水木しげるの妖怪「妖怪百鬼夜行展」@そごう美術館で感じた「陰翳礼賛」。

本日よりそごう美術館にて始まった妖怪百鬼夜行展へ行った。

もちろん美術館なので、水木しげるの絵を楽しんだのだが、同時に水木しげるの博覧強記ぶりを民俗学の系譜に位置づけているのが印象に残った。

水木しげるは神保町に足繁く通っていたという。もちろん古書店街として広く名を知られた街であるが、本屋に一歩足を踏み入れたときのあの特有の空気感が氏の創作の源になっていたということは、個人的な体感としても分かる気がする。

少し脱線するが、古今の博覧強記の作家がその思想を問わず、民俗学に影響を受けた作品を残していることは面白い傾向だと思う。柳田國男や宮本常一と言った大家はもちろん、かつての吉本隆明や大江健三郎らのようなリベラル寄りの作家も作品の中でしばしば言及している。

また水木しげるの画風に関して、その描き込みが濃さに改めて新鮮な感銘を覚えるとともに、何処か懐かしい安堵を覚えた。またそこで描かれる人々も、とてもリアルで人間くさい。

その感覚はかつて谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で書いた「暗さ」の通底するものがあるようにも思う。

例えば、古書店巡りの際、冷んやりとした古本屋に一歩入った時のあの空気感、あるいは登山で森深い場所で感じる独特の空気感を思い出していると、誠に僭越ながら、水木しげるの創作のバックグラウンドに少しでも近づけるようにも思った。

あるいは、民俗学的な、昨今言われる「デジタル社会」とは真反対にあるような、泥臭い、魑魅魍魎の妖怪が蠢いている世界に惹きつけられるのは何故なのか、想像してみるのも面白い。

なお、本日(初日)は1月で、寒く、小雨が降っている中であるにも関わらず、非常に活況で、さらに思いがけず、中は少し汗ばむほど暑かったので、訪問される方が居られれば体温調節のしやすい服装で行かれることをお勧めしたい。

以上。


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