなくても、心が憶えてるってことですか?」
三瓶「そういうことです」

ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」

そうだよ、50回目のファーストキスでもあったよこれ。
記憶がなくても、ヘンリーに会った日だけはルーシーが決まって口ずさむ歌があるんだよね。
記憶とは違う感情が、その人を大切で愛しい人だと覚えてるんだよ。
出典が50回目のファーストキスになってごめんだけど。

まさかね、この時はね、三瓶先生がミヤビ先生の婚約者だとは思わなかったけども。
2話で早々と婚約者バレ来た時は驚いた。
そうなると、この言葉には、あらゆる想いが込められてるんだなと。

婚約者設定も相まって、ドラマ鑑賞においては、強い感情をすなわち愛情と捉えることに間違いはないと思う一方で、人が感じる「強い感情」は、多種多様だなって思ったんです。
必ずしも、好きとか愛しいとか懐かしいとか大切だとか、尊くて気持ちが温かくなる感情だけじゃない。
悲しみ憎しみ、恨み辛みや恐怖とか、抱えるには心が疲れてしまうような感情も、どこかに刻まれてしまう「強い感情」なんじゃないかって。

もし、記憶を無くしたとして。
それでも覚えている強い感情が、忘れたいのに忘れられない苦しい感情だったら、生きることに絶望してしまわないだろうか。

例えばの話だけど、今、もし、記憶を無くしたとして。
自分の中に残された強い感情が、大事な人や想い出、場所や出来事、言葉とか音楽とか、生きててよかったとか幸せにつながる感情ならとてもうれしいけれど、そうじゃなかったら。

傷ついたこと、嫌悪感、怒りとか恐怖、思い出したくない場面がフラッシュバックしてしまうような感情だったら、どうなるんだろう。

社会人になってから、近しい人を含めて、仕事が原因で心も身体も壊してしまった人を何人か知っている。
いつ自分もそうなるかは、ならないという保証はないと思って生きていて。

そして今、コミュニケーションに関するサービスを提供する仕事を通じて、人が病まないためには絶対に必要だと思われる「心理的安全性」について、専門家ではないもののコラムを書いたりもしていると、つくづく思うわけです。

自分で心と身体を守ることの大事さと、決してそれを脅かす側に自分がなってはいけないんだと。

今、もし、誰かがどこかで記憶を無くしたとして。
その誰かの心に残された感情が「あなたにだけは二度と会いたくなかった」なんて、自分が思われていたら、ごめんなさいじゃ済まない気がするから。

大人になると人間関係は職場を中心に回りがちで、置かれた環境で精一杯がんばることは美徳ではあるけれど、それ故に心と身体を壊してしまうことが当たり前に起こるから。

心に残る強い感情が、どうかその人が生きる希望になるものでありますように。

毎回じんわりと涙ぐみながら観ているんですが、ミヤビ先生のMRI画像に記憶障害の原因が見当たらないんですっていい出したよ三瓶先生が。
ミヤビ先生の主治医の脳外科の教授・大迫先生が「事故のこと思い出されたら困りますからね」って言ってた。豪邸でディナー食べながら。

ここに来て急展開。

ウソでしょ?大迫先生こと井浦新がそっち側なの?って、もう早く続きが観たいのです。

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